まもろう ふれよう つたえよう
里地里山における自然再生、保全事業
久保川イーハトーブ自然再生協議会(岩手県一関市)
岩手県一関市を流れる久保川流域には、近年、侵略的外来種が侵入し生態系を悪化させています。当協議会は完全な民間パワーで外来種の排除活動を中心に自然再生事業を行い、生物相の調査や自然観察会も行っています。
久保川流域では、2000年頃に行われた護岸改修工事の影響で、侵略的外来種のセイタカアワダチソウが侵入し、分布域を広げました。これをきっかけに、流域にある寺院、知勝院が地域住民やNPO法人との協働により抜き取り作業を開始しました。
毎年4t程の抜き取りを継続し、2011年には抜き取りを2t程に抑え、分布の拡大を阻止することに成功。その結果、抜き取りを行った場所では、キキョウやオミナエシなど、環境省の絶滅危惧種に指定されている希少な在来植物が復活しました。
また、流域には約600の溜池が存在し、現在も伝統的な農法と共に、良質な水辺の生態系も残されています。しかし、2005年頃、ウシガエル、オオクチバスなどの侵略的外来種が侵入し、地域の生物多様性に多大な悪影響を与えています。
そこで、知勝院は2009年に自然再生推進法に基づいて、地域住民、大学研究室、寺院、NPO法人、行政からなる法定協議会「久保川イーハトーブ自然再生協議会」を設立し、急速に増殖、分布を拡大したウシガエルを中心に排除活動を開始しました。
現在は、140か所の溜池に570個のトラップを仕掛け、継続的に排除を続けています。その結果、2011年はウシガエルの成体を1031匹、幼生を21716匹排除し、2012年には、成体を477匹、幼生を12207匹と、排除数を約半分に抑え、溜池によっては根絶に成功しました。
オオクチバスなどについても同様な取り組みをした結果、新たな分布の拡大は見られず、封じ込めに成功しています。また、トラップには在来の水生生物も入るため、記録後、放流しています。2011年には、ガムシが1694匹捕獲され、2012年には2025匹まで増加し、特に、在来の大型水生昆虫の個体数増加が顕著に確認されました。このような流域レベルにおける複数の侵略的外来種の排除活動は世界的にも例のない試みですが、一定の成果が得られています。