まもろう ふれよう
高安の里地・里山の伝統的な水質浄化法“ドビ流し” を応用した生物多様性の保全
NPO法人ニッポンバラタナゴ高安研究会(大阪府)
高安の里地・里山の伝統的な農業技術、溜池浄化法“ドビ流し”(池干し)の効果を応用して、アオコの異常発生を抑制し、外来種を防除することで、在来魚のニッポンバラタナゴを含む生物多様性を保全する活動です。
大阪府八尾市高安地域には大小約400の溜池が点在し、絶滅危惧種のコイ科魚類のニッポンバラタナゴが生息しています。
1998年から保護池を造成し、ため池の生物多様性の保全活動を実施してきました。ニッポンバラタナゴは淡水二枚貝のドブガイに産卵し、卵仔魚期を貝によって保護されることで繁殖可能になります。一方、ドブガイなどの幼生はハゼ科のヨシノボリなどの底生魚のひれに寄生することで成貝に成長できます。
ニッポンバラタナゴを保護するためには、生物多様性が保全される溜池生態系を維持することが必須です。かつて、高安地域では農閑期に伝統的な溜池浄化法である“ドビ流し”(池干し)が実施されていました。“ドビ流し”とは、溜池の底樋を抜き、池底に溜まった有機物を含む汚泥を用水路に流し、その汚泥を田畑に取り込み、田畑の土壌改良を行うこと。また、採集した魚介類をフナの昆布巻きや雑魚豆など伝統的な食材として利用し、生物の多様性が維持されていました。
2005年、2006年に“ドビ流し”の効果を調査しました。“ドビ流し”によって有機酸鉄とケイ酸が供給されます。アオコなどのラン藻類の発生が抑制され、ドブガイの稚貝の餌となる珪藻類が大量に発生することが明らかになり、ドブガイの繁殖に成功しました。翌年にはニッポンバラタナゴを含む溜池の生物多様性が維持されることもが明らかになりました。
この方法を応用して、2006年から現在まで7年間、毎年“ドビ流し”を繰り返すことによって、特定外来種のオオクチバスやブルーギル、ウシガエルを防除し、ニッポンバラタナゴを含む在来種の魚介類が生息する溜池生態系を再生することに成功しました。現在は、富栄養化した溜池で異常発生するアオコの凝集・浮上・除去法やアオコが生成する毒性物質(MC)を分解菌で無毒化し、アオコを肥料化する技術を開発しています。
更新日:2013.11.03 ※記事の内容は投稿当時のものです