まもろう
サシバの里づくり
オオタカ保護基金(栃木県芳賀郡市貝町)
里山が広がる栃木県市貝町において、里山のタカ「サシバ」を生態系の指標種として位置づけ、行政・地域住民・自然保護団体が協働し、地域資源を活かしながら人と自然が共生する生物多様性豊かな地域づくりを進めています。
栃木県東部の市貝町には、豊かな里山が広がり、その生態系の指標種であるタカ「サシバ」が、日本一と言われる密度で生息しています。しかし一方で、農家の減少や高齢化によって農林業が衰退するとともに、里山環境や生物多様性が劣化しつつあり、サシバと人が共存する誇れる環境と地域をどのように次代に繋いでいくかが課題となっています。
そこで、オオタカ保護基金では、サシバを里山生態系の指標種として位置づけ、人と自然が共生する生物多様性豊かな地域づくりを町に提案し、行政や地域住民と一緒に「サシバの里づくり」を行なっています。具体的には、2002年より同町において延べ300巣を超えるサシバの巣を調査して生態や繁殖状況を把握し、サシバの生息密度が日本一であることを明らかにし、農業との共存を目指したサシバ保護の提案を2010年にまとめました。
その提案を受け、同町は2013年度に「サシバが舞う豊かな里地里山環境を基盤に、環境と経済が両立するまち」を将来像として掲げる「市貝町サシバの里づくり基本構想」を策定しました。その構想に基づき、同年度に地域の農家や商工業者による「サシバの里協議会」が設立され、2014年度には体験型道の駅「サシバの里 いちかい」が開業し、ここを拠点に自然体験や農業体験などエコツアーが実施されるようになりました。これらの動きと連動して、本会では、放棄された雑木林や谷津田を保全地として確保し、ビオトープや水田として復元し、そこでサシバや生きものの生息地を保全しつつ、古民家を利用した「サシバの里自然学校」を2016年に開校し、環境教育・都市農村交流を行なってきました。また、渡り鳥であるサシバの保護には、年間を通じた生息域全体での保護が不可欠なことから、2017年から国内外の自然保護や猛禽類の保護団体と連携しながら、繁殖地、中継地、越冬地との交流を通じて、広域的・国際的な生物多様性保全にも取り組み始めました。
更新日:2019.12.26 ※記事の内容は投稿当時のものです