まもろう
伝統漁法がつなぐ宮川の未来
NPO法人大杉谷自然学校(三重県大台町)
宮川に伝わる伝統漁法しゃくりの継承と伝統漁具や漁法を保存・記録するとともに、宮川の生態系保全のため、ネコギギ(環境省絶滅危惧IB類)と競合するギギ(国内移入種)を駆除する活動をしています。
三重県中勢部に位置する一級河川の宮川には、「しゃくり」という鮎の伝統漁法があります。昔からこの地域の人々は、小学生の頃から70代まで毎年川の同じ場所でこの「しゃくり」漁を行ってきました。つまり伝統漁法の継承者は、約60年にわたり、宮川を見守り続ける役割を担うのです。ですが、近年「しゃくり」漁の継承者は減少し、2014年には大台町内全小学5年生のうち、この伝統漁法を体験した子は、たった3名となっていました。
伝統漁法の継承には、地域の絆が不可欠です。NPO法人大杉谷自然学校では2015年から伝統漁法を継承する機会として「子どもしゃくり大会」を開催し、町内小学校の総合学習の時間にもしゃくり体験を導入するなど、小学校や宮川上流漁協、地域の皆様と協力し、伝統漁法を継承する活動に取り組んでいます。また、伝統漁法は先人の知恵の結晶であり、水の透明度や魚種漁獲量などかつて存在した多様な河川環境を今に伝える素晴らしいツールでもあります。2014年から、失われつつある漁具の収集やかつての川漁のインタビューや動画記録に努めています。調査結果はインターネット上で公開している他、三重県立総合博物館で展示しました。
伝統漁法の保存継承と共に、宮川の生態系の保全にも取り組んでいます。2004年の豪雨災害をきっかけに、ネコギギ(環境省絶滅危惧IB類)と、鮎の稚魚放流により定着したギギ(国内移入種)の個体数調査を、毎年実施しています。その結果、近年、ギギによりネコギギの生息域が縮小している可能性が判明しました。2015年から「食べて減らそうギギ」を実施し、宮川の生態系保全にも取り組んでいます。2017年にはハワイ州の学生たちに伝統漁法しゃくり体験をしてもらい、日本が誇るべき自然観を伝え高評価を得ました。外国の方に伝統漁法や河川環境について学んでいただく活動も開始したところです。全国各地に残る伝統漁法の多くは存続の危機に瀕しています。私たちの活動を通じて国内外の多くの人が伝統漁法の意味や重要さに気付き、再評価してくれることを願っています。
更新日:2017.12.27 ※記事の内容は投稿当時のものです