まもろう
企業・行政と協働した里山再生とモニタリングでの順応的管理
NPO法人天覧山・多峯主山の自然を守る会(埼玉県飯能市)
天覧山周辺緑地での大規模団地開発計画が、本会の運動を経て中止になった後から、谷津田の取得や開発事業者・行政と協働した里山再生を進めています。活動を行う中で、モニタリング調査による里山整備の効果検証体制を構築しました。
1995年、貴重な自然環境が残されている天覧山周辺緑地での大規模団地開発計画が発表されため、計画変更を求めて本会が結成され、その活動中、開発は2005年に中止されました。本会は、この10年の間、自然観察会、会報の配布、自然環境調査、講演会などの情報発信、普及啓発を継続してきましたが、時代の環境に対する情勢変化の中、2003年飯能市が「はんのう市民環境会議」(浅野代表理事は会議の自然環境部会部長)を設置。2007年には天覧山麓にある谷津を市民、行政、事業者が協働で進める「天覧山谷津里づくりプロジェクト」をスタートさせ、ため池、田んぼづくり、草原再生等の里山再生を進めています。この谷津には、カヤネズミ、オオムラサキ、キツネなどが生息しているほか、ムカゴニンジン、センブリなどの稀少な植物が見られます。
本会は、永続的な自然保護の中核拠点とすることを目的に、2009年に谷津田(約600㎡)をトラスト運動で取得。石窯などを整備して、楽しみながら草刈り、サンショウウオやホトケドジョウなどの生息する水辺整備、ミドリシジミのためのハンノキ植樹などの活動を行い、再生作業にはエコツアーも導入するなど、里山再生を継続できるよう工夫しています。2017年にはこうした活動の拡張のため、隣接地(約800㎡)を西武鉄道から取得しました。
天覧山周辺では、当会のほか、西武鉄道、他団体が里山再生を進めていますが、活動全体が生物多様性に本当に貢献しているかは不明でした。そのため、本会では2008年から環境省モニタリングサイト1000里地調査に参加し、植物やチョウ、カヤネズミ、カエル、ホタル、鳥、哺乳類の調査を行い、生物多様性の推移を調査しています。この調査は、経年比較や他地域との比較が可能な全国統一規格で、毎年、関係者に向け、これらのデータ分析結果の調査報告会を行い、効果を検証しています。調査結果によっては里山再生の事業修正を求め、順応的里山再生を進める体制を構築しています。
更新日:2017.12.27 ※記事の内容は投稿当時のものです