授賞式

授賞式

日程:2015年12月11日(金)
時間:14:00–17:00 13:30受付開始
場所:東京ビックサイト 会議棟7階 703会議室

主催:国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)
共催:一般社団法人セブンーイレブン記念財団

授賞式レポート

いよいよ授賞式が始まります

晴れやかな笑顔が集まって。
いよいよ授賞式が始まります!

授賞式会場となった東京ビックサイトに、日本各地から受賞者の方々が多数集まりました。受賞団体の皆様には審査委員並びに協賛企業の皆様から表彰状と目録が贈られます。

たべよう部門優秀賞 特定非営利活動法人加茂女

たべよう部門優秀賞
特定非営利活動法人加茂女

ふれよう部門優秀賞 公益財団法人東京動物園協会井の頭自然文化園

ふれよう部門優秀賞
公益財団法人東京動物園協会井の頭自然文化園

つたえよう部門優秀賞 一般社団法人てるはの森の会

つたえよう部門優秀賞
一般社団法人てるはの森の会

まもろう部門優秀賞 湖南企業いきもの応援団

まもろう部門優秀賞
湖南企業いきもの応援団

えらぼう部門優秀賞 三菱地所レジデンス株式会社

えらぼう部門優秀賞
三菱地所レジデンス株式会社

復興支援賞 いわき海洋調べ隊・うみラボ

復興支援賞
いわき海洋調べ隊・うみラボ

グリーンウェイブ賞 特定非営利活動法人天明水の会

グリーンウェイブ賞
特定非営利活動法人天明水の会

セブン-イレブン記念財団賞 青森県立名久井農業高等学校伝統野菜班

セブン-イレブン記念財団賞
青森県立名久井農業高等学校伝統野菜班

審査委員賞

審査委員賞
(上列左から)
気仙沼の魚を学校給食に普及させる会/富士ゼロックス株式会社
京都府立桂高等学校/TAFS「地球を守る新技術の開発」班
(下列左から)
特定非営利活動法人ういむい未来の里CSO
全国農業協同組合連合会/やまがたヤマネ研究会

3ピースに想いを込めて! 白熱のプレゼンテーションタイム!

ここからは、受賞団体によるプレゼンテーションの時間です。3枚のスライドを使って活動を紹介する「3ピーストーク」という手法で発表していただきました。それでは、審査委員賞から順番に見ていきましょう。

審査委員賞

特定非営利活動法人ういむい未来の里CSO
「森のいのち」を詩と映像で残す事業

審査委員賞

 わたしたちは子どもたちが森に入って感じたところを詩で表現する、という活動を続けています。今年は詩人の谷川俊太郎さんに批評していただく、という会を実施しました。
 森の中の川にもたくさんの生きものがいます。サンショウウオや日本ザリガニも住んでいます。川遊びをすると子どもたちはもう夢中で川からあがってきません。日本ミツバチも飼っています。はちみつは素晴らしくいい味がして子どもたちに分け与えるとワーっと感動します。
 こういうことをしながら森の素晴らしさを子どもたちに伝えています。森に入って感じたことを詩にして表現する。そういう感性が今少し失われているな、と感じますのでそれを高めていけたらという想いで活動しています。

気仙沼の魚を学校給食に普及させる会
魚食普及による地方創生を図るプロジェクト

審査委員賞

 子どもたちが地元の基幹産業である漁業を知らないまま、地元の食にふれないまま大人になっていく。これをどうにかしたいと思い学校給食に着目しました。学校給食の中身を調べると輸入食材が多く、地元の食材は全くと言っていいほど使われていません。一方、地元には内閣総理大臣賞などの賞をとった素晴らしい食材がありました。学校給食に地元の食材を使う。そして、それをみんなで食べるということを始めました。
 こちらは授業をやっている風景です。給食に使われている魚は誰がとって、誰が運んできて、誰が調理して、というように、食に携わる人に一人ずつスポットを当てて紹介することで、どういう仕事があるのか、どういうつながりがあるのか、ということを学んでもらう取り組みです。
 他にも有名シェフが地元食材を使ったレシピを考案して商品化したり、パンフレットをつくって市内の学校に配布したりしています。食の大切さに対する意識を高めるためにも気仙沼から全国に発信していきたいです。

全国農業協同組合連合会』
田んぼの生きもの調査

審査委員賞

 お米を食べることがすなわち生物多様性を保っている、ということをわたしたちは積極的に伝える活動をしています。「田んぼの生きもの調査」は皆さんよくご存知でしょうが、全国で70カ所以上、のべ4,000人以上の方が参加する活動です。
 真剣な面持ちで田んぼの生きものを見ている子どもの表情や、図鑑を見ながら田んぼの生きものについて学んでいる姿をご覧ください。こんな子どもたちを全国に増やしていこう。そして、こういうことを理解していただける農家の方も増やしていこうということも併せて取り組んでいる活動です。
 田んぼはそこにあるだけで多面的な機能を発揮します。田んぼはみんなのそばにあるんだ。そして、お米をたくさん食べることでこの田んぼが守られ、生物多様性も保たれていく、ということをこれからも伝えていきます。

京都府立桂高等学校 TAFS「地球を守る新技術の開発」班
地域の自生芝を活用する〜多様性のある草原を創る〜

審査委員賞

 ノシバという植物の研究を通して遺伝的多様性の保全を提案しています。研究をはじめて8年目です。今年は環境省から青森県種差海岸の緑化を依頼されました。種差海岸は広大な天然芝地が貴重な観光資源となっている場所で、昭和40年までは馬の放牧によって芝地が維持されてきましたが、現在は人間の芝刈りで管理がされています。
 研究班では通常10%以下であるノシバの発芽率を90%以上に向上させる技術を開発して、その依頼に応えることができました。開発した種子繁殖技術は薬品を使いノシバの固い殻を溶かして開発した発芽容器に入れて発芽させます。これは自然界で馬や牛などの草食動物にノシバの種が食べられて消化器官を通って発芽率が向上するメカニズムを応用しています。
 わたしたちは緑化の際の遺伝子汚染に配慮しています。DNA解析による調査を実施した結果、種差海岸固有のノシバであることと同時に遺伝的多様性が失われつつあることが明らかになりました。馬の放牧がなくなり、栄養繁殖によるクローン体の増殖によることが原因でした。遺伝的多様性が失われてしまうと、環境の変化や病害虫の発生などによって一気に衰退してしまう可能性もあるので保全が必要です。私達の種子繁殖技術を用いた緑化方法は、この多様性を復元できる技術としても有効な手段になります。

富士ゼロックス株式会社
持続可能な用紙調達

審査委員賞

 複写機複合機を販売するメーカーとしてお客様に提供する紙を持続可能なものにしようと、森林保全、中性紙化、古紙の再利用、さらには、FSC認証紙やグリーン購入法適合用紙の調達・販売を進めてきました。
 このような取り組みを持続可能なものにするため、2004年に用紙調達に関する規則を設け、2012年に改定し、サプライヤーに対する取引基準を定めています。取り組みの詳細を昨年度のサステナビリティレポートに「持続可能な用紙調達に向けて」というタイトルで特集記事として掲載しました。その中にも書いたことなのですが、規則を作っただけではそれは守られません。わたしたちはその規則の遵守を確認するため、毎年サプライヤーの取り組みを調査し、その結果を経営層も含めた会議で確認しています。
 さらに現地を訪れて持続可能であるかどうかを確認することも続けています。これからもお客様に安全・安心な用紙を提供できるよう、この活動を続けていきます。

やまがたヤマネ研究会
高めよう!野生動物を守る地域のパワー

審査委員賞

 ヤマネという天然記念物の動物の研究情報を地域に還元したい、という想いで立ち上げました。山形県に生息している野生ほ乳類に直接会ったことがある人はほとんどいないと思います。また、絶滅種の問題、外来種の問題、鳥獣害被害の問題、など野生動物と人との間にある問題を実際に学ぶ機会は多くありません。
 そこで、地域の人たちが地元の自然環境を守り伝えていく場所を作るために自然体験プログラムを提供しています。プログラムでは2つのことを大切にしています。ひとつは最大限に五感を使うこと。ふたつめは科学的な視点をもって取り組むこと。とにかく、生きものを見て、さわって、食べて、体感します。そして大学レベルのDNA実験を行いますし、解剖なども行います。
 生きものを知ることはとても楽しいことなんだ、ということを伝えると共に、自分の体の仕組み、命のこと、衛生問題や社会問題なども含めてお話するようにしています。また、地域の行政や団体、大学などの力を借りて毎年新しいプログラムを提供できるようにしています。わたしたちは野生動物と人との「つなぎびと」として活動していきたいと考えています。

つづいて、特別賞を受賞した団体のプレゼンテーションです。

復興支援賞

いわき海洋調べ隊・うみラボ
いちえふ沖海洋調査

復興支援賞

 メーカーに勤めていて、福島の魚ってもう食べられませんよねって言われることが多くありました。わたし自身なかなかハッキリしたことが言えない、自分たちの地元のことなのにわからない、そういう歯痒さを感じていました。
 そこで海ラボという調査がスタートしました。福島第一原子力発電所目の前、3km〜5kmのエリアで魚釣りをして放射性物質の量を測ってインターネットで情報発信をする取り組みを続けています。第一原発沖はとてもシビアな現場だけれども、魚がたくさんいて、釣れればやっぱり笑顔になる。厳しい状況と本当に楽しい状況が混在している、というのが今の福島です。
 調査はいわき市のアクアマリン福島という水族館の協力を得て、釣った魚の放射性物質を測ったり、美味しい食べ方を勉強して実際に食べてみたりする、という活動を行っています。科学的な視点を交えて調べることで魚の汚染の状況や福島の海の生態や福島第一原子力発電所から出ている汚染水への理解が深まります。
 原発事故を経験したからこそ、問題意識が生まれて、市民の側から学んでいこうという気持ちが芽生えました。これからも福島の海だからこそ伝えていける生物多様性や海の豊かさを皆さんと一緒に考えられるような活動を長く続けていきたいです。

グリーンウェイブ賞

特定非営利活動法人天明水の会
漁民の森づくり活動

グリーンウェイブ賞

 『豊漁の海。有明海!』と言われますが、実は、有明海を代表する魚、ムツゴロウが一時期姿を消したのです。ムツゴロウだけではありません。環境に敏感な二枚貝のアサリなどはわずか10年で1/100にまで減りました。これが私たちの活動のきっかけとなり、海の再生に立ち上がりました。
 海の栄養の大部分は川から供給されています。そこで、その川を1本に結んで緑川の清流を取り戻す流域連絡会を作りました。緑川の流域は76km、その周囲には13市町村があり、その人たちが連絡会に参加してくれました。そこで、年に1回、母なる川、緑川の清掃を行っています。更に、山に木を植え、今では植林した場所は42㏊になり、植えた木の本数は8万本を越えています。
 子どもたちも森づくりや清掃活動に参加してくれています。20数年間活動してみて気づいたことは「長く続けるには、大人の遊び心が大切」。遊び心を持ち続けたおかげで子どもたちがついてきてくれていると思います。子どもたちの未来のためにも、今後もがんばっていきます。

セブン-イレブン記念財団賞

青森県立名久井農業高等学校伝統野菜班
南部太ネギで地域を元気に

セブン-イレブン記念財団賞

 南部太ネギは青森県県南地方や岩手県県北地方まで広く栽培されていましたが、いつしか栽培農家数はたった1軒となり絶滅の危機に瀕していました。そんな時に立ち上がったのが青森県立名久井農業高等学校伝統野菜班です。最後の生産者から貴重な種を譲り受け、学校での栽培に挑戦しました。
 南部太ネギはやわらかい食感がある反面、葉の付け根が広がりやすく機械で土寄せをすると土が葉とは葉の間に入り込んで商品価値が下がってしまいます。土寄せの問題がない栽培方法を追い求めていた時に縦穴法の存在を知ります。畝に深さ30センチの穴をあけて、その中に苗を落とす方法です。土寄せは不要で除草の回数も減らすことができる、夢の方法だったのです。この縦穴法を探し出したことで南部太ネギ復活の動きが加速し、農家が続々と栽培に名乗りを上げてくれました。
 さらに高校生のがんばりは町長や行政そして町の活性化に取り組んできたNPOの方々の心を動かし、復活プロジェクトが本格化しました。今年度は関東地区の高級デパートでの販売も実現し、売り場ではどのような想いで南部太ネギを守ってきたか、というバックグラウンドも伝えることができました。南部太ネギの種を未来に伝えていくこと。それは、南部町の未来を守っていくことにつながっていくと信じて活動を続けていきたいです。

5部門優秀賞の発表! はたして大賞はどこに!?

いよいよ5部門の優秀賞を受賞した団体のプレゼンテーションに移ります。
このプレゼンテーションによって最終審査を行い、今年度の生物多様性アクション大賞が決定します。

たべよう部門優秀賞

特定非営利活動法人加茂女
竹を食べて放置竹林をなくす

たべよう部門優秀賞

 わたしたちは竹を食べて放置竹林をなくそう、という運動に取り組んでいます。特定非営利活動法人加茂女は子育ての悩みや生活の知恵を共有する井戸端会議の会として発足し、何か地域の役に立つことをしたい、という想いからアルミ缶の回収を行い、その回収資金を寄付する活動を始めました。
 わたしたちの街は京都の山城筍の本場です。昔は風光明媚な竹林が広がっていましたが、竹の需要は年々減り続け、中国産の筍に価格で負けてしまった事と地元の高齢化と相まって段々と放置竹林が増えていきました。ある時、放置竹林の中にゴミを不法投棄される、という事件が起きて、最終的に産業廃棄物の埋め立て地となってしまいました。苦い経験を経たわたしたちは、アルミ缶の回収資金でナタやノコギリ、チェーンソウを買いそろえて自分たちで竹林整備に乗り出しました。ちょうど地元住民の定年退職時期とも重なり、退職した人たちも加わって、男性参加者が増えました。
 今では急峻な山の上1.4ヘクタールほどの広さの竹林整備を任されています。竹を切り出すためのトロッコのようなものを開発したり、竹で小屋を造ったり、ピザ釜も作りました。お昼ごはんに竹を燃料にしてピザを焼いたり、焼き芋を焼いたりして楽しんでいます。燃やすだけではもったいないと、竹細工で器をつくったりもしました。
 工夫をしていても減る分はたかが知れています。そこで、誰が言うでもなく竹は食べて減らそう、筍のうちに食べてしまおう! ということになりました。筍とリンゴで「竹林ジャム」を作ったり、生地に竹の粉末を入れ具材に筍を使った「おやき」を作ったり、味付けして乾燥させた「筍スルメ」を作ったりと、今までとはひと味ちがった食べ方を開発して提案しています。

ふれよう部門優秀賞

公益財団法人東京動物園協会井の頭自然文化園
いきもの広場で遊ぼう

たべよう部門優秀賞

 井の頭自然文化園は吉祥寺にある小さな動物園です。「いきもの広場」は動物園の中に造った施設ですが、飼育している動物はいません。自然に集まってきた生きものたちを観察できる場所です。広さは約1300平方メートル。昆虫の餌となる木を植えたり、生きものを見やすくなるための仕掛けをつくったりしました。
 たとえば、土の中で暮らす虫の様子が見られる観察ボード。樹液に集まる虫がやってくるバナナトラップ。ヤモリのお家などです。生きものが暮らし繁殖しやすいように仕掛けをすることで様々な姿を1年中楽しめます。これまでに観察された生きものは約300種を越えました。いきもの広場は毎週日曜日に1時間オープンしています。その間は井の頭自然文化園の職員とボランティアスタッフ十数人で子どもたちと一緒に生きもの探しをしています。毎回約130人くらいの利用があって、そのうちの1/3がリピーターです。
 「いきもの広場」では、生きものを見るだけではなくて触ってもらいたい。名前を知ることよりもどんな感触だった、とか、どこにどんなふうにいた、とか、子どもたち自身に感じてもらいたい。生きものを見つけるコツをつかんだら、外に出かけていって生きもの探しをしてもらいたい。そんな想いで活動しています。そのためにはスタッフの存在がとても重要です。生きものを発見する喜びを共有したり、触れない子どもを励ましたり、何よりスタッフが子どもたち以上に生きものに夢中になる姿を見せることでこんな風に自然を楽しんでいいんだよ、ということを身をもって伝えられると考えているからです。
 「いきもの広場」であそんだ子どもたちが、生きものを守りたいという気持ちを自然に育んで、将来、生物多様性の大切さを自分のこととして考えられる大人になることを願っています。

つたえよう部門優秀賞

一般社団法人てるはの森の会
人と自然のふれあい調査

つたえよう部門優秀賞

 照葉樹林をご存知ですか? 椎や樫などの常緑広葉樹は葉がテカテカと光って見えることから、しょうよう、てるは、と言われています。昔は西日本に群生していましたが、今はほとんど伐採されて残っていません。まとまった照葉樹が国内最大級に残っているのが宮崎県綾町です。これを守ろうと2005年綾の照葉樹林プロジェクトが始まりました。
 一般社団法人てるはの森の会と官民五社で協定を結んで活動をしています。目的は2つ。ひとつは照葉樹林の保護復元。もうひとつは照葉樹林とその文化を通じた地域づくりです。照葉樹林帯の近くにある人工林の間伐をして照葉樹の芽吹きを促し、最後には人工林を切って照葉樹林を復元します。しかし大きな問題がありました。もともと綾の森は天然の山ではなく大きな二次林だったこともあり、地元の人にとっては行政がやっていることという認識でプロジェクトを遠く感じていました。そこで、人と自然のふれあい調査を始めました。
 調査の目的は地域にある人と自然の豊かなふれあいを再発見し、守り、引き継いでいく。地域を考えることで、生物多様性の豊かさを感じ、プロジェクトに参加してもらう人を増やそうということです。調査はアンケートをとり、世代別に懇談会を開き、みんなで現地を歩いて調査を行い、お年寄りには聞き取りをして、集まった情報をGPSで地図上に落とし込んでマップ作りをしました。この調査は外部の有識者が始めたものを地元NPOが引き継ぎ、住民の参加を促すかたちで現在進められています。地元住民が自然の豊かさ地域の重要性を再認識し、地域の未来を考えることにつながっています。
 様々な取り組みが評価され2012年7月、綾は生物圏保存地域としてユネスコエコパークに正式登録されました。8年目を迎えたふれあい調査は現在も継続中です。後世に何を残し、何を伝えていけば良いのか。ふれあい調査は皆さんの地域でも生物多様性を実感でき地域の再発見につなげることができます。

まもろう部門優秀賞

湖南企業いきもの応援団
中小企業連携で進める生物多様性保全の取り組み

まもろう部門優秀賞

 湖南企業いきもの応援団は、滋賀県の南部に拠点を置く中小企業の集まりで、メンバーは12社で業種は様々です。活動のきっかけとなったのは滋賀経済同友会が発表した「琵琶湖生きものイニシアティブ」という宣言です。生物多様性を守ることは身近な生きものをあるべき姿で未来に引き継ぐことと考え、まずは、身近な生きものたちの現状を調べることから始めました。
 中小企業が集まってネットワークを作ることで1社当たりの負担を減らし、情報を共有して、交流を深めながら継続的な調査を行うことを目指してきました。調査結果の信頼性を高めるため、草津市の環境課や琵琶湖博物館の協力をいただいています。
 活動拠点は地元の狼川。上流から下流まで6カ所の調査ポイントを設け、2010年の5月から調査を開始して季節ごとに年4回調査をしています。調査のやり方は各社2-3名ずつ出て、20名ほどがそれぞれの場所に別れて、水質調査と生きものの採取を行います。その後、1ヶ所に集合して、採れた生きものの種の同定、計測、記録撮影などを行います。採った生きものは採集場所に戻してから調査結果を取りまとめます。これまでに絶滅危惧種のメダカなども見つかっていますが、外来種の多さにも驚かされています。この調査データを参考に、県の指定外来種の候補が検討されるなど、県の自然保護政策にも貢献しております。
 また、COP10の公開フォーラムをはじめ、様々な場所で活動報告をさせていただいております。新たな展開として、今年度からは地域との連携を始めており、草津市のこども環境会議や地元のふれあいイベントにも参加し、小学校への出前授業や夏休みの公開講座のお手伝いなども行っており、この小学校には「狼川水族館」が作られました。狼川はありふれた都市河川です。「ないものねだりより、あるものさがし」、身近な自然こそが生物多様性を考える絶好の場所だと、この活動を通じて感じています。これからも横の連携を広め、未来に向かって縦の連携を伸ばしていくことが、生物多様性の主流化につながる新しいアプローチになるのではないでしょうか。

えらぼう部門優秀賞

三菱地所レジデンス株式会社
BIO NET INITIATIVE(ビオネットイニシアチブ)〜いのちをつなぐ街づくり〜

えらぼう部門優秀賞

 私たちは、年間約5,000戸・50棟のマンションを供給しています。このマンション1棟1棟で行い、いのちをつなぐ街づくりを目指しています。
 最初に、住宅街を鳥や虫の目線で見てみたいと思います。聞くところによるとシジュウカラは1度に飛べる距離がわずか100m前後だそうです。このシジュウカラが街を行き来するためには、シジュウカラが良く知った、好きな樹木が繋がっている必要があるそうですが、大きな公園にはそういった木々が生えていても、その周辺にそういった木々がなければ、行動範囲を広げづらいということに気づかされて驚きました。
 そこで、私たちはマンションの敷地の大小に関らず、全てのマンションで生物多様性の保全を意識した植栽計画を行うことで、エコロジカルネットワークが形成されていくことを目指すこととしました。つまり、30戸くらいの小規模なマンションから700戸くらいの大規模マンションの全てで実施することで、点が繋がって線となり、面としてつながる街づくりをしています。一つ一つのマンションで取り組んでいる具体的なアクションは、購入するお客様にも分かりやすいよう「守ること」「育てること」「つなぐこと」「活かすこと」「減らすこと」の5つにまとめました。例えば、地域の在来種を大切にする、病害虫の発生の少ない樹種を選ぶ、刈り込みの頻度を減らす、といった取り組みをしています。私たちが目指していることは、この取り組みを先進的な取り組みとして取り扱われることではありません。私たちが敷地の大小に関わらず一つ一つ取り組み続けることで、このアクションを世の中の常識にしたいと考えています。それによって、街での取り組みが地球規模につながっていくと信じています。
※本取り組みは、当社の分譲マンションブランド「ザ・パークハウス」で行っているものです。

息を呑む緊張の一瞬!
いよいよ大賞の発表です!

それではいよいよ、大賞の発表です!
大賞は各部門の優秀賞の中から1団体が選ばれます。
生物多様性アクション大賞2015、栄えある大賞に輝いたのは、

たべよう部門優秀賞
『特定非営利活動法人加茂女』です!

おめでとうございます!

たべよう部門優秀賞

吉田審査委員長からこのようなコメントをいただきました。

「特定非営利活動法人加茂女の活動は、アルミ缶回収から始まって活動歴28年。これだけ長く継続するのは非常に大変なことです。継続だけでも素晴らしいですけれども、放置竹林問題は日本全国で大きな課題となっています。この放置竹林を食べて解決しよう、という発想がまず素晴らしい。そこから更に踏み込んで、たくさんの人を巻き込みながら活動を続けていること。たとえば、竹林にピザ釜を作るなど竹林の環境整備に男性陣も巻き込んで、参加者の層が広がっていった点を高く評価して大賞とさせていただきました」

続いて、受賞者の方からも一言コメントをいただきました。

「思わぬことで自分自身がビックリしています。目の前の問題と一生懸命格闘してきただけの人生でしたけれども、こんな賞をいただけるなんて本当に光栄です。ありがとうございます」

喜びの余韻が残る中、吉田審査委員長より総評をいただきました。

 「本当にどの賞の方も素晴らしくて、最終審査は審査員一同、選ぶのに非常に苦労しました。たべよう部門『特定非営利活動法人加茂女』の活動は長い間の継続と竹を食べて減らすという素晴らしい発想が受賞理由です。
 ふれよう部門優秀賞『公益財団法人東京動物園協会井の頭自然文化園』の活動は、自然にいるごく普通の生きものを、飼育するのではなく、集まってくるように工夫をしたこと。参加者と一緒にスタッフが楽しむことで生物多様性への理解を深めていること。将来は生物多様性の重要性が理解できる大人になってほしいというメッセージ、非常に素晴らしかったです。
 つたえよう部門優秀賞『一般社団法人てるはの森の会』は照葉樹林復元の動きの中でプロジェクトとしてもユネスコエコパークに指定されたということも素晴らしいですが、住民を巻き込んだことがポイントですね。地域の人たちが自分たちの価値を再発見していったところを特に評価します。
 まもろう部門優秀賞『湖南企業いきもの応援団』はなんといっても多様な業種の中小企業の方々が集まってひとつの川の流域の生きものや水質を6年にわたって調査され、それが専門家との恊働できちんと科学的裏付けがとれている、という質の高い活動です。
 えらぼう部門優秀賞『三菱地所レジデンス株式会社』はプレゼンテーションの最後のメッセージが素晴らしかったですね。先進的ということではなくてこれを当たり前にしたい、というのが印象的でした。マンションにおける生物多様性保全の取組みを点から面へと広げてネットワーク化をし、さらに生きものの視点が入っていることも素晴らしかったです。
全体としてはこれまでを上回るたくさんのご応募をいただいたこと、中でも高校生をはじめとした学生の方の応募が多数みられたこと。若い力が段々増えてきたことも2015年の特徴でした。」

関係団体の皆さまから応援メッセージをいただきました!

結びに、生物多様性アクション大賞開催にあたり、お力添えいただいた企業や団体の皆様から応援スピーチをいただきました。

まずはじめに、協賛・協力企業の皆様から応援メッセージをいただきます。

前田建設工業株式会社

前田建設工業株式会社 CSR・環境部 マネージャー 伊東晃様

 「弊社が本大賞を応援している理由が2つあります。ひとつは草の根的な生態系保全活動に光を当て、生態系保全活動を全国的に展開しようとされている点です。もうひとつは本大賞が持続的発展を計画されている点です。弊社が営む建設という事業は、少なからず環境に負荷を与えてしまうことがあります。そのため、弊社では施工時に極力環境保全に留意することはもちろん、「地球」と「未来」をステークホルダーと位置付けた、地球への配当という取り組みを行っています。
 これは、連結純利益の2%を上限に、環境保全活動の支援に拠出するものです。この中には、社員の環境活動を推進するためのエコポイントという仕組みがあります。社員やその家族が環境活動に取り組むと、環境配慮製品と交換できるポイントが付与されるもので、環境活動にはグリーンカーテンづくりや生き物の観察など、生物多様性に関する活動が含まれます。
 また、企業としても、森林保全を通じた環境教育やNPOと協働したプロジェクトの企画・参加を通じて、全社一丸となって生物多様性保全を持続的に推進しており、まさに本大賞と目的が一致しています。これから本大賞で受賞された方々の活動に光が当てられていくことで、さらにステップアップした活動が生まれてくることを期待しています」

積水化学工業株式会社

積水化学工業株式会社 CSR部環境経営グループ 能勢泰祐様

 「セキスイハイムという名前で本大賞に協賛させていただいて3年目です。私事ですが、わたしの住まいは横浜市港北ニュータウンにあります。この街はグリーンマトリックスシステムというコンセプトで作られていて住宅の緑、公園の緑が緑道でつながって地域全体でエコロジカルネットワークが形成された街です。週末は犬を連れて公園へ散歩に出かけます。植物や昆虫の写真を撮って環境省の生きものログに報告したりしています。都市の中にいながらも生きものと共存共栄している感覚があります。
 振り返ってみるとわたしの行動も生物多様性アクション大賞5部門に結びついたものになっているな、と実感しています。本大賞がこれからもっと広がりをみせて素晴らしい環境づくりにつながることを期待しております」

富士フイルムホールディングス株式会社

富士フイルムホールディングス株式会社 経営企画部 CSRグループ シニアスタッフ 菱田豊彦様

 「入賞された皆様おめでとうございます。当社はこの生物多様性アクション大賞受賞者にデジタルカメラの贈呈というかたちで2013年(初回)よりご支援させていただいています。皆様の活動を写真に収め広く発信して頂きたいと願っています。
 さて、皆様の発表を拝見していると、どの活動にも笑顔が溢れているなというのが共通していてとても印象的でした。皆様の活動が明るく楽しく活性化しているからこそ笑顔が溢れ、このようなアワードに入賞できるレベルの活動が維持されているのだな、と感じました。この度の受賞を活動の励みにしながら、この笑顔を益々広げて、更に発展していかれることを祈念しています」

公益財団法人国土緑化推進機構

公益財団法人国土緑化推進機構 副理事長 前田直登様

 「私どもはグリーンウェイブ賞として『特定非営利活動法人天明水の会』を表彰させていただきました。
 生物多様性の保全と共に生態系サービスの持続的な利用にむけて流域の視点から多様なフィールドで漁民の森づくりを続けた、という活動です。
 森は海の恋人、というのを地でいくような素晴らしい活動でした。20年以上にわたって植林を続けた、大変なる尽力の中での成果です。森づくりを起点に流域の視点で生きものと人々の暮らしを結びネットワークを広げながら生物多様性保全を促している、このような活動が全国に広がっていくことを心から強く期待しています 」

一般社団法人セブン-イレブン記念財団

一般社団法人セブン-イレブン記念財団、小野弘人様

 「当財団の資金源はセブン-イレブンのレジ横にある募金箱です。1日1店舗約60円です。年間で約4億2,000万円になります。この募金を皆様からお預かりして、助成金として様々なNPOを支援しています。
 それでも届かないようなところに支援を届けるために、共催として本大賞に協力させていただいています。今回受賞された皆さんの中には「なぜそのような活動をやっているの?」と周辺の人に言われたことがある方もいると思われます。でも勇気をもって1歩踏み出してきたからこそ、活動が広がったのだと思います。受賞した皆さん、これからそれぞれの地域に帰って今日の受賞をぜひ自慢してください。こんな賞をもらったんだよ、認められたんだよと自慢してもらいたいです。そして地域から日本の生物多様性を広げていってほしい。地域が変われば日本が変わります。みんなで日本を変えていきましょう。生物多様性を日本から変えていきましょう

最後に環境省生物多様性施策推進室 鈴木宏一郎から閉会のご挨拶です。

「受賞された皆様おめでとうございます。皆さんの日頃の取り組みが本当に素晴らしかった、ということだと思います。本大賞はMY行動宣言に基づく5つのアクションにつながる活動を表彰するものです。それぞれの地元にお帰りになって、ぜひこの5つのアクションを広めていただければと思います。また、今回賞を逃した方の中には、悔しいという想いの方もいらっしゃるかもしれませんので、ぜひまた来年、活動をバージョンアップして本大賞にご応募いただけたらと思います」

さかなクンと共演!
エコプロダクツ2015会場でオンステージ!

さかなクン

授賞式の翌日、5部門優秀賞受賞者の皆さまは、エコプロダクツ2015会場のステージで、生物多様性アクション大賞アンバサダーのさかなクンと共演。大賞を受賞した特定非営利活動法人加茂女の曽我千代子さんには活動内容を発表していただきました。さかなクンによる、お魚クイズを交えたトークも楽しく、会場は大入り満員の大盛況で、生物多様性をぐっと身近に感じられるステージになりました。

未来は「いま」の積み重ね。ここから始まる明るい未来

今年も日本全国から素敵な活動が寄せられた生物多様性アクション大賞。応募総数は135件となり過去最高を記録しました。 2020年には生物多様性の損失が食い止められて、2050年には自然と共生した社会を作ろう、という生物多様性条約愛知目標の実現へ向けた動きの中で、本年、2015年は「国連生物多様性10年」の中間年。花も虫も鳥も獣も、そしてもちろん、わたしたち人も、あらゆる生きものは分かち難く結びついていて、自然という大いなる循環の中で生かされている。そんなことを思いながらたくさんの素晴らしいプレゼンテーションに耳を傾け、これまでを振り返り、これからに思いを馳せました。

未来は「いま」という時間の積み重ね。たべよう、ふれよう、つたえよう、まもろう、えらぼう、という暮らしに根ざした5つのアクションに取り組むことが、生物多様性を守り、地球がよみがえることにつながります。きっとその先には、いのちを生かし合い、共に成長する、素敵な未来が見えてくるに違いありません。

日程:2015年12月11日(金)
時間:14:00–17:00 13:30受付開始
場所:東京ビックサイト 会議棟7階 703会議室

主催:国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)
共催:一般社団法人セブンーイレブン記念財団

授賞式レポート

いよいよ授賞式が始まります

晴れやかな笑顔が集まって。
いよいよ授賞式が始まります!

授賞式会場となった東京ビックサイトに、日本各地から受賞者の方々が多数集まりました。受賞団体の皆様には審査委員並びに協賛企業の皆様から表彰状と目録が贈られます。

たべよう部門優秀賞 特定非営利活動法人加茂女

たべよう部門優秀賞
特定非営利活動法人加茂女

ふれよう部門優秀賞 公益財団法人東京動物園協会井の頭自然文化園

ふれよう部門優秀賞
公益財団法人東京動物園協会井の頭自然文化園

つたえよう部門優秀賞 一般社団法人てるはの森の会

つたえよう部門優秀賞
一般社団法人てるはの森の会

まもろう部門優秀賞 湖南企業いきもの応援団

まもろう部門優秀賞
湖南企業いきもの応援団

えらぼう部門優秀賞 三菱地所レジデンス株式会社

えらぼう部門優秀賞
三菱地所レジデンス株式会社

復興支援賞 いわき海洋調べ隊・うみラボ

復興支援賞
いわき海洋調べ隊・うみラボ

グリーンウェイブ賞 特定非営利活動法人天明水の会

グリーンウェイブ賞
特定非営利活動法人天明水の会

セブン-イレブン記念財団賞 青森県立名久井農業高等学校伝統野菜班

セブン-イレブン記念財団賞
青森県立名久井農業高等学校伝統野菜班

審査委員賞

審査委員賞
(上列左から)
気仙沼の魚を学校給食に普及させる会
富士ゼロックス株式会社
京都府立桂高等学校
TAFS「地球を守る新技術の開発」班
(下列左から)
特定非営利活動法人ういむい未来の里CSO
全国農業協同組合連合会
やまがたヤマネ研究会

3ピースに想いを込めて!
白熱のプレゼンテーションタイム!

ここからは、受賞団体によるプレゼンテーションの時間です。3枚のスライドを使って活動を紹介する「3ピーストーク」という手法で発表していただきました。それでは、審査委員賞から順番に見ていきましょう。

審査委員賞

特定非営利活動法人ういむい未来の里CSO
「森のいのち」を詩と映像で残す事業

審査委員賞

 わたしたちは子どもたちが森に入って感じたところを詩で表現する、という活動を続けています。今年は詩人の谷川俊太郎さんに批評していただく、という会を実施しました。
 森の中の川にもたくさんの生きものがいます。サンショウウオや日本ザリガニも住んでいます。川遊びをすると子どもたちはもう夢中で川からあがってきません。日本ミツバチも飼っています。はちみつは素晴らしくいい味がして子どもたちに分け与えるとワーっと感動します。
 こういうことをしながら森の素晴らしさを子どもたちに伝えています。森に入って感じたことを詩にして表現する。そういう感性が今少し失われているな、と感じますのでそれを高めていけたらという想いで活動しています。

気仙沼の魚を学校給食に普及させる会
魚食普及による地方創生を図るプロジェクト

審査委員賞

 子どもたちが地元の基幹産業である漁業を知らないまま、地元の食にふれないまま大人になっていく。これをどうにかしたいと思い学校給食に着目しました。学校給食の中身を調べると輸入食材が多く、地元の食材は全くと言っていいほど使われていません。一方、地元には内閣総理大臣賞などの賞をとった素晴らしい食材がありました。学校給食に地元の食材を使う。そして、それをみんなで食べるということを始めました。
 こちらは授業をやっている風景です。給食に使われている魚は誰がとって、誰が運んできて、誰が調理して、というように、食に携わる人に一人ずつスポットを当てて紹介することで、どういう仕事があるのか、どういうつながりがあるのか、ということを学んでもらう取り組みです。
 他にも有名シェフが地元食材を使ったレシピを考案して商品化したり、パンフレットをつくって市内の学校に配布したりしています。食の大切さに対する意識を高めるためにも気仙沼から全国に発信していきたいです。

全国農業協同組合連合会』
田んぼの生きもの調査

審査委員賞

 お米を食べることがすなわち生物多様性を保っている、ということをわたしたちは積極的に伝える活動をしています。「田んぼの生きもの調査」は皆さんよくご存知でしょうが、全国で70カ所以上、のべ4,000人以上の方が参加する活動です。
 真剣な面持ちで田んぼの生きものを見ている子どもの表情や、図鑑を見ながら田んぼの生きものについて学んでいる姿をご覧ください。こんな子どもたちを全国に増やしていこう。そして、こういうことを理解していただける農家の方も増やしていこうということも併せて取り組んでいる活動です。
 田んぼはそこにあるだけで多面的な機能を発揮します。田んぼはみんなのそばにあるんだ。そして、お米をたくさん食べることでこの田んぼが守られ、生物多様性も保たれていく、ということをこれからも伝えていきます。

京都府立桂高等学校 TAFS「地球を守る新技術の開発」班
地域の自生芝を活用する〜多様性のある草原を創る〜

審査委員賞

 ノシバという植物の研究を通して遺伝的多様性の保全を提案しています。研究をはじめて8年目です。今年は環境省から青森県種差海岸の緑化を依頼されました。種差海岸は広大な天然芝地が貴重な観光資源となっている場所で、昭和40年までは馬の放牧によって芝地が維持されてきましたが、現在は人間の芝刈りで管理がされています。
 研究班では通常10%以下であるノシバの発芽率を90%以上に向上させる技術を開発して、その依頼に応えることができました。開発した種子繁殖技術は薬品を使いノシバの固い殻を溶かして開発した発芽容器に入れて発芽させます。これは自然界で馬や牛などの草食動物にノシバの種が食べられて消化器官を通って発芽率が向上するメカニズムを応用しています。
 わたしたちは緑化の際の遺伝子汚染に配慮しています。DNA解析による調査を実施した結果、種差海岸固有のノシバであることと同時に遺伝的多様性が失われつつあることが明らかになりました。馬の放牧がなくなり、栄養繁殖によるクローン体の増殖によることが原因でした。遺伝的多様性が失われてしまうと、環境の変化や病害虫の発生などによって一気に衰退してしまう可能性もあるので保全が必要です。私達の種子繁殖技術を用いた緑化方法は、この多様性を復元できる技術としても有効な手段になります。

富士ゼロックス株式会社
持続可能な用紙調達

審査委員賞

 複写機複合機を販売するメーカーとしてお客様に提供する紙を持続可能なものにしようと、森林保全、中性紙化、古紙の再利用、さらには、FSC認証紙やグリーン購入法適合用紙の調達・販売を進めてきました。
 このような取り組みを持続可能なものにするため、2004年に用紙調達に関する規則を設け、2012年に改定し、サプライヤーに対する取引基準を定めています。取り組みの詳細を昨年度のサステナビリティレポートに「持続可能な用紙調達に向けて」というタイトルで特集記事として掲載しました。その中にも書いたことなのですが、規則を作っただけではそれは守られません。わたしたちはその規則の遵守を確認するため、毎年サプライヤーの取り組みを調査し、その結果を経営層も含めた会議で確認しています。
 さらに現地を訪れて持続可能であるかどうかを確認することも続けています。これからもお客様に安全・安心な用紙を提供できるよう、この活動を続けていきます。

やまがたヤマネ研究会
高めよう!野生動物を守る地域のパワー

審査委員賞

 ヤマネという天然記念物の動物の研究情報を地域に還元したい、という想いで立ち上げました。山形県に生息している野生ほ乳類に直接会ったことがある人はほとんどいないと思います。また、絶滅種の問題、外来種の問題、鳥獣害被害の問題、など野生動物と人との間にある問題を実際に学ぶ機会は多くありません。
 そこで、地域の人たちが地元の自然環境を守り伝えていく場所を作るために自然体験プログラムを提供しています。プログラムでは2つのことを大切にしています。ひとつは最大限に五感を使うこと。ふたつめは科学的な視点をもって取り組むこと。とにかく、生きものを見て、さわって、食べて、体感します。そして大学レベルのDNA実験を行いますし、解剖なども行います。
 生きものを知ることはとても楽しいことなんだ、ということを伝えると共に、自分の体の仕組み、命のこと、衛生問題や社会問題なども含めてお話するようにしています。また、地域の行政や団体、大学などの力を借りて毎年新しいプログラムを提供できるようにしています。わたしたちは野生動物と人との「つなぎびと」として活動していきたいと考えています。

つづいて、特別賞を受賞した団体のプレゼンテーションです。

復興支援賞

いわき海洋調べ隊・うみラボ
いちえふ沖海洋調査

復興支援賞

 福島の漁業はあまり進展がないのかなというイメージの方も多くいらっしゃると思います。わたしは蒲鉾メーカーに勤めていて、福島の魚ってもう食べられませんよねって言われることが多くありました。わたし自身なかなかハッキリしたことが言えない、自分たちの地元のことなのにわからない、そういう歯痒さを感じていました。
 そこで海ラボという調査がスタートしました。福島第一原子力発電所目の前、3km〜5kmのエリアで魚釣りをして放射性物質の量を測ってインターネットで情報発信をする取り組みを続けています。第一原発沖はとてもシビアな現場だけれども、魚がたくさんいて、釣れればやっぱり笑顔になる。厳しい状況と本当に楽しい状況が混在している、というのが今の福島です。
 調査はいわき市のアクアマリン福島という水族館の協力を得て、釣った魚の放射性物質を測ったり、美味しい食べ方を勉強して実際に食べてみたりする、という活動を行っています。科学的な視点を交えて調べることで魚の汚染の状況や福島の海の生態や福島第一原子力発電所から出ている汚染水への理解が深まります。
 原発事故を経験したからこそ、問題意識が生まれて、市民の側から学んでいこうという気持ちが芽生えました。これからも福島の海だからこそ伝えていける生物多様性や海の豊かさを皆さんと一緒に考えられるような活動を長く続けていきたいです。

グリーンウェイブ賞

特定非営利活動法人天明水の会
漁民の森づくり活動

グリーンウェイブ賞

 『豊漁の海。有明海!』と言われますが、実は、有明海を代表する魚、ムツゴロウが一時期姿を消したのです。ムツゴロウだけではありません。環境に敏感な二枚貝のアサリなどはわずか10年で1/100にまで減りました。これが私たちの活動のきっかけとなり、海の再生に立ち上がりました。
 海の栄養の大部分は川から供給されています。そこで、その川を1本に結んで緑川の清流を取り戻す流域連絡会を作りました。緑川の流域は76km、その周囲には13市町村があり、その人たちが連絡会に参加してくれました。そこで、年に1回、母なる川、緑川の清掃を行っています。更に、山に木を植え、今では植林した場所は42㏊になり、植えた木の本数は8万本を越えています。
 子どもたちも森づくりや清掃活動に参加してくれています。20数年間活動してみて気づいたことは「長く続けるには、大人の遊び心が大切」。遊び心を持ち続けたおかげで子どもたちがついてきてくれていると思います。子どもたちの未来のためにも、今後もがんばっていきます。

セブン-イレブン記念財団賞

青森県立名久井農業高等学校伝統野菜班
南部太ネギで地域を元気に

セブン-イレブン記念財団賞

 南部太ネギは青森県県南地方や岩手県県北地方まで広く栽培されていましたが、いつしか栽培農家数はたった1軒となり絶滅の危機に瀕していました。そんな時に立ち上がったのが青森県立名久井農業高等学校伝統野菜班です。最後の生産者から貴重な種を譲り受け、学校での栽培に挑戦しました。
 南部太ネギはやわらかい食感がある反面、葉の付け根が広がりやすく機械で土寄せをすると土が葉とは葉の間に入り込んで商品価値が下がってしまいます。土寄せの問題がない栽培方法を追い求めていた時に縦穴法の存在を知ります。畝に深さ30センチの穴をあけて、その中に苗を落とす方法です。土寄せは不要で除草の回数も減らすことができる、夢の方法だったのです。この縦穴法を探し出したことで南部太ネギ復活の動きが加速し、農家が続々と栽培に名乗りを上げてくれました。
 さらに高校生のがんばりは町長や行政そして町の活性化に取り組んできたNPOの方々の心を動かし、復活プロジェクトが本格化しました。今年度は関東地区の高級デパートでの販売も実現し、売り場ではどのような想いで南部太ネギを守ってきたか、というバックグラウンドも伝えることができました。南部太ネギの種を未来に伝えていくこと。それは、南部町の未来を守っていくことにつながっていくと信じて活動を続けていきたいです。

5部門優秀賞の発表! はたして大賞はどこに!?

いよいよ5部門の優秀賞を受賞した団体のプレゼンテーションに移ります。
このプレゼンテーションによって最終審査を行い、今年度の生物多様性アクション大賞が決定します。

たべよう部門優秀賞

特定非営利活動法人加茂女
竹を食べて放置竹林をなくす

たべよう部門優秀賞

 わたしたちは竹を食べて放置竹林をなくそう、という運動に取り組んでいます。特定非営利活動法人加茂女は子育ての悩みや生活の知恵を共有する井戸端会議の会として発足し、何か地域の役に立つことをしたい、という想いからアルミ缶の回収を行い、その回収資金を寄付する活動を始めました。
 わたしたちの街は京都の山城筍の本場です。昔は風光明媚な竹林が広がっていましたが、竹の需要は年々減り続け、中国産の筍に価格で負けてしまった事と地元の高齢化と相まって段々と放置竹林が増えていきました。ある時、放置竹林の中にゴミを不法投棄される、という事件が起きて、最終的に産業廃棄物の埋め立て地となってしまいました。苦い経験を経たわたしたちは、アルミ缶の回収資金でナタやノコギリ、チェーンソウを買いそろえて自分たちで竹林整備に乗り出しました。ちょうど地元住民の定年退職時期とも重なり、退職した人たちも加わって、男性参加者が増えました。
 今では急峻な山の上1.4ヘクタールほどの広さの竹林整備を任されています。竹を切り出すためのトロッコのようなものを開発したり、竹で小屋を造ったり、ピザ釜も作りました。お昼ごはんに竹を燃料にしてピザを焼いたり、焼き芋を焼いたりして楽しんでいます。燃やすだけではもったいないと、竹細工で器をつくったりもしました。
 工夫をしていても減る分はたかが知れています。そこで、誰が言うでもなく竹は食べて減らそう、筍のうちに食べてしまおう! ということになりました。筍とリンゴで「竹林ジャム」を作ったり、生地に竹の粉末を入れ具材に筍を使った「おやき」を作ったり、味付けして乾燥させた「筍スルメ」を作ったりと、今までとはひと味ちがった食べ方を開発して提案しています。

ふれよう部門優秀賞

公益財団法人東京動物園協会井の頭自然文化園
いきもの広場で遊ぼう

たべよう部門優秀賞

 井の頭自然文化園は吉祥寺にある小さな動物園です。「いきもの広場」は動物園の中に造った施設ですが、飼育している動物はいません。自然に集まってきた生きものたちを観察できる場所です。広さは約1300平方メートル。昆虫の餌となる木を植えたり、生きものを見やすくなるための仕掛けをつくったりしました。
 たとえば、土の中で暮らす虫の様子が見られる観察ボード。樹液に集まる虫がやってくるバナナトラップ。ヤモリのお家などです。生きものが暮らし繁殖しやすいように仕掛けをすることで様々な姿を1年中楽しめます。これまでに観察された生きものは約300種を越えました。いきもの広場は毎週日曜日に1時間オープンしています。その間は井の頭自然文化園の職員とボランティアスタッフ十数人で子どもたちと一緒に生きもの探しをしています。毎回約130人くらいの利用があって、そのうちの1/3がリピーターです。
 「いきもの広場」では、生きものを見るだけではなくて触ってもらいたい。名前を知ることよりもどんな感触だった、とか、どこにどんなふうにいた、とか、子どもたち自身に感じてもらいたい。生きものを見つけるコツをつかんだら、外に出かけていって生きもの探しをしてもらいたい。そんな想いで活動しています。そのためにはスタッフの存在がとても重要です。生きものを発見する喜びを共有したり、触れない子どもを励ましたり、何よりスタッフが子どもたち以上に生きものに夢中になる姿を見せることでこんな風に自然を楽しんでいいんだよ、ということを身をもって伝えられると考えているからです。
 「いきもの広場」であそんだ子どもたちが、生きものを守りたいという気持ちを自然に育んで、将来、生物多様性の大切さを自分のこととして考えられる大人になることを願っています。

つたえよう部門優秀賞

一般社団法人てるはの森の会
人と自然のふれあい調査

つたえよう部門優秀賞

 照葉樹林をご存知ですか? 椎や樫などの常緑広葉樹は葉がテカテカと光って見えることから、しょうよう、てるは、と言われています。昔は西日本に群生していましたが、今はほとんど伐採されて残っていません。まとまった照葉樹が国内最大級に残っているのが宮崎県綾町です。これを守ろうと2005年綾の照葉樹林プロジェクトが始まりました。
 一般社団法人てるはの森の会と官民五社で協定を結んで活動をしています。目的は2つ。ひとつは照葉樹林の保護復元。もうひとつは照葉樹林とその文化を通じた地域づくりです。照葉樹林帯の近くにある人工林の間伐をして照葉樹の芽吹きを促し、最後には人工林を切って照葉樹林を復元します。しかし大きな問題がありました。もともと綾の森は天然の山ではなく大きな二次林だったこともあり、地元の人にとっては行政がやっていることという認識でプロジェクトを遠く感じていました。そこで、人と自然のふれあい調査を始めました。
 調査の目的は地域にある人と自然の豊かなふれあいを再発見し、守り、引き継いでいく。地域を考えることで、生物多様性の豊かさを感じ、プロジェクトに参加してもらう人を増やそうということです。調査はアンケートをとり、世代別に懇談会を開き、みんなで現地を歩いて調査を行い、お年寄りには聞き取りをして、集まった情報をGPSで地図上に落とし込んでマップ作りをしました。この調査は外部の有識者が始めたものを地元NPOが引き継ぎ、住民の参加を促すかたちで現在進められています。地元住民が自然の豊かさ地域の重要性を再認識し、地域の未来を考えることにつながっています。
 様々な取り組みが評価され2012年7月、綾は生物圏保存地域としてユネスコエコパークに正式登録されました。8年目を迎えたふれあい調査は現在も継続中です。後世に何を残し、何を伝えていけば良いのか。ふれあい調査は皆さんの地域でも生物多様性を実感でき地域の再発見につなげることができます。

まもろう部門優秀賞

湖南企業いきもの応援団
中小企業連携で進める生物多様性保全の取り組み

まもろう部門優秀賞

 湖南企業いきもの応援団は、滋賀県の南部に拠点を置く中小企業の集まりで、メンバーは12社で業種は様々です。活動のきっかけとなったのは滋賀経済同友会が発表した「琵琶湖生きものイニシアティブ」という宣言です。生物多様性を守ることは身近な生きものをあるべき姿で未来に引き継ぐことと考え、まずは、身近な生きものたちの現状を調べることから始めました。
 中小企業が集まってネットワークを作ることで1社当たりの負担を減らし、情報を共有して、交流を深めながら継続的な調査を行うことを目指してきました。調査結果の信頼性を高めるため、草津市の環境課や琵琶湖博物館の協力をいただいています。
 活動拠点は地元の狼川。上流から下流まで6カ所の調査ポイントを設け、2010年の5月から調査を開始して季節ごとに年4回調査をしています。調査のやり方は各社2-3名ずつ出て、20名ほどがそれぞれの場所に別れて、水質調査と生きものの採取を行います。その後、1ヶ所に集合して、採れた生きものの種の同定、計測、記録撮影などを行います。採った生きものは採集場所に戻してから調査結果を取りまとめます。これまでに絶滅危惧種のメダカなども見つかっていますが、外来種の多さにも驚かされています。この調査データを参考に、県の指定外来種の候補が検討されるなど、県の自然保護政策にも貢献しております。
 また、COP10の公開フォーラムをはじめ、様々な場所で活動報告をさせていただいております。新たな展開として、今年度からは地域との連携を始めており、草津市のこども環境会議や地元のふれあいイベントにも参加し、小学校への出前授業や夏休みの公開講座のお手伝いなども行っており、この小学校には「狼川水族館」が作られました。狼川はありふれた都市河川です。「ないものねだりより、あるものさがし」、身近な自然こそが生物多様性を考える絶好の場所だと、この活動を通じて感じています。これからも横の連携を広め、未来に向かって縦の連携を伸ばしていくことが、生物多様性の主流化につながる新しいアプローチになるのではないでしょうか。

えらぼう部門優秀賞

三菱地所レジデンス株式会社
BIO NET INITIATIVE(ビオネットイニシアチブ)〜いのちをつなぐ街づくり〜

えらぼう部門優秀賞

 私たちは、年間約5,000戸・50棟のマンションを供給しています。このマンション1棟1棟で行い、いのちをつなぐ街づくりを目指しています。
 最初に、住宅街を鳥や虫の目線で見てみたいと思います。聞くところによるとシジュウカラは1度に飛べる距離がわずか100m前後だそうです。このシジュウカラが街を行き来するためには、シジュウカラが良く知った、好きな樹木が繋がっている必要があるそうですが、大きな公園にはそういった木々が生えていても、その周辺にそういった木々がなければ、行動範囲を広げづらいということに気づかされて驚きました。
 そこで、私たちはマンションの敷地の大小に関らず、全てのマンションで生物多様性の保全を意識した植栽計画を行うことで、エコロジカルネットワークが形成されていくことを目指すこととしました。つまり、30戸くらいの小規模なマンションから700戸くらいの大規模マンションの全てで実施することで、点が繋がって線となり、面としてつながる街づくりをしています。一つ一つのマンションで取り組んでいる具体的なアクションは、購入するお客様にも分かりやすいよう「守ること」「育てること」「つなぐこと」「活かすこと」「減らすこと」の5つにまとめました。例えば、地域の在来種を大切にする、病害虫の発生の少ない樹種を選ぶ、刈り込みの頻度を減らす、といった取り組みをしています。私たちが目指していることは、この取り組みを先進的な取り組みとして取り扱われることではありません。私たちが敷地の大小に関わらず一つ一つ取り組み続けることで、このアクションを世の中の常識にしたいと考えています。それによって、街での取り組みが地球規模につながっていくと信じています。
※本取り組みは、当社の分譲マンションブランド「ザ・パークハウス」で行っているものです。

息を呑む緊張の一瞬!
いよいよ大賞の発表です!

それではいよいよ、大賞の発表です!
大賞は各部門の優秀賞の中から1団体が選ばれます。
生物多様性アクション大賞2015、栄えある大賞に輝いたのは、

たべよう部門優秀賞
『特定非営利活動法人加茂女』です!

おめでとうございます!

たべよう部門優秀賞

吉田審査委員長からこのようなコメントをいただきました。

「特定非営利活動法人加茂女の活動は、アルミ缶回収から始まって活動歴28年。これだけ長く継続するのは非常に大変なことです。継続だけでも素晴らしいですけれども、放置竹林問題は日本全国で大きな課題となっています。この放置竹林を食べて解決しよう、という発想がまず素晴らしい。そこから更に踏み込んで、たくさんの人を巻き込みながら活動を続けていること。たとえば、竹林にピザ釜を作るなど竹林の環境整備に男性陣も巻き込んで、参加者の層が広がっていった点を高く評価して大賞とさせていただきました」

続いて、受賞者の方からも一言コメントをいただきました。

「思わぬことで自分自身がビックリしています。目の前の問題と一生懸命格闘してきただけの人生でしたけれども、こんな賞をいただけるなんて本当に光栄です。ありがとうございます」

喜びの余韻が残る中、吉田審査委員長より総評をいただきました。

 「本当にどの賞の方も素晴らしくて、最終審査は審査員一同、選ぶのに非常に苦労しました。たべよう部門『特定非営利活動法人加茂女』の活動は長い間の継続と竹を食べて減らすという素晴らしい発想が受賞理由です。
 ふれよう部門優秀賞『公益財団法人東京動物園協会井の頭自然文化園』の活動は、自然にいるごく普通の生きものを、飼育するのではなく、集まってくるように工夫をしたこと。参加者と一緒にスタッフが楽しむことで生物多様性への理解を深めていること。将来は生物多様性の重要性が理解できる大人になってほしいというメッセージ、非常に素晴らしかったです。
 つたえよう部門優秀賞『一般社団法人てるはの森の会』は照葉樹林復元の動きの中でプロジェクトとしてもユネスコエコパークに指定されたということも素晴らしいですが、住民を巻き込んだことがポイントですね。地域の人たちが自分たちの価値を再発見していったところを特に評価します。
 まもろう部門優秀賞『湖南企業いきもの応援団』はなんといっても多様な業種の中小企業の方々が集まってひとつの川の流域の生きものや水質を6年にわたって調査され、それが専門家との恊働できちんと科学的裏付けがとれている、という質の高い活動です。
 えらぼう部門優秀賞『三菱地所レジデンス株式会社』はプレゼンテーションの最後のメッセージが素晴らしかったですね。先進的ということではなくてこれを当たり前にしたい、というのが印象的でした。マンションにおける生物多様性保全の取組みを点から面へと広げてネットワーク化をし、さらに生きものの視点が入っていることも素晴らしかったです。
全体としてはこれまでを上回るたくさんのご応募をいただいたこと、中でも高校生をはじめとした学生の方の応募が多数みられたこと。若い力が段々増えてきたことも2015年の特徴でした。」

関係団体の皆さまから応援メッセージをいただきました!

結びに、生物多様性アクション大賞開催にあたり、お力添えいただいた企業や団体の皆様から応援スピーチをいただきました。

まずはじめに、協賛・協力企業の皆様から応援メッセージをいただきます。

前田建設工業株式会社

前田建設工業株式会社 CSR・環境部 マネージャー 伊東晃様

 「弊社が本大賞を応援している理由が2つあります。ひとつは草の根的な生態系保全活動に光を当て、生態系保全活動を全国的に展開しようとされている点です。もうひとつは本大賞が持続的発展を計画されている点です。弊社が営む建設という事業は、少なからず環境に負荷を与えてしまうことがあります。そのため、弊社では施工時に極力環境保全に留意することはもちろん、「地球」と「未来」をステークホルダーと位置付けた、地球への配当という取り組みを行っています。
 これは、連結純利益の2%を上限に、環境保全活動の支援に拠出するものです。この中には、社員の環境活動を推進するためのエコポイントという仕組みがあります。社員やその家族が環境活動に取り組むと、環境配慮製品と交換できるポイントが付与されるもので、環境活動にはグリーンカーテンづくりや生き物の観察など、生物多様性に関する活動が含まれます。
 また、企業としても、森林保全を通じた環境教育やNPOと協働したプロジェクトの企画・参加を通じて、全社一丸となって生物多様性保全を持続的に推進しており、まさに本大賞と目的が一致しています。これから本大賞で受賞された方々の活動に光が当てられていくことで、さらにステップアップした活動が生まれてくることを期待しています」

積水化学工業株式会社

積水化学工業株式会社 CSR部環境経営グループ 能勢泰祐様

 「セキスイハイムという名前で本大賞に協賛させていただいて3年目です。私事ですが、わたしの住まいは横浜市港北ニュータウンにあります。この街はグリーンマトリックスシステムというコンセプトで作られていて住宅の緑、公園の緑が緑道でつながって地域全体でエコロジカルネットワークが形成された街です。週末は犬を連れて公園へ散歩に出かけます。植物や昆虫の写真を撮って環境省の生きものログに報告したりしています。都市の中にいながらも生きものと共存共栄している感覚があります。
 振り返ってみるとわたしの行動も生物多様性アクション大賞5部門に結びついたものになっているな、と実感しています。本大賞がこれからもっと広がりをみせて素晴らしい環境づくりにつながることを期待しております」

富士フイルムホールディングス株式会社

富士フイルムホールディングス株式会社 経営企画部 CSRグループ シニアスタッフ 菱田豊彦様

 「入賞された皆様おめでとうございます。当社はこの生物多様性アクション大賞受賞者にデジタルカメラの贈呈というかたちで2013年(初回)よりご支援させていただいています。皆様の活動を写真に収め広く発信して頂きたいと願っています。
 さて、皆様の発表を拝見していると、どの活動にも笑顔が溢れているなというのが共通していてとても印象的でした。皆様の活動が明るく楽しく活性化しているからこそ笑顔が溢れ、このようなアワードに入賞できるレベルの活動が維持されているのだな、と感じました。この度の受賞を活動の励みにしながら、この笑顔を益々広げて、更に発展していかれることを祈念しています」

公益財団法人国土緑化推進機構

公益財団法人国土緑化推進機構 副理事長 前田直登様

 「私どもはグリーンウェイブ賞として『特定非営利活動法人天明水の会』を表彰させていただきました。 生物多様性の保全と共に生態系サービスの持続的な利用にむけて流域の視点から多様なフィールドで漁民の森づくりを続けた、という活動です。
 森は海の恋人、というのを地でいくような素晴らしい活動でした。20年以上にわたって植林を続けた、大変なる尽力の中での成果です。森づくりを起点に流域の視点で生きものと人々の暮らしを結びネットワークを広げながら生物多様性保全を促している、このような活動が全国に広がっていくことを心から強く期待しています」

一般社団法人セブン-イレブン記念財団

一般社団法人セブン-イレブン記念財団、小野弘人様

 「当財団の資金源はセブン-イレブンのレジ横にある募金箱です。1日1店舗約60円です。年間で約4億2,000万円になります。この募金を皆様からお預かりして、助成金として様々なNPOを支援しています。
 それでも届かないようなところに支援を届けるために、共催として本大賞に協力させていただいています。今回受賞された皆さんの中には「なぜそのような活動をやっているの?」と周辺の人に言われたことがある方もいると思われます。でも勇気をもって1歩踏み出してきたからこそ、活動が広がったのだと思います。受賞した皆さん、これからそれぞれの地域に帰って今日の受賞をぜひ自慢してください。こんな賞をもらったんだよ、認められたんだよと自慢してもらいたいです。そして地域から日本の生物多様性を広げていってほしい。地域が変われば日本が変わります。みんなで日本を変えていきましょう。生物多様性を日本から変えていきましょう」

最後に環境省生物多様性施策推進室 鈴木宏一郎から閉会のご挨拶です。

「受賞された皆様おめでとうございます。皆さんの日頃の取り組みが本当に素晴らしかった、ということだと思います。本大賞はMY行動宣言に基づく5つのアクションにつながる活動を表彰するものです。それぞれの地元にお帰りになって、ぜひこの5つのアクションを広めていただければと思います。また、今回賞を逃した方の中には、悔しいという想いの方もいらっしゃるかもしれませんので、ぜひまた来年、活動をバージョンアップして本大賞にご応募いただけたらと思います」

さかなクンと共演!
エコプロダクツ2015会場でオンステージ!

さかなクン

授賞式の翌日、5部門優秀賞受賞者の皆さまは、エコプロダクツ2015会場のステージで、生物多様性アクション大賞アンバサダーのさかなクンと共演。大賞を受賞した特定非営利活動法人加茂女の曽我千代子さんには活動内容を発表していただきました。さかなクンによる、お魚クイズを交えたトークも楽しく、会場は大入り満員の大盛況で、生物多様性をぐっと身近に感じられるステージになりました。

未来は「いま」の積み重ね。ここから始まる明るい未来

今年も日本全国から素敵な活動が寄せられた生物多様性アクション大賞。応募総数は135件となり過去最高を記録しました。 2020年には生物多様性の損失が食い止められて、2050年には自然と共生した社会を作ろう、という生物多様性条約愛知目標の実現へ向けた動きの中で、本年、2015年は「国連生物多様性10年」の中間年。花も虫も鳥も獣も、そしてもちろん、わたしたち人も、あらゆる生きものは分かち難く結びついていて、自然という大いなる循環の中で生かされている。そんなことを思いながらたくさんの素晴らしいプレゼンテーションに耳を傾け、これまでを振り返り、これからに思いを馳せました。

未来は「いま」という時間の積み重ね。たべよう、ふれよう、つたえよう、まもろう、えらぼう、という暮らしに根ざした5つのアクションに取り組むことが、生物多様性を守り、地球がよみがえることにつながります。きっとその先には、いのちを生かし合い、共に成長する、素敵な未来が見えてくるに違いありません。