日程:2016年11月19日(土)
時間:14:00–17:00 13:30受付開始
場所:スクエア荏原・大会議室
主催:国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)
共催:一般社団法人セブンーイレブン記念財団
生物多様性アクション大賞は、生物多様性の主流化を目指して、「国連生物多様性の10年日本委員会」が推進する「MY行動宣言5つのアクション」に基づき、全国各地で行われている個人・団体の活動を表彰するものです。「たべよう部門」、「ふれよう部門」、「つたえよう部門」、「まもろう部門」、「えらぼう部門」の5部門で優秀賞を選定します。さらに授賞式当日、優秀賞受賞者によるプレゼンテーションによって、「大賞」が選定されます。
授賞式会場となったスクエア荏原には、北は東北から南は九州まで日本各地から受賞者の方々が集まり、審査委員並びに協賛企業の皆様から表彰状と目録が贈られました。
たべよう部門優秀賞
株式会社森と暮らすどんぐり倶楽部
ふれよう部門優秀賞
特定非営利活動法人田舎のヒロインズ
つたえよう部門優秀賞
糸島こよみ舎
まもろう部門優秀賞
富士山アウトドアミュージアム
えらぼう部門優秀賞
三菱ケミカルホールデイングスグループ
クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン株式会社
復興支援賞
あじ島冒険楽校
グリーンウェイブ賞
大船渡市立末崎中学校
セブン-イレブン記念財団賞
群馬県立尾瀬高等学校自然環境科
審査委員賞
(上列左から)
サラヤ株式会社/せせらぎの郷/特定非営利活動法人田んぼ
(下列左から)
特定非営利活動法人里山倶楽部/環境ボランティアサークル亀の子隊/カエルPROJECT/特定非営利活動法人エコパル化女沼/特定非営利活動法人都留環境フォーラム
審査委員特別賞
特定非営利活動法人小網代野外活動調整会議
審査委員特別賞、審査委員賞、特別賞の受賞者から、3枚の写真を使った「3ピーストーク」という手法で活動を紹介していただきました。
特定非営利活動法人小網代野外活動調整会議
小網代の森の生物多様性の回復
「私たちが保全活動を進めている小網代の森は三浦半島の南端に位置する長さ1.2kmの小河川、浦の川の流域です。小網代の森は関東地方で唯一源流から海まで自然状態である「流域生態系」で2000種を越える生きものが生息しています。2005年、国土交通省によって近郊緑地保全区域として保全され、現在は神奈川県の管理のもと、私たちが日常的な環境管理・生物多様性回復作業を担当しています。
2009年の夏以降、本格的な湿原回復作業が始まり、笹薮の全面的な伐開と水路の誘導による湿地化を進めました。さらに自然回復と訪問者の安全確保のため全長1300m程の散策路が整備され、2014年夏、一般訪問者へ公開されています。開発計画から全面保全に至るまでの経緯は当会代表理事、慶應義塾大学名誉教授、岸由二が執筆した『「奇跡の自然」の守りかた』をぜひご覧ください。2016年現在、小網代の森の谷底はほぼ全域で湿原化が進んでおり、絶滅危惧種のサラサヤンマやゲンジボタル、ヘイケボタルが乱舞する様子も見られるようになりました。今後も、小網代の森の生物多様性回復に向けて行政、企業、団体などと連携して活動を進めていきます」
特定非営利活動法人エコパル化女沼
ぼくらは里地里山探検隊
「宮城県大崎市にある化女沼は周囲はクリやどんぐりのなるコナラなどの林に囲まれた場所にあり、沼には水生植物も豊富で生物多様性に富んだ地域です。古くから灌漑用の溜め池として維持され、2万羽以上の雁鴨類の重要な越冬地として、2008年10月ラムサール条約登録湿地に指定されました。
私たちは化女沼やその周囲を調査保全すると共に、自然に親しみ大切さを知る環境教育を行っています。調査保全活動として、毎年5月から10月まで外来魚の駆除活動、特定外来植物の駆除作業を行います。今回は子どもたちの五感をくすぐる『里地里山探検隊』という取り組みについて紹介します。山菜を食べよう、外来魚撲滅作戦、ホタルの観察会、昆虫採集と標本作り、ヒシの実やハスの実の採集、山菜や野草採り、キノコや木の実の採集、渡り鳥のねぐら入りと飛び立ちの観察などを行っています。
2016年度は、これまでの調査をもとに化女沼環境教育ゾーンの設置事業を大崎市から依頼され、ビオトープを設置したり、化女沼在来の植物を移植して植生回復に努めたり、3年計画で取り組んでいます」
カエルPROJECT
火の河原の里山の魅力発信
「火の河原は世界遺産になった「尚古(しょうこ)集成館」に鉄を運ぶためのたたら場でした。鉄を精製する時の様子がまるで火の川のようであったことからこのような地名が付けられたそうです。今は周りが山々に囲まれた休耕田で、このような環境で私たちは生きもの調査や観察会を行っています。ここにはシマゲンゴロウ、ミズカマキリ、ムカシトンボなど、珍しい水生昆虫が集まっていて鹿児島市にありながら大変貴重な環境が残っている里山です。
私たちは生きものの観察だけでなく、暮らしの中で身近に自然を感じたり、楽しむことにも力を入れています。2016年からは「カエル子」というゆるキャラを作り、YouTubeに「カエル子のチャンネル」を立ち上げました。地元の伝統文化や自然環境を紹介する内容で、活動のアーカイブ作りにも力を入れています。色々な方に生物多様性について知っていただく機会となるように、映像、写真、音楽も取り入れて活動していきたいと思っています」
環境ボランティアサークル亀の子隊
海を学び、海を食べよう!
「愛知県渥美半島西の浜で、キレイな海を守る心を広げるためのプロジェクトとして、クリーンアップ活動と体験的環境学習「海の環境を学ぶ会」を行っています。私たちはずっと遠い昔から多くの恵みをこの豊かな海からもらってきました。海の素晴らしさや大切さを知り、地域の文化や歴史を学ぶと共に多くの恵みをもたらしてくれる海への感謝の気持ちを育てたいというねらいで活動しています。
タッチングプールでは漁師さんに活魚を持って来てもらいます。子どもたちはピンピン跳ねる魚を掴んで楽しみ、刺身や焼き魚にして味わいます。新鮮な魚の美味しさに子どもたちの食も進みます。そして、目の前の海に多くの種類の魚がいることに感心し、きれいな海は豊かな海だと知ることができます。
海水からの塩作りでは、古墳時代に正塩土器を利用して盛んに行われていた塩づくりの歴史を学びます。鍋に少しずつ海水を入れ煮立て、海水を継ぎ足すことを繰り返しながら、最後は、余熱で乾燥させて完成です。子どもたちはできあがったばかりの塩を舐めて辛さを体感します」
特定非営利活動法人里山倶楽部
コーヒー1杯でできる里山保全
「私たちは里山保全に取り組んでいます。草刈りや間伐など林業ばかりではなく、里山の中には畑も田んぼもあり農業もやっています。また、地元の小学生を対象にした環境教育にも取り組んでいます。
竹炭珈琲は自分たちで作った炭で煎った珈琲です。珈琲自体は15年ほど栽培していますが、1年前から環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業補助金を利用してカーボンオフセット寄付つき商品にリニューアルし、レインフォレストアライアンス認証珈琲をベースに採用しました。レインフォレストアライアンス認証とは、伝統的な栽培方法を用いて森林とそこに暮らす野生生物を守る農園に与えられる認証です。この珈琲を使用することで熱帯雨林を守ることが出来るので、私たちは日本の里山だけでなく、海の向こうにあるブラジルの熱帯雨林も守っていきたいと思っています。
珈琲の売り上げの一部は、大阪府下の里山保全団体約20団体で構成されるネットワーク「チャリティネット森が好き」という団体に寄付をしています。この寄付により自分たちの周りの里山だけでなく、大阪府下全域の里山が元気になっています」
サラヤ株式会社
ヤシノミ洗剤の売上1%で支援するボルネオ環境保全
「ヤシノミ洗剤は昭和46年にできた日本のエコ洗剤です。手肌と地球にやさしいヤシノミ洗剤というキャッチコピーで皆様に親しまれてきました。ところが、21世紀に入ってグローバルな問題に直面しました。2004年夏に、ヤシノミ洗剤の主原料になるアブラヤシがボルネオの熱帯雨林を破壊し、野生生物が絶滅の危機に瀕しているという予想外の事実を突きつけられました。
社長の先導によってボルネオの環境保全活動を始めました。私たちが取り組んだ2つの活動をご紹介します。ひとつはヤシノミ洗剤の売上げの1%をボルネオの環境保全に寄付するという取り組みです。ヤシノミ洗剤の取り組みはこの商品がある限り、ボルネオの環境保全を支援し続けるという終わりのないロングエンゲージメントです。もうひとつはヨーロッパが主導するRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に入会しました。農園から出たカーボンをメーカーが買ってオフセットするというやり方できちんと指針に則ってパームオイルを作っている農園を支援しています」
せせらぎの郷
須原 魚のゆりかご水田プロジェクト
「私たちは、琵琶湖の魚が田んぼで産卵できるように魚道を研究し、生きものが豊かに賑わうための環境保全の取り組みを行っています。
昭和40年頃は、田んぼと琵琶湖をつなぐ水路で魚を採りながら暮らしていました。しかし、昭和48年、琵琶湖総合開発と言われる整備事業が始まり、琵琶湖と田んぼは分断され、農薬や化学肥料を使う生産性と効率化を重視した農法に切り替えられました。多くの生きものが姿を消し、食の環境が大きな危機に直面しました。
2007年より人と生きものが共存できる農業を目指して、農薬や化学肥料を減らし、環境に配慮した「魚のゆりかご水田米」を生産しています。春になると魚は農業用水路を辿って、産卵場所を求めて遡上します。産卵された卵から孵った魚の赤ちゃんは田んぼに入っていきます。これは昔からある水路などの農業資源を活かして今も行われています。このような取り組みを伝えるべく、田植え、稲刈り、観察会などを開催して皆様と一緒に生物多様性の大切さについて認識を深めています」
特定非営利活動法人田んぼ
ふゆみずたんぼの生物多様性を体感する田んぼプロジェクト
「私たちは地域の未来は子どもたちがつくる、と考えています。子どもたちは田んぼで泥にまみれて原体験をしますが、私たちの田んぼは無施肥無農薬なので自由奔放に活動ができます。
『田んぼの生きもの全集リスト』によると、田んぼには全国で5868種の生きものがいるそうです。食用は5000種ほど、そのうち2489種は栽培品種です。皆様が普段口にしている商業ベースのものは150種にすぎません。一方、これを歴史的に見ると、江戸時代に飢饉を救う為に、仙台藩の建部清庵という人が『民間備荒録』や『備荒草木図』という世界で初めての、食べられる植物図鑑を作りました。もしこの知識を身につけたら、人を助けることができ、緊急の場合は自分の命を全うすることもできます。
近年、文化の多様性が高いところは生物多様性もまた高いことがはっきりとわかってきました。逆も然りです。私たちは生物文化多様性という考え方を子どもたちに伝えていきたいと思っています」
特定非営利活動法人都留環境フォーラム
在来馬の伝統耕作復活プロジェクト
「私たちは馬耕という伝統耕作方法を実践しています。今ではトラクターで耕すのが主流ですが、化石燃料を使わずお米を作る方法を残していきたいと思い、馬耕に取り組み始めました。文化を継承するという意味でも馬耕は今やらないと、もうなくなってしまう、消えていってしまう技術だと思います。この活動は3年前に地球環境基金の助成を受けて馬や道具を集めるところから始めました。
活動を広く知ってもらうために「はたらく馬フェス」という馬耕大会を開催し、楽しみながら競技スタイルで馬耕を体験してもらっています。また、「馬耕キャラバン」と言って日本全国を馬耕する活動も続けていて、今年は南は鹿児島から北は岩手まで15カ所回りました。里山で馬と一緒に暮らしている姿を日本に復活させていきたいという想いでこの活動を続けています。馬耕では馬が畑の草を食べ、力を発揮して、堆肥を畑に戻します。このように循環型の農業を続けることで里山や生態系の保全活動を今後も続けていきたいと思っています」
あじ島冒険楽校
昔の子どもたちから未来の大人たちへ
「あじ島冒険楽校は限界集落の小さな活動です。かつて網地島には3000人もの人が住んでいましたが、遠洋漁業と捕鯨が衰退し、今では人口400人、高齢化率9割です。
今から15年ほど前に網地島活性化のための話し合いがあり、観光ではなくもっと心の温かさを感じられることや、生物多様性を子どもたちに教える活動をしたいと思い、あじ島冒険楽校を始めました。子どもたちは自分で釣った魚を骨まで舐めるように食べます。島に生えている竹を使った竹鉄砲づくりも行っています。子どもたちは自分の感覚を使って手を動かし、考えることを覚えます。
東日本大震災で網地島は大きな津波に襲われ、浜には瓦礫が1mほど積もりました。活動を続けることは困難だと思いましたが、3か月後に子どもたちから100通を越える手紙が届き、それを見た島の人たちは一生懸命瓦礫を片付け、次の夏にはなんとか裸足で海に入れるほどのきれいな砂浜を取り戻して、あじ島冒険楽校を再開しました」
大船渡市立末崎中学校
総合的な学習「産土タイム」
「2002年から総合的な学習として「産土タイム」に取り組んでいます。 末崎町は「三陸養殖わかめ」発祥の地として知られています。この活動は、地域の先人が培ってきた地域の特色に価値を見いだし、自らの生き方を模索していくことを目的としています。 1年生はわかめ養殖を柱に、海上での種巻き、早採り、本刈りの作業の後、収穫したわかめのボイル及び塩蔵処理を行います。2年生は、漁家を訪問し指導を受けた後、校内でわかめの芯抜きをしてパック詰めをし「末崎中ふれあいわかめ」として製品化し、生徒自らが販売体験を行います。そして3年生は、「海を守る」をテーマに、恵みをもたらす海を守る活動として森林整備の学習を行います。国有林のフィールドを活用して植樹、下草刈り、間伐の森林整備活動を行っています。
このようにして、森林の重要性とふるさとの自然環境が森林から海まで一体であることを実感します。
2011年3月、東日本大震災の津波により、わかめ養殖場や海上学習フィールドは壊滅的な被害を受けましたが様々な方のご尽力により、11月には学習を再開し今日まで続けてきました」
群馬県立尾瀬高等学校自然環境科
日光白根山のシラネアオイ群落の保護・復元活動
「シラネアオイは日光白根山に多く自生していることから名付けられた日本固有種の植物です。かつては見事なシラネアオイの群落が見られましたが、昭和60年代から盗掘による減少、そして鹿に食べ尽くされてしまい壊滅状態に陥りました。1993年以降、シラネアオイの苗作りと、自生地に電気柵を設置して群落を保護する取り組みが行われています。 1996年に新設された尾瀬高等学校自然環境科は設立当初から授業の一環としてこの活動に加わり、日光白根山のシラネアオイ群落の保護・復元に成果を上げています。
具体的には3年間で一連の保護復元活動に携わるカリキュラムが編成され、3年生が毎年9月中旬、秋になると自生地においてシラネアオイの果実を採集します。次に1年生が果実から取り出した種子を10月中旬に種まきをします。4~5年かけて育成された苗を2年生が現地まで担ぎ上げて自生地へ移植するという3年間のサイクルで活動しています。地元の人たちが高齢化してしまった中で若い高校生の力が活動にはなくてはならない活動の原動力となっています」
そして、5部門の優秀賞を受賞した団体のプレゼンテーション。どこが大賞になってもおかしくない発表内容に、来場者も聞き入ります。このプレゼンテーションによって最終審査を行い、生物多様性アクション大賞2016の大賞が決定しました。
株式会社森と暮らすどんぐり倶楽部
木の実のシロップ作りと地域の活性化
「スギやヒノキに代表される林業ではなく、森林の多面的機能を活かした「私たちの林業」をできないかと考え、52歳で会社を脱サラして挑戦を始めました。
事業内容は、自然体験場の運営、植生調査、紅ドウダンツツジ栽培、山菜栽培やきのこの栽培、キャンプバーベキュー場の運営、地域の仲間と製材所の運営、自然エネルギー推進プログラムの運営、機関誌『森の国から』の発行、などがあります。
木の実のシロップ作りでは地域に自生する無農薬の木の実を使ってシロップ作りをしています。美浜町にたくさん自生しているガマズミに目を付け、シロップにしてみました。とてもおいしく、果汁も想像以上の量です。ガマズミを中心に種子から栽培を始め、現在800本を超える苗木を育成中です。初期に植えた苗木は実を付け始めました。この成果を得て、ナツハゼ、カキなどの他に、カリン、ユズ、夏ミカン、ナツメもシロップにし、7本セットで販売開始しています。シロップの生産販売は私たちが経営する「森の中の喫茶店」で行っています。
また、行政と連携してふるさと納税お返し品としても出荷をしています。地域で協力してくれる生産者や協力者が40名を越えました。活動を続けていくことで、多くの方に関わって頂き、関係性を築けていることは大きな力になっています。ご協力頂いた方には里山資本主義でお返しするという善循環が生まれています。将来は林業部門で小さな成功モデルを作り、若くて優秀な人たちを一次産業に誘いたいと思っています」
特定非営利活動法人田舎のヒロインズ
リトルファーマーズ養成塾
「僕は今小学2年生で、夢は農家になることです。普段から、田んぼの畦を固めたり、ロールの数を飛び跳ねて数えたり、牛に餌をやっています。うちの田んぼは農薬を使っていないので日本に少なくなっている生きものや草花があります。それを守っていきたいと思っています。今年の夏、海に行きたいと言ったら、お母さんが熊本地震もあったし家は夏が忙しいからキャンプに申し込んであげようか、と言いました。その時、僕はこう応えました。「どうせ大人が決めたことをやるんでしょ」と。そしたらお母さんが笑って言いました。「じゃあ、阿蘇に子どもたちを集めて自分たちが決めたことをやるなら、どう?」と。そこで、僕たち兄弟3人がやるからには農業のことをまじめに話し合う子どもたちを呼ぼうということになりました。お母さんが田舎のヒロインズと相談して子どもが好きに過ごしていい代わりに目標をひとつ持つようにと、言われました。僕達の目標は最後に子どもたちだけでお店屋さんをすることです。
千葉、熊本、佐渡島、長崎から15人の子どもたちが来ました。僕たちは自分たちで最後の日に開催するファーマーズマーケットに向けて何をするか、どこで売るか、何円で売るか、などを生活の中で考えてきました。食べ物や飲み物は大人が準備するから、代わりに1日1時間くらい座って考える時間を持つというのが大人からのひとつだけのリクエストでした。この時間になると1日ごとに大人が決めたテーマについてみんなで輪になって考えました。たとえば、「自由」「お金」「人を喜ばせる」などです。それは考える力を付けるための練習でした。これからの目標は自分で考えて自分で行動できる子どもたちが増えるといいなと思っています」
糸島こよみ舎
糸島こよみ
「昔の人々は自然そのものから季節を感じ、自然に沿って暮らしていました。一方で現代に生きる私たちは自然との関係を忘れてしまったかのようです。しかし、今の私たちも多様な生きものによる恵みをいただき生きています。ただ、そのつながりを忘れているだけなのです。
「糸島こよみ」はそのつながりを取り戻すツールのひとつです。自然や文化など季節の暦を織り込みながら地域を見つめ直す。そして自分を、世界を見つめ直すきっかけを伝えてきました。
日めくりに並べていると多様な生きもののつながりが見えてくることがわかります。3月中旬、ツバメが東南アジアから渡ってくる、と日めくりに出てくる前後には、昔は人が葦刈りをし、鳥や小さな生きものたちの住処を用意していたことや、カタツムリが冬眠から目覚めるや、蝶が舞い始める、と記載した日があります。ツバメにとって好条件が整いツバメは来るべくして来ていることがわかります。
そして、「糸島こよみ」では自ら感じることを大事にしています。観察し、記録しようとすることは、そこに想いや愛情を向けること。そして日々めくることが、今を生きる自分に問いかけるメッセージになっています。多様な命の価値を知り共に生きる為には私たちの文化もまた多様であるべきです。
一人一人の中にそれぞれの暦が育つことが大切です。様々な地域で様々な人が自らの地域で自分の暦をつくってほしい。文化や生物の多様性を深めてほしい。そして、それを分かち合いたいと思っています。自分の暦を作る手がかりになればとfacebookページでは、「糸島こよみ」の七十二候を伝えています。私たちの取り組みを知った2地域の方々が今年から暦の制作を開始されました。自分の暦をつくる輪が全国各地、そしてさらには世界へと広がってほしいと思っています」
富士山アウトドアミュージアム
野生動物交通事故調査活動
「私たちは富士山そのものが丸ごと博物館、そしてそこに生息している野生動物も貴重な後世に残していくべき博物資料であるというコンセプトのもとに、調査活動を行っています。日本の自然は世界でも35カ所しかない生物多様性ホットスポットのひとつとして世界的に評価されている素晴らしいところです。そのランドマークとも言うべき富士山ですが、数多くの野生動物たちが交通事故の被害に遭っています。2年半の調査活動の中で365件の動物たちの悲しい場面に遭遇してきました。
私たちがやりたいことは野生動物と一緒に暮らしていける、もっと安心安全な社会を作ることです。この調査活動は地域に住む80名を越える協力者や自治体からの野生動物の交通事故があったという報告を受けて、すぐに現場に向かい、調査を行うスタイルで続けています。
今後は自動車メーカーとの連携も進めていきたいです。実は富士山はレンタカー利用率が非常に高いエリアです。観光客への啓蒙としてレンタカー会社の窓口にそしてレンタルする全車両の中にチラシを配布しています。
また、首都大学東京の渡辺研究室とコラボレーションをスタートしています。富士山で起こっている野生動物の交通事故をアーカイブしてオープンソースとして公開しようという取り組みです。従来は道路標識や電光掲示板での注意喚起をしていましたが、今後は、カーナビゲーションと連携することで季節的な情報を提供したり、衝突軽減ブレーキや自動回避性能などを活用していくことも可能になるかもしれません。そして情報や技術を利用する私たち自身の意識啓発にも取り組んで、少しでもロードキルを減らしていきたいと思います」
三菱ケミカルホールデイングスグループ
クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン株式会社
輸入合板代替製品で生物多様性に貢献する
「日本の建築現場で使い捨てで使用されるコンクリート型枠は東南アジア地域からの輸入木材合板に大きく依存しています。このことが、生物多様性の豊富な熱帯雨林を急速に減少させ、気候変動と生物多様性を損なう大きな原因になっています。特にマレーシアのサラワク州産の木材合板は建築用途のコンクリート型枠として日本に輸入されています。サラワク州から輸出される合板の約60%は日本向けです。
サラワク州では違法な伐採企業が熱帯雨林伐採を続けた結果、生物多様性が大きく損なわれ、熱帯雨林を追われた先住民の人権侵害も深刻な社会問題になっています。
そこで、弊社では繰り返し使用可能なコンクリート型枠という輸入合板代替製品を開発し、普及に努めています。素材は長くつながったガラス繊維をマット状にした強化材です。耐久性が非常に高く、一般的な繊維強化プラスチックに比べて壊れにくいという特徴があります。他にも釘が打てる、50回以上繰り返し使用できる、半透明でランプを付けなくても明かりが採れる、伸縮がなくて形状が安定している、一般のプラスチックのように原料のリサイクルも可能、などのメリットがあります。
2013 年以降、合板輸入量は緩やかに減少しており、弊社の輸入合板代替製品の出荷数量は伸びています。この製品の使用により、特に東南アジア地域からの木材の輸入を減らせると期待され、結果として熱帯林の生物多様性の保全に貢献すると考えられます。今後もグローバルな視点で環境や社会課題に向き合い事業活動を通じて生物多様性に貢献します」
大賞発表を固唾を呑んで見守る中、思いもよらない展開に会場内は驚きと共に大きな拍手に包まれました!
新設されたばかりの『未来賞』を受賞したのは小学2年生8歳の少年、大津讃太郎くんが発表した活動でした。
それでは、いよいよ大賞の発表に移ります。
生物多様性アクション大賞2016、栄えある大賞に輝いたのは、
おめでとうございます!
渡辺審査委員長からこのようなコメントをいただきました。
「糸島の自然や文化を紡ぎ直していくプロセス、地域の資源を見つめ直す視点、色々な想いが1日1日の日めくりカレンダーに込められた、とても素晴らしい取り組みです。できあがったカレンダーだけじゃなくて、その紡ぎ直していくプロセスはすごいものだな、と思いました。このような取り組みが地域に広がることによって、社会が少しずつ変わっていく。既に他の地域にも広がりを見せているという点も高く評価しました。生物多様性を浸透させていくという意味で、本当に力を持った活動であると、審査委員全員が感じましたので大賞に決めさせていただきました」
受賞者の村上研二さんからもコメントをいただきました。
「糸島市は人口10万人の都市で、今は7人だけの小さな活動です。私たちの活動は地域のことをもっと知りたいということで始めましたが、私たちの活動を知った方から、他の地域でもやりたいと言ってくださる機会が増えるにつれ、こういう活動がもっと広がったらいいなと漠然と思うようになりました。今回このような賞をいただいたことで、今後の活動に向けた大きなきっかけをいただいたと思っています」
結びに、本賞の実施にお力添えいただいた企業や団体の皆様から応援メッセージをいただきました。
「受賞された皆様おめでとうございます。このような素晴らしい賞を持続されている関係各位に御礼を申し上げます。私はトンネルの技術者でした。意外かもしれませんが地下も生物多様性を感じられる場所のひとつです。今、掘削している地層が形成された時代とその生態系を想像し、長い時間にわたる生命の積み重ねの偉大さに気づけるからです。本日受賞された『糸島こよみ』の活動も「いのちのリズム」への気づきを、また『野生動物交通事故調査活動』の活動も「野生動物のロードキル問題」を見事に可視化し、気づきを生み出しています。ゴールも多様である、生物多様性保全の取り組みを進める上で、まずは気づきを促すことの大切さを学ばせていただきました」
「各賞を受賞されました皆様おめでとうございます。私どもの環境への取り組みには3つの柱があります。1つ目は環境貢献製品の市場を拡大し、創出をすること。2つ目は環境負荷の低減。3つ目は自然環境の保全です。自然環境の保全の取組みの一つとして『セキスイ環境ウィーク』という活動を2013年から始めています。社員ひとりひとりが環境活動推進力の高い人材になっていこう、という目標に向かって、事業所ごとに期間を定め環境活動に取り組んでいます。今後も社員全員が参加することを目指して活動していきたいと思っています。今回『糸島こよみ』のお話を伺い、大変感銘をうけました。個人的には蝶が好きで、そのことを通じて季節を感じることが多くあります。今年は自宅周辺や出張先などで62種類の蝶を見つけることができました。自然を通じて季節を感じる心をこれからも忘れずにいたいと思います」
「私どもは大船渡市立末崎中学校の『総合的な学習「産土タイム」』にグリーンウェイブ賞を贈らせていただきました。今回の発表にもありましたように単に森林や環境を守るというだけでなく、中学校3年間の学習がひとつのサイクルとして完結しており、社会全体の流れの中で位置づけられているところを評価しています。2016年12月にメキシコで行われるCOP13は第一次産業における生物多様性の主流化が議題です。農林水産業に関わる方の取り組みだけでなく、様々な連携が生まれることが大きなポイントです。今回の大船渡市立末崎中学校の取り組みはその点も見事に具現化されています。このような活動が全国に広がっていくことを心から願う次第です」
「本日受賞された皆様本当におめでとうございます。このように素晴らしい賞に財団として共催させていただいていることにも感謝申し上げる次第です。私どもセブン-イレブン記念財団はセブン-イレブンの店頭にあります小さな募金箱に集まったお金が集まって活動させていただいております。様々な自然保護活動、震災復興活動に支援させていただいておりますが、どれひとつとして決定的な打開策というのはありません。ひとつひとつの草の根の活動、小さな活動こそが大事だと我々も日頃から痛感しており、皆様と一緒になってやっていくことが本当に大切だと感じています。今後とも、この賞がいつまでも続いていくことを期待しています」
最後にUNDB-J事務局 環境省 生物多様性施策推進室 鈴木宏一郎から閉会の挨拶です。
「本日は受賞された皆様から大変素敵なプレゼンテーションをしていただきましてありがとうございました。本年はCOP13が開催されます。受賞された皆様の活動は日本の素晴らしい取り組みとして、ぜひCOP13でPRしてきたいと思っています。特に今回の大賞に選ばれた『糸島こよみ』は日本の伝統文化と生物多様性のつながりをPRできる素晴らしい事例であると考えています。この生物多様性アクション大賞はCOPなどを通じて世界とつながっています。来年以降も素晴らしい活動が全国からたくさん集まり、本日のように皆様と共有して、それが全国へ広がっていくことを期待しています」
授賞式の翌月、12月10日(土)にエコプロ2016会場のイベントステージで、生物多様性アクション大賞アンバサダーのさかなクンと共演。大賞を受賞した糸島こよみ舎の藤井芳広さんには活動内容を発表していただきました。会場は大入り満員で、さかなクンによるお魚クイズを交えたトークは、SDGsや二十四節気に掛けたダジャレも飛ぶなど大盛り上がり。来場者の皆さんには生物多様性を楽しく、分かりやすく理解してらえるステージになりました。
日本全国から素敵な活動が寄せられた生物多様性アクション大賞2016。2050年には自然と共生した社会をつくろう、という生物多様性条約愛知目標の実現へ向けた動きが大きなうねりとなって、日本中で同時多発的に成果を挙げつつあることを実感しました。特に今回は、授賞式当日の最終審査を経て大賞の他に「未来賞」が授与されるなど、青少年が主体となった活動に光が当ったことはまさに、未来への希望であり、特筆すべき事柄だったと感じます。
あらゆる生きものは分ち難く結びついていて、自然という大きな循環の中で生命の環を織り成し生かされています。生物多様性に関する課題は多岐にわたり、それらの課題を一度に解決する方法はありません。しかし、自然と調和する暮らしの実現にむけて、今この瞬間の活動を積み重ねていくことこそが大きな変化へとつながっていくのだと、あらためて実感しました。
日程:2016年11月19日(土)
時間:14:00–17:00 13:30受付開始
場所:スクエア荏原・大会議室
主催:国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)
共催:一般社団法人セブンーイレブン記念財団
生物多様性アクション大賞は、生物多様性の主流化を目指して、「国連生物多様性の10年日本委員会」が推進する「MY行動宣言5つのアクション」に基づき、全国各地で行われている個人・団体の活動を表彰するものです。「たべよう部門」、「ふれよう部門」、「つたえよう部門」、「まもろう部門」、「えらぼう部門」の5部門で優秀賞を選定します。さらに授賞式当日、優秀賞受賞者によるプレゼンテーションによって、「大賞」が選定されます。
授賞式会場となったスクエア荏原には、北は東北から南は九州まで日本各地から受賞者の方々が集まり、審査委員並びに協賛企業の皆様から表彰状と目録が贈られました。
たべよう部門優秀賞
株式会社森と暮らすどんぐり倶楽部
ふれよう部門優秀賞
特定非営利活動法人田舎のヒロインズ
つたえよう部門優秀賞
糸島こよみ舎
まもろう部門優秀賞
富士山アウトドアミュージアム
えらぼう部門優秀賞
三菱ケミカルホールデイングスグループ
クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン株式会社
復興支援賞
あじ島冒険楽校
グリーンウェイブ賞
大船渡市立末崎中学校
セブン-イレブン記念財団賞
群馬県立尾瀬高等学校自然環境科
審査委員賞
(上列左から)
サラヤ株式会社/せせらぎの郷/特定非営利活動法人田んぼ
(下列左から)
特定非営利活動法人里山倶楽部/環境ボランティアサークル亀の子隊/カエルPROJECT/特定非営利活動法人エコパル化女沼/特定非営利活動法人都留環境フォーラム
審査委員特別賞
特定非営利活動法人小網代野外活動調整会議
審査委員特別賞、審査委員賞、特別賞の受賞者から、3枚の写真を使った「3ピーストーク」という手法で活動を紹介していただきました。
特定非営利活動法人小網代野外活動調整会議
小網代の森の生物多様性の回復
「私たちが保全活動を進めている小網代の森は三浦半島の南端に位置する長さ1.2kmの小河川、浦の川の流域です。小網代の森は関東地方で唯一源流から海まで自然状態である「流域生態系」で2000種を越える生きものが生息しています。2005年、国土交通省によって近郊緑地保全区域として保全され、現在は神奈川県の管理のもと、私たちが日常的な環境管理・生物多様性回復作業を担当しています。
2009年の夏以降、本格的な湿原回復作業が始まり、笹薮の全面的な伐開と水路の誘導による湿地化を進めました。さらに自然回復と訪問者の安全確保のため全長1300m程の散策路が整備され、2014年夏、一般訪問者へ公開されています。開発計画から全面保全に至るまでの経緯は当会代表理事、慶應義塾大学名誉教授、岸由二が執筆した『「奇跡の自然」の守りかた』をぜひご覧ください。2016年現在、小網代の森の谷底はほぼ全域で湿原化が進んでおり、絶滅危惧種のサラサヤンマやゲンジボタル、ヘイケボタルが乱舞する様子も見られるようになりました。今後も、小網代の森の生物多様性回復に向けて行政、企業、団体などと連携して活動を進めていきます」
特定非営利活動法人エコパル化女沼
ぼくらは里地里山探検隊
「宮城県大崎市にある化女沼は周囲はクリやどんぐりのなるコナラなどの林に囲まれた場所にあり、沼には水生植物も豊富で生物多様性に富んだ地域です。古くから灌漑用の溜め池として維持され、2万羽以上の雁鴨類の重要な越冬地として、2008年10月ラムサール条約登録湿地に指定されました。
私たちは化女沼やその周囲を調査保全すると共に、自然に親しみ大切さを知る環境教育を行っています。調査保全活動として、毎年5月から10月まで外来魚の駆除活動、特定外来植物の駆除作業を行います。今回は子どもたちの五感をくすぐる『里地里山探検隊』という取り組みについて紹介します。山菜を食べよう、外来魚撲滅作戦、ホタルの観察会、昆虫採集と標本作り、ヒシの実やハスの実の採集、山菜や野草採り、キノコや木の実の採集、渡り鳥のねぐら入りと飛び立ちの観察などを行っています。
2016年度は、これまでの調査をもとに化女沼環境教育ゾーンの設置事業を大崎市から依頼され、ビオトープを設置したり、化女沼在来の植物を移植して植生回復に努めたり、3年計画で取り組んでいます」
カエルPROJECT
火の河原の里山の魅力発信
「火の河原は世界遺産になった「尚古(しょうこ)集成館」に鉄を運ぶためのたたら場でした。鉄を精製する時の様子がまるで火の川のようであったことからこのような地名が付けられたそうです。今は周りが山々に囲まれた休耕田で、このような環境で私たちは生きもの調査や観察会を行っています。ここにはシマゲンゴロウ、ミズカマキリ、ムカシトンボなど、珍しい水生昆虫が集まっていて鹿児島市にありながら大変貴重な環境が残っている里山です。
私たちは生きものの観察だけでなく、暮らしの中で身近に自然を感じたり、楽しむことにも力を入れています。2016年からは「カエル子」というゆるキャラを作り、YouTubeに「カエル子のチャンネル」を立ち上げました。地元の伝統文化や自然環境を紹介する内容で、活動のアーカイブ作りにも力を入れています。色々な方に生物多様性について知っていただく機会となるように、映像、写真、音楽も取り入れて活動していきたいと思っています」
環境ボランティアサークル亀の子隊
海を学び、海を食べよう!
「愛知県渥美半島西の浜で、キレイな海を守る心を広げるためのプロジェクトとして、クリーンアップ活動と体験的環境学習「海の環境を学ぶ会」を行っています。私たちはずっと遠い昔から多くの恵みをこの豊かな海からもらってきました。海の素晴らしさや大切さを知り、地域の文化や歴史を学ぶと共に多くの恵みをもたらしてくれる海への感謝の気持ちを育てたいというねらいで活動しています。
タッチングプールでは漁師さんに活魚を持って来てもらいます。子どもたちはピンピン跳ねる魚を掴んで楽しみ、刺身や焼き魚にして味わいます。新鮮な魚の美味しさに子どもたちの食も進みます。そして、目の前の海に多くの種類の魚がいることに感心し、きれいな海は豊かな海だと知ることができます。
海水からの塩作りでは、古墳時代に正塩土器を利用して盛んに行われていた塩づくりの歴史を学びます。鍋に少しずつ海水を入れ煮立て、海水を継ぎ足すことを繰り返しながら、最後は、余熱で乾燥させて完成です。子どもたちはできあがったばかりの塩を舐めて辛さを体感します」
特定非営利活動法人里山倶楽部
コーヒー1杯でできる里山保全
「私たちは里山保全に取り組んでいます。草刈りや間伐など林業ばかりではなく、里山の中には畑も田んぼもあり農業もやっています。また、地元の小学生を対象にした環境教育にも取り組んでいます。
竹炭珈琲は自分たちで作った炭で煎った珈琲です。珈琲自体は15年ほど栽培していますが、1年前から環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業補助金を利用してカーボンオフセット寄付つき商品にリニューアルし、レインフォレストアライアンス認証珈琲をベースに採用しました。レインフォレストアライアンス認証とは、伝統的な栽培方法を用いて森林とそこに暮らす野生生物を守る農園に与えられる認証です。この珈琲を使用することで熱帯雨林を守ることが出来るので、私たちは日本の里山だけでなく、海の向こうにあるブラジルの熱帯雨林も守っていきたいと思っています。
珈琲の売り上げの一部は、大阪府下の里山保全団体約20団体で構成されるネットワーク「チャリティネット森が好き」という団体に寄付をしています。この寄付により自分たちの周りの里山だけでなく、大阪府下全域の里山が元気になっています」
サラヤ株式会社
ヤシノミ洗剤の売上1%で支援するボルネオ環境保全
「ヤシノミ洗剤は昭和46年にできた日本のエコ洗剤です。手肌と地球にやさしいヤシノミ洗剤というキャッチコピーで皆様に親しまれてきました。ところが、21世紀に入ってグローバルな問題に直面しました。2004年夏に、ヤシノミ洗剤の主原料になるアブラヤシがボルネオの熱帯雨林を破壊し、野生生物が絶滅の危機に瀕しているという予想外の事実を突きつけられました。
社長の先導によってボルネオの環境保全活動を始めました。私たちが取り組んだ2つの活動をご紹介します。ひとつはヤシノミ洗剤の売上げの1%をボルネオの環境保全に寄付するという取り組みです。ヤシノミ洗剤の取り組みはこの商品がある限り、ボルネオの環境保全を支援し続けるという終わりのないロングエンゲージメントです。もうひとつはヨーロッパが主導するRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に入会しました。農園から出たカーボンをメーカーが買ってオフセットするというやり方できちんと指針に則ってパームオイルを作っている農園を支援しています」
せせらぎの郷
須原 魚のゆりかご水田プロジェクト
「私たちは、琵琶湖の魚が田んぼで産卵できるように魚道を研究し、生きものが豊かに賑わうための環境保全の取り組みを行っています。
昭和40年頃は、田んぼと琵琶湖をつなぐ水路で魚を採りながら暮らしていました。しかし、昭和48年、琵琶湖総合開発と言われる整備事業が始まり、琵琶湖と田んぼは分断され、農薬や化学肥料を使う生産性と効率化を重視した農法に切り替えられました。多くの生きものが姿を消し、食の環境が大きな危機に直面しました。
2007年より人と生きものが共存できる農業を目指して、農薬や化学肥料を減らし、環境に配慮した「魚のゆりかご水田米」を生産しています。春になると魚は農業用水路を辿って、産卵場所を求めて遡上します。産卵された卵から孵った魚の赤ちゃんは田んぼに入っていきます。これは昔からある水路などの農業資源を活かして今も行われています。このような取り組みを伝えるべく、田植え、稲刈り、観察会などを開催して皆様と一緒に生物多様性の大切さについて認識を深めています」
特定非営利活動法人田んぼ
ふゆみずたんぼの生物多様性を体感する田んぼプロジェクト
「私たちは地域の未来は子どもたちがつくる、と考えています。子どもたちは田んぼで泥にまみれて原体験をしますが、私たちの田んぼは無施肥無農薬なので自由奔放に活動ができます。
『田んぼの生きもの全集リスト』によると、田んぼには全国で5868種の生きものがいるそうです。食用は5000種ほど、そのうち2489種は栽培品種です。皆様が普段口にしている商業ベースのものは150種にすぎません。一方、これを歴史的に見ると、江戸時代に飢饉を救う為に、仙台藩の建部清庵という人が『民間備荒録』や『備荒草木図』という世界で初めての、食べられる植物図鑑を作りました。もしこの知識を身につけたら、人を助けることができ、緊急の場合は自分の命を全うすることもできます。
近年、文化の多様性が高いところは生物多様性もまた高いことがはっきりとわかってきました。逆も然りです。私たちは生物文化多様性という考え方を子どもたちに伝えていきたいと思っています」
特定非営利活動法人都留環境フォーラム
在来馬の伝統耕作復活プロジェクト
「私たちは馬耕という伝統耕作方法を実践しています。今ではトラクターで耕すのが主流ですが、化石燃料を使わずお米を作る方法を残していきたいと思い、馬耕に取り組み始めました。文化を継承するという意味でも馬耕は今やらないと、もうなくなってしまう、消えていってしまう技術だと思います。この活動は3年前に地球環境基金の助成を受けて馬や道具を集めるところから始めました。
活動を広く知ってもらうために「はたらく馬フェス」という馬耕大会を開催し、楽しみながら競技スタイルで馬耕を体験してもらっています。また、「馬耕キャラバン」と言って日本全国を馬耕する活動も続けていて、今年は南は鹿児島から北は岩手まで15カ所回りました。里山で馬と一緒に暮らしている姿を日本に復活させていきたいという想いでこの活動を続けています。馬耕では馬が畑の草を食べ、力を発揮して、堆肥を畑に戻します。このように循環型の農業を続けることで里山や生態系の保全活動を今後も続けていきたいと思っています」
あじ島冒険楽校
昔の子どもたちから未来の大人たちへ
「あじ島冒険楽校は限界集落の小さな活動です。かつて網地島には3000人もの人が住んでいましたが、遠洋漁業と捕鯨が衰退し、今では人口400人、高齢化率9割です。
今から15年ほど前に網地島活性化のための話し合いがあり、観光ではなくもっと心の温かさを感じられることや、生物多様性を子どもたちに教える活動をしたいと思い、あじ島冒険楽校を始めました。子どもたちは自分で釣った魚を骨まで舐めるように食べます。島に生えている竹を使った竹鉄砲づくりも行っています。子どもたちは自分の感覚を使って手を動かし、考えることを覚えます。
東日本大震災で網地島は大きな津波に襲われ、浜には瓦礫が1mほど積もりました。活動を続けることは困難だと思いましたが、3か月後に子どもたちから100通を越える手紙が届き、それを見た島の人たちは一生懸命瓦礫を片付け、次の夏にはなんとか裸足で海に入れるほどのきれいな砂浜を取り戻して、あじ島冒険楽校を再開しました」
大船渡市立末崎中学校
総合的な学習「産土タイム」
「2002年から総合的な学習として「産土タイム」に取り組んでいます。 末崎町は「三陸養殖わかめ」発祥の地として知られています。この活動は、地域の先人が培ってきた地域の特色に価値を見いだし、自らの生き方を模索していくことを目的としています。 1年生はわかめ養殖を柱に、海上での種巻き、早採り、本刈りの作業の後、収穫したわかめのボイル及び塩蔵処理を行います。2年生は、漁家を訪問し指導を受けた後、校内でわかめの芯抜きをしてパック詰めをし「末崎中ふれあいわかめ」として製品化し、生徒自らが販売体験を行います。そして3年生は、「海を守る」をテーマに、恵みをもたらす海を守る活動として森林整備の学習を行います。国有林のフィールドを活用して植樹、下草刈り、間伐の森林整備活動を行っています。
このようにして、森林の重要性とふるさとの自然環境が森林から海まで一体であることを実感します。
2011年3月、東日本大震災の津波により、わかめ養殖場や海上学習フィールドは壊滅的な被害を受けましたが様々な方のご尽力により、11月には学習を再開し今日まで続けてきました」
群馬県立尾瀬高等学校自然環境科
日光白根山のシラネアオイ群落の保護・復元活動
「シラネアオイは日光白根山に多く自生していることから名付けられた日本固有種の植物です。かつては見事なシラネアオイの群落が見られましたが、昭和60年代から盗掘による減少、そして鹿に食べ尽くされてしまい壊滅状態に陥りました。1993年以降、シラネアオイの苗作りと、自生地に電気柵を設置して群落を保護する取り組みが行われています。 1996年に新設された尾瀬高等学校自然環境科は設立当初から授業の一環としてこの活動に加わり、日光白根山のシラネアオイ群落の保護・復元に成果を上げています。
具体的には3年間で一連の保護復元活動に携わるカリキュラムが編成され、3年生が毎年9月中旬、秋になると自生地においてシラネアオイの果実を採集します。次に1年生が果実から取り出した種子を10月中旬に種まきをします。4~5年かけて育成された苗を2年生が現地まで担ぎ上げて自生地へ移植するという3年間のサイクルで活動しています。地元の人たちが高齢化してしまった中で若い高校生の力が活動にはなくてはならない活動の原動力となっています」
そして、5部門の優秀賞を受賞した団体のプレゼンテーション。どこが大賞になってもおかしくない発表内容に、来場者も聞き入ります。このプレゼンテーションによって最終審査を行い、生物多様性アクション大賞2016の大賞が決定しました。
株式会社森と暮らすどんぐり倶楽部
木の実のシロップ作りと地域の活性化
「スギやヒノキに代表される林業ではなく、森林の多面的機能を活かした「私たちの林業」をできないかと考え、52歳で会社を脱サラして挑戦を始めました。
事業内容は、自然体験場の運営、植生調査、紅ドウダンツツジ栽培、山菜栽培やきのこの栽培、キャンプバーベキュー場の運営、地域の仲間と製材所の運営、自然エネルギー推進プログラムの運営、機関誌『森の国から』の発行、などがあります。
木の実のシロップ作りでは地域に自生する無農薬の木の実を使ってシロップ作りをしています。美浜町にたくさん自生しているガマズミに目を付け、シロップにしてみました。とてもおいしく、果汁も想像以上の量です。ガマズミを中心に種子から栽培を始め、現在800本を超える苗木を育成中です。初期に植えた苗木は実を付け始めました。この成果を得て、ナツハゼ、カキなどの他に、カリン、ユズ、夏ミカン、ナツメもシロップにし、7本セットで販売開始しています。シロップの生産販売は私たちが経営する「森の中の喫茶店」で行っています。
また、行政と連携してふるさと納税お返し品としても出荷をしています。地域で協力してくれる生産者や協力者が40名を越えました。活動を続けていくことで、多くの方に関わって頂き、関係性を築けていることは大きな力になっています。ご協力頂いた方には里山資本主義でお返しするという善循環が生まれています。将来は林業部門で小さな成功モデルを作り、若くて優秀な人たちを一次産業に誘いたいと思っています」
特定非営利活動法人田舎のヒロインズ
リトルファーマーズ養成塾
「僕は今小学2年生で、夢は農家になることです。普段から、田んぼの畦を固めたり、ロールの数を飛び跳ねて数えたり、牛に餌をやっています。うちの田んぼは農薬を使っていないので日本に少なくなっている生きものや草花があります。それを守っていきたいと思っています。今年の夏、海に行きたいと言ったら、お母さんが熊本地震もあったし家は夏が忙しいからキャンプに申し込んであげようか、と言いました。その時、僕はこう応えました。「どうせ大人が決めたことをやるんでしょ」と。そしたらお母さんが笑って言いました。「じゃあ、阿蘇に子どもたちを集めて自分たちが決めたことをやるなら、どう?」と。そこで、僕たち兄弟3人がやるからには農業のことをまじめに話し合う子どもたちを呼ぼうということになりました。お母さんが田舎のヒロインズと相談して子どもが好きに過ごしていい代わりに目標をひとつ持つようにと、言われました。僕達の目標は最後に子どもたちだけでお店屋さんをすることです。
千葉、熊本、佐渡島、長崎から15人の子どもたちが来ました。僕たちは自分たちで最後の日に開催するファーマーズマーケットに向けて何をするか、どこで売るか、何円で売るか、などを生活の中で考えてきました。食べ物や飲み物は大人が準備するから、代わりに1日1時間くらい座って考える時間を持つというのが大人からのひとつだけのリクエストでした。この時間になると1日ごとに大人が決めたテーマについてみんなで輪になって考えました。たとえば、「自由」「お金」「人を喜ばせる」などです。それは考える力を付けるための練習でした。これからの目標は自分で考えて自分で行動できる子どもたちが増えるといいなと思っています」
糸島こよみ舎
糸島こよみ
「昔の人々は自然そのものから季節を感じ、自然に沿って暮らしていました。一方で現代に生きる私たちは自然との関係を忘れてしまったかのようです。しかし、今の私たちも多様な生きものによる恵みをいただき生きています。ただ、そのつながりを忘れているだけなのです。
「糸島こよみ」はそのつながりを取り戻すツールのひとつです。自然や文化など季節の暦を織り込みながら地域を見つめ直す。そして自分を、世界を見つめ直すきっかけを伝えてきました。
日めくりに並べていると多様な生きもののつながりが見えてくることがわかります。3月中旬、ツバメが東南アジアから渡ってくる、と日めくりに出てくる前後には、昔は人が葦刈りをし、鳥や小さな生きものたちの住処を用意していたことや、カタツムリが冬眠から目覚めるや、蝶が舞い始める、と記載した日があります。ツバメにとって好条件が整いツバメは来るべくして来ていることがわかります。
そして、「糸島こよみ」では自ら感じることを大事にしています。観察し、記録しようとすることは、そこに想いや愛情を向けること。そして日々めくることが、今を生きる自分に問いかけるメッセージになっています。多様な命の価値を知り共に生きる為には私たちの文化もまた多様であるべきです。
一人一人の中にそれぞれの暦が育つことが大切です。様々な地域で様々な人が自らの地域で自分の暦をつくってほしい。文化や生物の多様性を深めてほしい。そして、それを分かち合いたいと思っています。自分の暦を作る手がかりになればとfacebookページでは、「糸島こよみ」の七十二候を伝えています。私たちの取り組みを知った2地域の方々が今年から暦の制作を開始されました。自分の暦をつくる輪が全国各地、そしてさらには世界へと広がってほしいと思っています」
富士山アウトドアミュージアム
野生動物交通事故調査活動
「私たちは富士山そのものが丸ごと博物館、そしてそこに生息している野生動物も貴重な後世に残していくべき博物資料であるというコンセプトのもとに、調査活動を行っています。日本の自然は世界でも35カ所しかない生物多様性ホットスポットのひとつとして世界的に評価されている素晴らしいところです。そのランドマークとも言うべき富士山ですが、数多くの野生動物たちが交通事故の被害に遭っています。2年半の調査活動の中で365件の動物たちの悲しい場面に遭遇してきました。
私たちがやりたいことは野生動物と一緒に暮らしていける、もっと安心安全な社会を作ることです。この調査活動は地域に住む80名を越える協力者や自治体からの野生動物の交通事故があったという報告を受けて、すぐに現場に向かい、調査を行うスタイルで続けています。
今後は自動車メーカーとの連携も進めていきたいです。実は富士山はレンタカー利用率が非常に高いエリアです。観光客への啓蒙としてレンタカー会社の窓口にそしてレンタルする全車両の中にチラシを配布しています。
また、首都大学東京の渡辺研究室とコラボレーションをスタートしています。富士山で起こっている野生動物の交通事故をアーカイブしてオープンソースとして公開しようという取り組みです。従来は道路標識や電光掲示板での注意喚起をしていましたが、今後は、カーナビゲーションと連携することで季節的な情報を提供したり、衝突軽減ブレーキや自動回避性能などを活用していくことも可能になるかもしれません。そして情報や技術を利用する私たち自身の意識啓発にも取り組んで、少しでもロードキルを減らしていきたいと思います」
三菱ケミカルホールデイングスグループ
クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン株式会社
輸入合板代替製品で生物多様性に貢献する
「日本の建築現場で使い捨てで使用されるコンクリート型枠は東南アジア地域からの輸入木材合板に大きく依存しています。このことが、生物多様性の豊富な熱帯雨林を急速に減少させ、気候変動と生物多様性を損なう大きな原因になっています。特にマレーシアのサラワク州産の木材合板は建築用途のコンクリート型枠として日本に輸入されています。サラワク州から輸出される合板の約60%は日本向けです。
サラワク州では違法な伐採企業が熱帯雨林伐採を続けた結果、生物多様性が大きく損なわれ、熱帯雨林を追われた先住民の人権侵害も深刻な社会問題になっています。
そこで、弊社では繰り返し使用可能なコンクリート型枠という輸入合板代替製品を開発し、普及に努めています。素材は長くつながったガラス繊維をマット状にした強化材です。耐久性が非常に高く、一般的な繊維強化プラスチックに比べて壊れにくいという特徴があります。他にも釘が打てる、50回以上繰り返し使用できる、半透明でランプを付けなくても明かりが採れる、伸縮がなくて形状が安定している、一般のプラスチックのように原料のリサイクルも可能、などのメリットがあります。
2013 年以降、合板輸入量は緩やかに減少しており、弊社の輸入合板代替製品の出荷数量は伸びています。この製品の使用により、特に東南アジア地域からの木材の輸入を減らせると期待され、結果として熱帯林の生物多様性の保全に貢献すると考えられます。今後もグローバルな視点で環境や社会課題に向き合い事業活動を通じて生物多様性に貢献します」
大賞発表を固唾を呑んで見守る中、思いもよらない展開に会場内は驚きと共に大きな拍手に包まれました!
新設されたばかりの『未来賞』を受賞したのは小学2年生8歳の少年、大津讃太郎くんが発表した活動でした。
それでは、いよいよ大賞の発表に移ります。
生物多様性アクション大賞2016、栄えある大賞に輝いたのは、
おめでとうございます!
渡辺審査委員長からこのようなコメントをいただきました。
「糸島の自然や文化を紡ぎ直していくプロセス、地域の資源を見つめ直す視点、色々な想いが1日1日の日めくりカレンダーに込められた、とても素晴らしい取り組みです。できあがったカレンダーだけじゃなくて、その紡ぎ直していくプロセスはすごいものだな、と思いました。このような取り組みが地域に広がることによって、社会が少しずつ変わっていく。既に他の地域にも広がりを見せているという点も高く評価しました。生物多様性を浸透させていくという意味で、本当に力を持った活動であると、審査委員全員が感じましたので大賞に決めさせていただきました」
受賞者の村上研二さんからもコメントをいただきました。
「糸島市は人口10万人の都市で、今は7人だけの小さな活動です。私たちの活動は地域のことをもっと知りたいということで始めましたが、私たちの活動を知った方から、他の地域でもやりたいと言ってくださる機会が増えるにつれ、こういう活動がもっと広がったらいいなと漠然と思うようになりました。今回このような賞をいただいたことで、今後の活動に向けた大きなきっかけをいただいたと思っています」
結びに、本賞の実施にお力添えいただいた企業や団体の皆様から応援メッセージをいただきました。
「受賞された皆様おめでとうございます。このような素晴らしい賞を持続されている関係各位に御礼を申し上げます。私はトンネルの技術者でした。意外かもしれませんが地下も生物多様性を感じられる場所のひとつです。今、掘削している地層が形成された時代とその生態系を想像し、長い時間にわたる生命の積み重ねの偉大さに気づけるからです。本日受賞された『糸島こよみ』の活動も「いのちのリズム」への気づきを、また『野生動物交通事故調査活動』の活動も「野生動物のロードキル問題」を見事に可視化し、気づきを生み出しています。ゴールも多様である、生物多様性保全の取り組みを進める上で、まずは気づきを促すことの大切さを学ばせていただきました」
「各賞を受賞されました皆様おめでとうございます。私どもの環境への取り組みには3つの柱があります。1つ目は環境貢献製品の市場を拡大し、創出をすること。2つ目は環境負荷の低減。3つ目は自然環境の保全です。自然環境の保全の取組みの一つとして『セキスイ環境ウィーク』という活動を2013年から始めています。社員ひとりひとりが環境活動推進力の高い人材になっていこう、という目標に向かって、事業所ごとに期間を定め環境活動に取り組んでいます。今後も社員全員が参加することを目指して活動していきたいと思っています。今回『糸島こよみ』のお話を伺い、大変感銘をうけました。個人的には蝶が好きで、そのことを通じて季節を感じることが多くあります。今年は自宅周辺や出張先などで62種類の蝶を見つけることができました。自然を通じて季節を感じる心をこれからも忘れずにいたいと思います」
「私どもは大船渡市立末崎中学校の『総合的な学習「産土タイム」』にグリーンウェイブ賞を贈らせていただきました。今回の発表にもありましたように単に森林や環境を守るというだけでなく、中学校3年間の学習がひとつのサイクルとして完結しており、社会全体の流れの中で位置づけられているところを評価しています。2016年12月にメキシコで行われるCOP13は第一次産業における生物多様性の主流化が議題です。農林水産業に関わる方の取り組みだけでなく、様々な連携が生まれることが大きなポイントです。今回の大船渡市立末崎中学校の取り組みはその点も見事に具現化されています。このような活動が全国に広がっていくことを心から願う次第です」
「本日受賞された皆様本当におめでとうございます。このように素晴らしい賞に財団として共催させていただいていることにも感謝申し上げる次第です。私どもセブン-イレブン記念財団はセブン-イレブンの店頭にあります小さな募金箱に集まったお金が集まって活動させていただいております。様々な自然保護活動、震災復興活動に支援させていただいておりますが、どれひとつとして決定的な打開策というのはありません。ひとつひとつの草の根の活動、小さな活動こそが大事だと我々も日頃から痛感しており、皆様と一緒になってやっていくことが本当に大切だと感じています。今後とも、この賞がいつまでも続いていくことを期待しています」
最後にUNDB-J事務局 環境省 生物多様性施策推進室 鈴木宏一郎から閉会の挨拶です。
「本日は受賞された皆様から大変素敵なプレゼンテーションをしていただきましてありがとうございました。本年はCOP13が開催されます。受賞された皆様の活動は日本の素晴らしい取り組みとして、ぜひCOP13でPRしてきたいと思っています。特に今回の大賞に選ばれた『糸島こよみ』は日本の伝統文化と生物多様性のつながりをPRできる素晴らしい事例であると考えています。この生物多様性アクション大賞はCOPなどを通じて世界とつながっています。来年以降も素晴らしい活動が全国からたくさん集まり、本日のように皆様と共有して、それが全国へ広がっていくことを期待しています」
授賞式の翌月、12月10日(土)にエコプロ2016会場のイベントステージで、生物多様性アクション大賞アンバサダーのさかなクンと共演。大賞を受賞した糸島こよみ舎の藤井芳広さんには活動内容を発表していただきました。会場は大入り満員で、さかなクンによるお魚クイズを交えたトークは、SDGsや二十四節気に掛けたダジャレも飛ぶなど大盛り上がり。来場者の皆さんには生物多様性を楽しく、分かりやすく理解してらえるステージになりました。
日本全国から素敵な活動が寄せられた生物多様性アクション大賞2016。2050年には自然と共生した社会をつくろう、という生物多様性条約愛知目標の実現へ向けた動きが大きなうねりとなって、日本中で同時多発的に成果を挙げつつあることを実感しました。特に今回は、授賞式当日の最終審査を経て大賞の他に「未来賞」が授与されるなど、青少年が主体となった活動に光が当ったことはまさに、未来への希望であり、特筆すべき事柄だったと感じます。
あらゆる生きものは分ち難く結びついていて、自然という大きな循環の中で生命の環を織り成し生かされています。生物多様性に関する課題は多岐にわたり、それらの課題を一度に解決する方法はありません。しかし、自然と調和する暮らしの実現にむけて、今この瞬間の活動を積み重ねていくことこそが大きな変化へとつながっていくのだと、あらためて実感しました。