受賞者の活動

受賞者の活動

過去に受賞した団体をアクション大賞事務局スタッフが訪ね、その後の活動の話を聞きました!

2016年 えらぼう部門優秀賞 クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン株式会社
2015年大賞 たべよう部門優秀賞 特定非営利活動法人加茂女
2013年大賞 たべよう部門優秀賞 アイキッズ〜エコアイディアキッズびわ湖〜
2013年 GreenTV賞 株式会社アレフ

クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン株式会社
(三重県 2016年度優秀賞 えらぼう部門)

CEPAジャパンの宮本です。2016年にえらぼう部門優秀賞を受賞した三重県の「クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン株式会社(以下QPCJ社)」を訪問し、その取り組みを取材してきました。


お話を伺ったのは、授賞式に出席いただいた取締役事業本部長の堺 大さんと営業部長の茂森 清さん、そして営業部産業資材グループヘッドの舘 正喜さんです。

左から舘さん、茂森さん、堺さん

左から舘さん、茂森さん、堺さん

受賞した取り組みは、自社技術を活用した建築用コンクリートパネル(以下コンパネ)「Xシート型枠」の製造・販売です。特徴は、通常は合板で作られているコンパネを、FRP(繊維強化プラスチック)で製造している点。コンパネに使われる木材が時として熱帯雨林の破壊の原因となることを知ったQPCJ社が、その解決策として始めました。商品の販売が貢献する熱帯雨林の保全は、愛知ターゲット4「持続可能な生産と消費」やSDG12「つくる責任、使う責任」につながる重要な取り組みですね!

建築現場での使用例(QPCJ社提供)

建築現場での使用例(QPCJ社提供)

Xシート型枠には、QPCJ社独自に開発されたガラス繊維入りプラスチックシートの技術が活かされています。材料はガラス繊維とプラスチック(ポリプロピレン)です。まず、糸状のガラス繊維を複雑に絡ませてシート状にします。このガラス繊維シート2枚を3枚のプラスチックフィルムで交互に挟み、熱をかけて一体化させ板状にします。これを型に入れ、再び熱と圧力をかけることで製品ができあがります。

ガラス繊維シート(白いもの)2層とプラスチックシート(黒いもの)3層を積層

ガラス繊維シート(白いもの)2層とプラスチックシート(黒いもの)3層を積層

ガラス繊維を絡ませる工程は羊毛を使ったフェルト細工と同じ原理で、細かい繊維を針で刺して固めていきます。針も同じものを使っているとのことです。自分も子どもが小さい時にフェルト細工を作ったことがあるので、なんだか親しみを感じました。


Xシート型枠には、木材コンパネの代替品として建築現場で大工さんに使っていただくため、幾つかの工夫がされています。1つ目は高い耐久性です。木材であれば使い捨てのところ1枚50回程使えるので、かかる費用も安くなります。2つ目はのこぎりで切れることです。900mm×1800mmの規格外でコンクリートの型枠を作る必要が出てきた時、木と同じように切れることが必須となるのです。Xシート型枠はのこぎりで切れる柔らかさである上に、切りくずがとても少ないんだそうです。3つ目は釘が打てることです。複数のコンパネを合わせて大きな型枠を組む際には、釘で止めることが必要となります。Xシート型枠はガラス繊維が複雑に絡み合ってほどよい粘りがあるため、釘を打っても割れることがありません。4つ目は軽いことです。厚みの薄い場所を作ることで持ち運びやすくしています。そして5つ目は乳白色であることです。実はQPCJ社の製品の多くは自動車部品用に作られているので黒色ですが、Xシート型枠は乳白色で光を一部透過します。コンパネで囲まれていても明るい空間で作業ができ、建築現場での安全性が高くなることに加えて電灯が不要となり省エネになっているのです。森林保全だけでなく地球温暖化の防止にも役立つなんて、一石二鳥ですね!

窓の外からの太陽の光が透けて見えます

窓の外からの太陽の光が透けて見えます

QPCJ社では昨年、生物多様性アクション大賞を受賞した際に、「えらぼう部門優秀賞」のロゴマークを入れたプレスリリースを発表しています。


「営業活動でこれを配布したところ、お客様から好意的に評価されました。商売での引き合いが増えたように感じています」と茂森さんは言います。


生物多様性アクション大賞受賞が好影響を与えているということで嬉しくなりました!今後もますますXシート型枠の利用が拡大し、森林保全が進んで欲しいと思います。

取材:宮本育昌(一般社団法人CEPAジャパン)

特定非営利活動法人加茂女
(京都府 2015年大賞 たべよう部門)

2015年の生物多様性アクション大賞で、大賞を受賞された「NPO法人加茂女」(かもめ)の取り組みについて、活動現場を見せていただくと共に、活動を中心的に進めていらっしゃる曽我さんにお話しを伺ってきました。

加茂女 曽我さん

加茂女 曽我さん

まず曽我さんにご案内頂いたのは、山城地区の活動現場です。活動し始めの時は不法投棄の廃棄物が積み上がり、雨が降るとぬかるむような場所でしたが、廃棄物を片付けて土をならし、活動のベースとなる広場にしました。不法投棄防止の看板も行政に設置してもらい、広場が元の状態に戻らないよう、工夫をしているそうです。

放置された竹林を整備(提供:加茂女)

放置された竹林を整備(提供:加茂女)

広場には、ボランティアが自ら伐採した竹で建てた資材小屋・トイレ、ボランティアが設計して自分たちで施工したレンガ製ピザ窯を設置しています。イノシシが出て困っているので、トイレの前にイノシシの皮を敷き、川にシシオドシを作って効果を見ているところだそうです。どれも立派な造りで「できるだけ自分たちで作る」という姿勢に感心しました。

自ら資材小屋を建築(提供:加茂女)

自ら資材小屋を建築(提供:加茂女)

ピザ窯も施工(提供:加茂女)

ピザ窯も施工(提供:加茂女)

定例活動日は毎月第2日曜日です。10名程度の固定メンバーが中心に、学生や企業勤めの方も参加します。伺った日は臨時の活動だったため、参加者は6名でした。伐採予定の竹の量が非常に多いため、もっとたくさんの人に参加してもらえるよう、大阪や京都内外のNPOセンターや社会福祉協議会などの中間支援組織に相談されています。


活動内容は主に竹の伐採と焼却/炭づくりです。「楽しみながら活動を続ける」ために、ピザ窯で焼き芋や焼きおにぎり、ピザを作り、参加者に振る舞っています。私もご相伴に預かりましたが、良い天気のもとで竹に囲まれて食べたこともあり、一層おいしく感じました!


活動の後に、加茂女の事務所で曽我さんに話を伺いました。実はこの拠点は曽我さんが個人的に購入した住宅を改装したものです。すぐ近くに曽我さんの自宅があり、空き物件が出た時に思い切って加茂女の拠点として購入したと言います。ここには事務室に加えて喫茶室があり、食事も提供されています。つい最近、喫茶室に京都産の竹の集成材で作ったテーブルと椅子が導入されました。統一されたとても良い雰囲気に、ついつい長居してしまいそうです。

竹の集成材利用のテーブルと椅子

竹の集成材利用のテーブルと椅子

伐採した竹を使った食器

伐採した竹を使った食器

喫茶室の壁にはイベントの開催や報告会など、様々な節目に作成してきた報告用ポスターが貼られていました。2016年のポスターでは生物多様性アクション大賞の大賞受賞についてご紹介いただいています。

生物多様性アクション大賞受賞をPR

生物多様性アクション大賞受賞をPR

竹の利用拡大に向けて色々なアイデアをお持ちの曽我さん。今後の活動の拡大に期待しています。

取材:宮本育昌(一般社団法人CEPAジャパン)

アイキッズ〜エコアイディアキッズびわ湖〜
(滋賀県 2013年大賞 たべよう部門)

2013年に大賞を受賞した滋賀県の「エコアイディアキッズびわ湖(愛称:アイキッズ)」を訪問し、その取り組みを取材してきました。
お話を伺ったのは、ボランティアで指導者を務める中村さんと大森さん、事務局長の増渕さんです。中村さん・大森さんは教員、増渕さんはパナソニック アプライアンス社本社に勤務しています。

左から増渕さん、中村さん、大森さん

左から増渕さん、中村さん、大森さん

活動が始まったきっかけは、2007年10月に滋賀県長浜市で開催された「琵琶湖環境ビジネスメッセ」で滋賀県の嘉田(かだ)由紀子滋賀県知事(当時)のお話に刺激を受けた中村パナソニック会長(当時/現相談役)が、草津工場の従業員に琵琶湖の保全活動を強く薦め、それを受けて会社と労働組合から理事・運営委員を選出する形で立ち上がったのが、アイキッズと、その運営母体となる「びわ湖エコアイディア倶楽部」です。企業トップの環境配慮への想いと、現場の社員が立ち上がってつくった組織。会社全体が取り組まれたストーリーを伺って、なかなか真似のできない素晴らしいことだと感じました。

「学校教育とは一味違う工夫による“何でも体験”を基本とした独自のプログラムを子どもたちに提供しています」と熱く語るのは、中村さん。彼の先生としての知見が、アイキッズの活動を単なる“伝統文化の体験”に留めることなく、地域を知る“一年間を通じた学習プログラム”に結実させています。

指導の中心を担う中村さん

指導の中心を担う中村さん

毎回の活動には“めあて”(その回の達成目標)が設定されます。子どもたちは“めあて”に向けて自発的に地元の方々と交流しながら、地域の伝統文化を発掘していきます。これまでに底引き網や刺し網、定置網、しじみ曳きといった琵琶湖で行われているさまざまな漁法を体験し、鮒ずしを代表とするさまざまな種類の伝統食を調理してきました。さらには、そこで使われる調味料の醤油や味噌を造る蔵にも訪れているそうです。世界に類を見ない湖魚食文化を支えてきた人や環境を知ることで、子どもたちのふるさとへの愛着が高まっていると聞き、この先も草津の文化と誇りが受け継がれ続けていくのだろうと、希望を感じました!

事務局では、活動を多くの方に知っていただくため、2008年から県内外の様々な賞への応募を推し進めていると言います。審査員にプレゼンを行うのは子どもたちです。子どもたちが自信をもって発表できるようにサポーターが準備を支援し、会が一丸となって取り組んだ結果、2012年末には著名な賞において「非常に高いレベルの取り組みである」と認められてグランプリに輝きました。その勢いで、2013年に第一回目の生物多様性アクション大賞にも応募し、大賞/たべよう部門優秀賞を受賞しました。授賞式では、子どもたちがいきいきと元気に活動している様子が発表され、参加者から感嘆の声が上がっていたのを思い出します。

その後、10周年を契機に2016年度は一旦休会することとなりました。今後の進め方について再検討した結果、より地元に密着した活動にすべきとの結論に至りました。

今までは、主に従業員の子どもたちを会のメンバーとしてきましたが、2017年度は地元自治会や子ども会などを通じてメンバーを募ることとなります。新たなエコアイディアキッズびわ湖として、さらにパワーアップした取り組みを行う予定だそうです。

2017年度に向けた夢を語る増渕さん

2017年度に向けた夢を語る増渕さん

「この取り組みは一人でできるものではありません。子供たち、先生・サポーター・資金、そして関係者全員の情熱により、さらに燃え上がるような活動にしていきたいと考えています」と熱く語る増渕さん。これからの活動にも期待しています!

取材:宮本育昌(一般社団法人CEPAジャパン)

株式会社アレフ
(北海道 2013年度GreenTV賞)

2013年にGreenTV賞を受賞した北海道の「株式会社アレフ」のえこりん村を訪問し、その取り組みを取材してきました。お話を伺ったのは、えこりん村で活動を指導されている荒木洋美さんと、エコ活動全般を解説してくれた高田あかねさんです。


アレフは、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」や小樽ビール醸造所など、飲食にまつわる施設を多数経営しています。

左から荒木さん、高田さん

左から荒木さん、高田さん
*田んぼの体験スタッフは早乙女(田植えをする女性)の衣装で体験指導をしています

受賞した取り組みは、えこりん村での「生きもの豊かな田んぼ」の取り組み、そして動画「ふゆみずタンゴ」です。冬の田んぼに水を張る農法「ふゆみずたんぼ」をもじったタイトルのこの曲は、びっくりドンキーでお客様に安全なお米を提供していることを知っていただくための分かりやすい取り組みとして、社内から演奏する人・イラストを描く人・生きものを選ぶ人・振り付けをする人を募ったチームで作り、田植えイベントの際にスタッフと参加者で一緒に歌って踊っています。

田植えイベント「ふゆみずたんぼまつり」ではみんなで踊ります((株)アレフ提供)

田植えイベント「ふゆみずたんぼまつり」ではみんなで踊ります((株)アレフ提供)

毎週末、そして夏休み時期の約30日間、田んぼ脇の施設では一日中「ふゆみずタンゴ」を流し、多くて1日300人、年間で数千人が聞いているとのこと。イベントに参加した子どもたちが知らず知らずのうちに口ずさんでいることもあるとか。私も生物多様性条約の会議で実際に皆さんが踊っているところを拝見し、中毒性があると思いました(笑)!

私の伺った日は、年6回行っている「えこりん村学校『えこりん村の子どもたち』(米コース)」の第3回の活動日で、外来種であるトノサマガエルの駆除がテーマでした。トノサマガエルは北海道にもともと棲んでいるカエルよりも大きくなるために数が増えており、えこりん村でも田んぼや池の周辺で沢山見られます。イベントは、外来種についての啓発と、子どもたちの「カエルを捕りたい!」という希望を両方叶えるために企画されています。

カエルが捕りたい子どもたちは熱心に耳を傾けます

カエルが捕りたい子どもたちは熱心に耳を傾けます

外来種のカエルをしっかり見分けます

外来種のカエルをしっかり見分けます

プログラムでは、説明だけでなく、外来種が増えていく様子を2種類のゲームで体感します。
最初は椅子取りゲームで、在来の植物(ニホンタンポポ)が外来の植物(セイヨウタンポポ)に置き換わってしまう様子を体験しました。セイヨウタンポポ役が座った席は全て、その後に座ったニホンタンポポ役がセイヨウタンポポ役に変わるルールです。最初は1株しかいなかったセイヨウタンポポが、回を重ねるごとに加速度的に増えていき、7回目ではほとんどがセイヨウタンポポになってしまいました。

次は鬼ごっこで、トノサマガエル役にタッチされるとアマガエル役は退場となります。アマガエル役は安全地帯となる5つの椅子を奪い合い、一生懸命逃げ回るのですが、やはり10分ほどでほとんど退場になってしまいました。男の子がゲームの趣旨を忘れそうなくらいにエキサイトしているのが微笑ましかったです。

トノサマガエルが増えていくのを椅子取りゲームで体感します

トノサマガエルが増えていくのを椅子取りゲームで体感します

ゲームで外来種が増えていく速さを体験した後は、お待ちかねのトノサマガエル捕りです。子どもたちは網と虫かごを持って田んぼの中に散らばっていき、トノサマガエルとそのオタマジャクシ、さらには他の生きものを捕まえます。スタッフの方が捕まえたシマヘビにも興味深々で、最初は遠巻きに見ていた女の子も最後は「持ちたい!」といって触っていました。生きもの好きな私としては、ヘビにも触れ合うことができるたくましい子どもが沢山いることに嬉しくなりました。

カエル以外にも色々な生きものが見つかります

カエル以外にも色々な生きものが見つかります

田んぼだけでなく、えこりん村内の池脇の芝地でも駆除活動をしました。2cmくらいの小さなトノサマガエルが沢山いました。私も一緒に何匹も獲り、小学校の頃によく虫を捕っていた感覚を懐かしく思い出しました。

芝生にもトノサマガエルの子どもが沢山います

芝生にもトノサマガエルの子どもが沢山います

トノサマガエルを捕まえるのが楽しいから友達を連れてくる、参加して得た知識を友達に自慢する、さらにその友達が興味を持つ、という好循環の結果、えこりん村がある恵庭市では外来種について知っている小学生が増えています。また、えこりん村では、セイヨウオオマルハナバチの駆除会による普及啓発活動もあり、活動の長い参加者からは、在来種が増えたように感じると言われるそうです。

びっくりドンキーのお客様に安全で美味しい食事を召し上がっていただきたい、という企業としての想いがたっぷりの田んぼの取り組みは素晴らしいものでした。えこりん村では他にも様々な取り組みをされています。皆さんもぜひ訪れてみてくださいね!

取材:宮本育昌(一般社団法人CEPAジャパン)

過去に受賞した団体をアクション大賞事務局スタッフが訪ね、その後の活動の話を聞きました!

2016年 えらぼう部門優秀賞
クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン株式会社
2015年大賞 たべよう部門優秀賞
特定非営利活動法人加茂女
2013年大賞 たべよう部門優秀賞
アイキッズ〜エコアイディアキッズびわ湖〜
2013年GreenTV賞
株式会社アレフ

クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン株式会社
(三重県 2016年度優秀賞 えらぼう部門)

CEPAジャパンの宮本です。2016年にえらぼう部門優秀賞を受賞した三重県の「クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン株式会社(以下QPCJ社)」を訪問し、その取り組みを取材してきました。


お話を伺ったのは、授賞式に出席いただいた取締役事業本部長の堺 大さんと営業部長の茂森 清さん、そして営業部産業資材グループヘッドの舘 正喜さんです。

左から舘さん、茂森さん、堺さん

左から舘さん、茂森さん、堺さん

受賞した取り組みは、自社技術を活用した建築用コンクリートパネル(以下コンパネ)「Xシート型枠」の製造・販売です。特徴は、通常は合板で作られているコンパネを、FRP(繊維強化プラスチック)で製造している点。コンパネに使われる木材が時として熱帯雨林の破壊の原因となることを知ったQPCJ社が、その解決策として始めました。商品の販売が貢献する熱帯雨林の保全は、愛知ターゲット4「持続可能な生産と消費」やSDG12「つくる責任、使う責任」につながる重要な取り組みですね!

建築現場での使用例(QPCJ社提供)

建築現場での使用例(QPCJ社提供)

Xシート型枠には、QPCJ社独自に開発されたガラス繊維入りプラスチックシートの技術が活かされています。材料はガラス繊維とプラスチック(ポリプロピレン)です。まず、糸状のガラス繊維を複雑に絡ませてシート状にします。このガラス繊維シート2枚を3枚のプラスチックフィルムで交互に挟み、熱をかけて一体化させ板状にします。これを型に入れ、再び熱と圧力をかけることで製品ができあがります。

ガラス繊維シート(白いもの)2層とプラスチックシート(黒いもの)3層を積層

ガラス繊維シート(白いもの)2層とプラスチックシート(黒いもの)3層を積層

ガラス繊維を絡ませる工程は羊毛を使ったフェルト細工と同じ原理で、細かい繊維を針で刺して固めていきます。針も同じものを使っているとのことです。自分も子どもが小さい時にフェルト細工を作ったことがあるので、なんだか親しみを感じました。


Xシート型枠には、木材コンパネの代替品として建築現場で大工さんに使っていただくため、幾つかの工夫がされています。1つ目は高い耐久性です。木材であれば使い捨てのところ1枚50回程使えるので、かかる費用も安くなります。2つ目はのこぎりで切れることです。900mm×1800mmの規格外でコンクリートの型枠を作る必要が出てきた時、木と同じように切れることが必須となるのです。Xシート型枠はのこぎりで切れる柔らかさである上に、切りくずがとても少ないんだそうです。3つ目は釘が打てることです。複数のコンパネを合わせて大きな型枠を組む際には、釘で止めることが必要となります。Xシート型枠はガラス繊維が複雑に絡み合ってほどよい粘りがあるため、釘を打っても割れることがありません。4つ目は軽いことです。厚みの薄い場所を作ることで持ち運びやすくしています。そして5つ目は乳白色であることです。実はQPCJ社の製品の多くは自動車部品用に作られているので黒色ですが、Xシート型枠は乳白色で光を一部透過します。コンパネで囲まれていても明るい空間で作業ができ、建築現場での安全性が高くなることに加えて電灯が不要となり省エネになっているのです。森林保全だけでなく地球温暖化の防止にも役立つなんて、一石二鳥ですね!

窓の外からの太陽の光が透けて見えます

窓の外からの太陽の光が透けて見えます


QPCJ社では昨年、生物多様性アクション大賞を受賞した際に、「えらぼう部門優秀賞」のロゴマークを入れたプレスリリースを発表しています。


「営業活動でこれを配布したところ、お客様から好意的に評価されました。商売での引き合いが増えたように感じています」と茂森さんは言います。


生物多様性アクション大賞受賞が好影響を与えているということで嬉しくなりました!今後もますますXシート型枠の利用が拡大し、森林保全が進んで欲しいと思います。

取材:宮本育昌(一般社団法人CEPAジャパン)

特定非営利活動法人加茂女
(京都府 2015年大賞 たべよう部門)

2015年の生物多様性アクション大賞で、大賞を受賞された「NPO法人加茂女」(かもめ)の取り組みについて、活動現場を見せていただくと共に、活動を中心的に進めていらっしゃる曽我さんにお話しを伺ってきました。

加茂女 曽我さん

加茂女 曽我さん

まず曽我さんにご案内頂いたのは、山城地区の活動現場です。活動し始めの時は不法投棄の廃棄物が積み上がり、雨が降るとぬかるむような場所でしたが、廃棄物を片付けて土をならし、活動のベースとなる広場にしました。不法投棄防止の看板も行政に設置してもらい、広場が元の状態に戻らないよう、工夫をしているそうです。

放置された竹林を整備(提供:加茂女)

放置された竹林を整備(提供:加茂女)

広場には、ボランティアが自ら伐採した竹で建てた資材小屋・トイレ、ボランティアが設計して自分たちで施工したレンガ製ピザ窯を設置しています。イノシシが出て困っているので、トイレの前にイノシシの皮を敷き、川にシシオドシを作って効果を見ているところだそうです。どれも立派な造りで「できるだけ自分たちで作る」という姿勢に感心しました。

自ら資材小屋を建築(提供:加茂女)

自ら資材小屋を建築(提供:加茂女)

ピザ窯も施工(提供:加茂女)

ピザ窯も施工(提供:加茂女)

定例活動日は毎月第2日曜日です。10名程度の固定メンバーが中心に、学生や企業勤めの方も参加します。伺った日は臨時の活動だったため、参加者は6名でした。伐採予定の竹の量が非常に多いため、もっとたくさんの人に参加してもらえるよう、大阪や京都内外のNPOセンターや社会福祉協議会などの中間支援組織に相談されています。


活動内容は主に竹の伐採と焼却/炭づくりです。「楽しみながら活動を続ける」ために、ピザ窯で焼き芋や焼きおにぎり、ピザを作り、参加者に振る舞っています。私もご相伴に預かりましたが、良い天気のもとで竹に囲まれて食べたこともあり、一層おいしく感じました!


活動の後に、加茂女の事務所で曽我さんに話を伺いました。実はこの拠点は曽我さんが個人的に購入した住宅を改装したものです。すぐ近くに曽我さんの自宅があり、空き物件が出た時に思い切って加茂女の拠点として購入したと言います。ここには事務室に加えて喫茶室があり、食事も提供されています。つい最近、喫茶室に京都産の竹の集成材で作ったテーブルと椅子が導入されました。統一されたとても良い雰囲気に、ついつい長居してしまいそうです。

竹の集成材利用のテーブルと椅子

竹の集成材利用のテーブルと椅子


伐採した竹を使った食器

伐採した竹を使った食器

喫茶室の壁にはイベントの開催や報告会など、様々な節目に作成してきた報告用ポスターが貼られていました。2016年のポスターでは生物多様性アクション大賞の大賞受賞についてご紹介いただいています。

生物多様性アクション大賞受賞をPR

生物多様性アクション大賞受賞をPR

竹の利用拡大に向けて色々なアイデアをお持ちの曽我さん。今後の活動の拡大に期待しています。

取材:宮本育昌(一般社団法人CEPAジャパン)

アイキッズ〜エコアイディアキッズびわ湖〜
(滋賀県 2013年大賞 たべよう部門)

2013年に大賞を受賞した滋賀県の「エコアイディアキッズびわ湖(愛称:アイキッズ)」を訪問し、その取り組みを取材してきました。
お話を伺ったのは、ボランティアで指導者を務める中村さんと大森さん、事務局長の増渕さんです。中村さん・大森さんは教員、増渕さんはパナソニック アプライアンス社本社に勤務しています。

左から増渕さん、中村さん、大森さん

左から増渕さん、中村さん、大森さん

活動が始まったきっかけは、2007年10月に滋賀県長浜市で開催された「琵琶湖環境ビジネスメッセ」で滋賀県の嘉田(かだ)由紀子滋賀県知事(当時)のお話に刺激を受けた中村パナソニック会長(当時/現相談役)が、草津工場の従業員に琵琶湖の保全活動を強く薦め、それを受けて会社と労働組合から理事・運営委員を選出する形で立ち上がったのが、アイキッズと、その運営母体となる「びわ湖エコアイディア倶楽部」です。企業トップの環境配慮への想いと、現場の社員が立ち上がってつくった組織。会社全体が取り組まれたストーリーを伺って、なかなか真似のできない素晴らしいことだと感じました。

「学校教育とは一味違う工夫による“何でも体験”を基本とした独自のプログラムを子どもたちに提供しています」と熱く語るのは、中村さん。彼の先生としての知見が、アイキッズの活動を単なる“伝統文化の体験”に留めることなく、地域を知る“一年間を通じた学習プログラム”に結実させています。

指導の中心を担う中村さん

指導の中心を担う中村さん

毎回の活動には“めあて”(その回の達成目標)が設定されます。子どもたちは“めあて”に向けて自発的に地元の方々と交流しながら、地域の伝統文化を発掘していきます。これまでに底引き網や刺し網、定置網、しじみ曳きといった琵琶湖で行われているさまざまな漁法を体験し、鮒ずしを代表とするさまざまな種類の伝統食を調理してきました。さらには、そこで使われる調味料の醤油や味噌を造る蔵にも訪れているそうです。世界に類を見ない湖魚食文化を支えてきた人や環境を知ることで、子どもたちのふるさとへの愛着が高まっていると聞き、この先も草津の文化と誇りが受け継がれ続けていくのだろうと、希望を感じました!

事務局では、活動を多くの方に知っていただくため、2008年から県内外の様々な賞への応募を推し進めていると言います。審査員にプレゼンを行うのは子どもたちです。子どもたちが自信をもって発表できるようにサポーターが準備を支援し、会が一丸となって取り組んだ結果、2012年末には著名な賞において「非常に高いレベルの取り組みである」と認められてグランプリに輝きました。その勢いで、2013年に第一回目の生物多様性アクション大賞にも応募し、大賞/たべよう部門優秀賞を受賞しました。授賞式では、子どもたちがいきいきと元気に活動している様子が発表され、参加者から感嘆の声が上がっていたのを思い出します。

その後、10周年を契機に2016年度は一旦休会することとなりました。今後の進め方について再検討した結果、より地元に密着した活動にすべきとの結論に至りました。

今までは、主に従業員の子どもたちを会のメンバーとしてきましたが、2017年度は地元自治会や子ども会などを通じてメンバーを募ることとなります。新たなエコアイディアキッズびわ湖として、さらにパワーアップした取り組みを行う予定だそうです。

2017年度に向けた夢を語る増渕さん

2017年度に向けた夢を語る増渕さん

「この取り組みは一人でできるものではありません。子供たち、先生・サポーター・資金、そして関係者全員の情熱により、さらに燃え上がるような活動にしていきたいと考えています」と熱く語る増渕さん。これからの活動にも期待しています!

取材:宮本育昌(一般社団法人CEPAジャパン)

株式会社アレフ
(北海道 2013年度GreenTV賞)

2013年にGreenTV賞を受賞した北海道の「株式会社アレフ」のえこりん村を訪問し、その取り組みを取材してきました。お話を伺ったのは、えこりん村で活動を指導されている荒木洋美さんと、エコ活動全般を解説してくれた高田あかねさんです。

アレフは、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」や小樽ビール醸造所など、飲食にまつわる施設を多数経営しています。

左から荒木さん、高田さん

左から荒木さん、高田さん
*田んぼの体験スタッフは早乙女(田植えをする女性)の衣装で体験指導をしています

受賞した取り組みは、えこりん村での「生きもの豊かな田んぼ」の取り組み、そして動画「ふゆみずタンゴ」です。冬の田んぼに水を張る農法「ふゆみずたんぼ」をもじったタイトルのこの曲は、びっくりドンキーでお客様に安全なお米を提供していることを知っていただくための分かりやすい取り組みとして、社内から演奏する人・イラストを描く人・生きものを選ぶ人・振り付けをする人を募ったチームで作り、田植えイベントの際にスタッフと参加者で一緒に歌って踊っています。

田植えイベント「ふゆみずたんぼまつり」ではみんなで踊ります((株)アレフ提供)

田植えイベント「ふゆみずたんぼまつり」ではみんなで踊ります((株)アレフ提供)

毎週末、そして夏休み時期の約30日間、田んぼ脇の施設では一日中「ふゆみずタンゴ」を流し、多くて1日300人、年間で数千人が聞いているとのこと。イベントに参加した子どもたちが知らず知らずのうちに口ずさんでいることもあるとか。私も生物多様性条約の会議で実際に皆さんが踊っているところを拝見し、中毒性があると思いました(笑)!

私の伺った日は、年6回行っている「えこりん村学校『えこりん村の子どもたち』(米コース)」の第3回の活動日で、外来種であるトノサマガエルの駆除がテーマでした。トノサマガエルは北海道にもともと棲んでいるカエルよりも大きくなるために数が増えており、えこりん村でも田んぼや池の周辺で沢山見られます。イベントは、外来種についての啓発と、子どもたちの「カエルを捕りたい!」という希望を両方叶えるために企画されています。

カエルが捕りたい子どもたちは熱心に耳を傾けます

カエルが捕りたい子どもたちは熱心に耳を傾けます

外来種のカエルをしっかり見分けます

外来種のカエルをしっかり見分けます

プログラムでは、説明だけでなく、外来種が増えていく様子を2種類のゲームで体感します。
最初は椅子取りゲームで、在来の植物(ニホンタンポポ)が外来の植物(セイヨウタンポポ)に置き換わってしまう様子を体験しました。セイヨウタンポポ役が座った席は全て、その後に座ったニホンタンポポ役がセイヨウタンポポ役に変わるルールです。最初は1株しかいなかったセイヨウタンポポが、回を重ねるごとに加速度的に増えていき、7回目ではほとんどがセイヨウタンポポになってしまいました。

次は鬼ごっこで、トノサマガエル役にタッチされるとアマガエル役は退場となります。アマガエル役は安全地帯となる5つの椅子を奪い合い、一生懸命逃げ回るのですが、やはり10分ほどでほとんど退場になってしまいました。男の子がゲームの趣旨を忘れそうなくらいにエキサイトしているのが微笑ましかったです。

トノサマガエルが増えていくのを椅子取りゲームで体感します

トノサマガエルが増えていくのを椅子取りゲームで体感します

ゲームで外来種が増えていく速さを体験した後は、お待ちかねのトノサマガエル捕りです。子どもたちは網と虫かごを持って田んぼの中に散らばっていき、トノサマガエルとそのオタマジャクシ、さらには他の生きものを捕まえます。スタッフの方が捕まえたシマヘビにも興味深々で、最初は遠巻きに見ていた女の子も最後は「持ちたい!」といって触っていました。生きもの好きな私としては、ヘビにも触れ合うことができるたくましい子どもが沢山いることに嬉しくなりました。

カエル以外にも色々な生きものが見つかります

カエル以外にも色々な生きものが見つかります

田んぼだけでなく、えこりん村内の池脇の芝地でも駆除活動をしました。2cmくらいの小さなトノサマガエルが沢山いました。私も一緒に何匹も獲り、小学校の頃によく虫を捕っていた感覚を懐かしく思い出しました。

芝生にもトノサマガエルの子どもが沢山います

芝生にもトノサマガエルの子どもが沢山います

トノサマガエルを捕まえるのが楽しいから友達を連れてくる、参加して得た知識を友達に自慢する、さらにその友達が興味を持つ、という好循環の結果、えこりん村がある恵庭市では外来種について知っている小学生が増えています。また、えこりん村では、セイヨウオオマルハナバチの駆除会による普及啓発活動もあり、活動の長い参加者からは、在来種が増えたように感じると言われるそうです。

びっくりドンキーのお客様に安全で美味しい食事を召し上がっていただきたい、という企業としての想いがたっぷりの田んぼの取り組みは素晴らしいものでした。えこりん村では他にも様々な取り組みをされています。皆さんもぜひ訪れてみてくださいね!

取材:宮本育昌(一般社団法人CEPAジャパン)