生物多様性5つのアクションたべようふれようつたえようまもろうえらぼう

どれからはじめる?
たべよう!ふれよう!つたえよう!まもろう!えらぼう!
生物多様性アクション大賞2013 授賞式レポート

今年から始まった生物多様性アクション大賞。今回の応募の特徴のひとつは、個人、NPO、企業、大学、など様々なセクターから応募があったこと。2020年には生物多様性の損失が食い止められて、2050年には自然と共生した社会をつくろう、という生物多様性条約愛知目標の実現へ向けて、垣根を越えてみんなでいっしょに動き出すことを目指している賞です。
愛知目標を実現させるためには具体的なアクションにつなげることが大切です。たべよう、ふれよう、つたえよう、まもろう、えらぼう、という5つのアクションに取り組むことが生物多様性を守ることにつながります。これからも生物多様性アクション大賞が続いていくことで、「生物多様性」という言葉だけではなく、一人ひとりの暮らしに根ざしたアクションのきっかけになるかもしれません。まずは参加者全員での記念写真からご紹介。晴れがましい、すてきな笑顔でステージがいっぱいになりました。
以下、授賞式の流れをレポートします。

聞いたことある?生物多様性ってなんだろう?

「生物多様性」と耳にしてどんなことを思い浮かべますか? たとえば、地産地消で旬の食材を使う食堂でごはんを食べること、海や山での自然体験をすること、美しい自然や生きものの姿を写真や絵で伝えること、地域に残る伝統文化を守ること、環境に配慮した商品を買うこと。こんなことも実は「生物多様性」につながっています。

今年から始まった「生物多様性アクション大賞」は、“生物多様性”の主流化を目指して、国連生物多様性の10年日本委員会が推進する「MY行動宣言 5つのアクション」に基づき、全国各地で行われている5つのアクションに貢献する団体や個人の取組みを表彰するアワードです。

環境省 堀上勝室長

「たべよう部門」、「ふれよう部門」、「つたえよう部門」、「まもろう部門」、「えらぼう部門」の5部門が設けられ、日本各地から122点の応募がありました。各部門から「優秀賞」を選定し、その中から「大賞」が選定されます。会場の日比谷コンベンションホールには、受賞団体のうち17団体が集まり、主催者を代表して国連生物多様性の10年日本委員会事務局を担う、環境省生物多様性施策推進室の堀上勝室長の開会の挨拶で幕を開けました。

生物多様性アクション大賞 いよいよ授賞式スタート!

それでは各部門の優秀賞から見ていきましょう。

ふれよう部門優秀賞『雨ふる大地の水辺保全ネットワーク』
つたえよう部門優秀賞『株式会社島津製作所 え~こクラブ』
まもろう部門優秀賞『NPO法人ニッポンバラタナゴ高安研究会』
えらぼう部門優秀賞『フェアウッド・パートナーズ』
復興支援賞『松島湾アマモ場再生会議』
GreenTV賞『株式会社アレフ』
GreenTV賞『一般社団法人Think the Earth』
セブン-イレブン記念財団賞『石巻海さくら』

ふれよう部門優秀賞
『雨ふる大地の水辺保全ネットワーク』

つたえよう部門優秀賞
『株式会社島津製作所 え~こクラブ』

まもろう部門優秀賞
『NPO法人ニッポンバラタナゴ高安研究会』

えらぼう部門優秀賞
『フェアウッド・パートナーズ』

復興支援賞
『松島湾アマモ場再生会議』

GreenTV賞
『株式会社アレフ』

GreenTV賞
『一般社団法人Think the Earth』

セブン-イレブン記念財団賞
『石巻海さくら』

審査委員賞
『泡瀬干潟博物館カフェ「ウミエラ館」』/『赤坂みつばちあ』/『かとうさんち』/『NPO法人 海の森・山の森事務局』/『こども国連環境会議推進協会チーム「365×3」』/『ゆりりん愛護会』/『株式会社損害保険ジャパン、日本興亜損害保険株式会社』/『富山県立大学』/『特定非営利活動法人グラウンドワーク三島』/『ラムサール・ネットワーク日本』

そして栄えある大賞は、たべよう部門優秀賞、「アイキッズ~エコアイディアキッズびわ湖~」へ贈られました。おめでとうございます!全ての表彰が終わり、筑波大学教授、吉田正人審査委員長の総評で締めくくられました。

大賞・たべよう部門優秀賞受賞
『アイキッズ~エコアイディアキッズびわ湖~』

受賞団体によるプレゼンテーションタイム!

今回は3枚の写真で活動を語る3ピーストークという手法で行います。大賞から順に見ていきましょう。

◆ 大賞・たべよう部門優秀賞受賞
アイキッズ~エコアイディアキッズびわ湖~(滋賀県)『滋賀・琵琶湖の伝統食作り』

滋賀県の琵琶湖で元気に活動をする子どもたちのグループです。滋賀の伝統食「なれずしづくり」を通して、琵琶湖のめぐみや、これまで受け継がれてきた伝統文化に気づき、郷土に愛着や誇りを持つことをねらいに活動しています。五感をフル活用して伝統食の背景やそれを支える自然環境や生物多様性について学ぶことで、いのちのめぐみをいただいて生かされていることに気づかされます。たとえば、琵琶湖の水を引いてお米をつくる農家でお話を伺ったり、市内にただ一軒だけ残る昔ながらの製法で味を守る醤油蔵を訪ねるなど、食材となるまでのプロセスにも目を向け、人と人とのつながりを大切にしています。また、地元食材を活かした新たな食文化の創造にも挑戦をしています。

◆ ふれよう部門優秀賞受賞
雨ふる大地の水辺保全ネットワーク(大阪府)
『流域住民による生物多様性の保全と教育が一体となった取り組み』

大阪府の南東部を流れる石川流域の住民による生物多様性の保全と教育が一体となった取り組みを続けている「雨ふる大地の水辺保全ネットワーク」です。活動のモットーは「環境保全と環境教育の一体化」。小学校での環境教育教材の開発と実践を通して、生きものや自然に興味をもった子どもが実際の保全活動に参加しています。子どもたちは活動を通して着々と成長し、生き物のにぎわいを保全するリーダーへと育っていきます。

◆ つたえよう部門優秀賞受賞
株式会社島津製作所 え~こクラブ(京都府)『環境出前授業』

株式会社島津製作所の女性社員による環境活動チーム「え~こクラブ」。1999年より小学校や自治体へ出向き環境出前授業を行っています。2007年からは絶滅危惧種を題材にしたオリジナルカードゲーム「bidi」を用いています。生きものを切り口にすることで子どもたちの興味が引き出され、より身近な問題として生物多様性を捉えることができるようになります。楽しみながら学んでもらう活動を続けています。

◆ まもろう部門優秀賞受賞
NPO法人ニッポンバラタナゴ高安研究会(大阪府)
『高安の里地・里山の伝統的な水質浄化法“ドビ流し”を応用した生物多様性の保全』

大阪府八尾市、高安の里地・里山の伝統的な農業技術として受け継がれてきた水質浄化法“ドビ流し”(池干し)を応用した生物多様性の保全活動を続けています。“ドビ流し”の効果を応用して、アオコの異常発生を抑制し、外来種を防除することで、在来魚のニッポンバラタナゴを含む生物多様性を保全しています。ニッポンバラタナゴの住む溜池に地域の子どもたちを招き、地元の自然に親しんでもらう機会を設けています。

◆ えらぼう部門優秀賞受賞
フェアウッド・パートナーズ(東京都)『フェアウッド・パートナーズ』

『フェアウッド・パートナーズ』は、一般財団法人地球・人間環境フォーラムと国際環境NGO FoE Japanが運営するプロジェクトです。フェアウッドとは、地域材、認証材など伐採地の環境や社会に配慮した木材や木材製品のこと。企業にはフェアな木材を調達して流通できるように提案をしながら、木を使う消費者には「森を壊さない木材の選び方」を提案しています。木を選ぶことで、世界の森林を守ることを目的としています。

◆ 復興支援賞受賞
松島湾アマモ場再生会議(宮城県)『東日本大震災で失われたアマモ場の再生活動』

宮城県塩竈市を中心に東日本大震災で失われたアマモ場の再生活動を行っています。生態系の復元には長い時間がかかります。稚魚や稚貝のゆりかごと言われているアマモは震災の津波で大部分が失われました。漁業再生を視野に入れ、残存したアマモの花枝を採取し、干潟へ移植をしてアマモ場の再生を目指しています。また「親子で学ぶ松島湾の海辺」という自然観察会を開催し、子どもたちが海にふれあう機会を設けています。

◆ セブン-イレブン記念財団賞受賞
石巻海さくら(宮城県)『umihamaそうじ』

宮城県石巻市で地域の漁業再生、ビーチ再生、生物調査を続けている石巻海さくら。「umihamaそうじ」では、あえて瓦礫とは呼びません。海中にあるみなさんの大切なもの、暮らしのかけらを一つひとつていねいに拾い集めています。同時に海を汚す水中ゴミの撤去や海岸にあるゴミ拾いも続けています。シュノーケル教室など子どもたちが元気になるためのイべントも企画し海の再生に力を注いでいます。

◆ GreenTV賞受賞
株式会社アレフ(北海道)『「生きもの豊かな田んぼ」の取り組み』

「生きもの豊かな田んぼ」づくりを目指して『ふゆみずたんぼプロジェクト』に取り組む株式会社アレフは、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」を運営する会社です。2009年から生物多様性に配慮した食材を仕入れるため、生物多様性保全に貢献する稲作農法を基準化し生産者に呼びかけました。できたお米は「びっくりドンキー」でライスとして提供され、2012年は22店舗で年間約400万食の実績になりました。

◆ GreenTV賞受賞
一般社団法人Think the Earth(東京都)『うごくえこよみ』

クリエイティブの力で社会課題の解決を目指す一般社団法人Think the Earthが手がけた「うごくえこよみ」。日本で古くから大切にされてきた暦。二十四節気七十二候で織りなされる1年間の日本の情景を、一候あたり5秒で次々と変化するアニメーションで表現した短編の映像作品です。墨絵で描かれたアニメーションは淡く繊細で、絵巻物のように美しい世界が広がります。映像を楽しみながらこまやかに移ろう季節を味わうことができます。

多様性を感じるワークショップ、「モチは丸か四角か!?」

続いては、受賞者と審査委員、そして会場の参加者が一体となって、生物多様性って暮らしや地域とどんな関係があるの?と考える「モチは丸か四角か!?」というワークショップです。

ファシリテーターは一般社団法人CEPAジャパンの森良理事です。みなさんのお家のお正月の食卓を思い浮かべてください。「お餅は丸ですか?それとも四角ですか?」という問いかけからスタートしました。配られた1枚の紙にそれぞれが住む地域の名前とお正月料理の絵を描きます。次に違う地域の人どうしでグループを作り自分の地域のお正月料理を自慢しあいます。最後はグループごとにお正月料理から見えてくる生物多様性、社会とのつながりについて発表しあいました。お正月料理は地域ごとに多様な特徴があります。違うことに発見があって、違うことで豊かになれる。そんな気づきが自然と沸いてくる素敵な時間になりました。

地域の光を目指してがんばろう!
関係団体の皆様から応援スピーチをいただきました

経団連自然保護協議会 岩間芳仁事務局長

人と人のつながり、人と地域のつながり、人と自然のつながりを大切に、これからも活動を継続され、それが地域の力になることを期待しています。今回の受賞を糧にして、さらにがんばってください。

前田建設工業株式会社CSR・環境担当 勝又正治執行役員

今回受賞された方々の活動にスポットが当たることで、さらにそこからステップアップされた活動がどんどん現れてくるでしょう。
そうしたプラスのスパイラルが生まれて、より効果的な活動につながることを期待しています。

一般財団法人セブン-イレブン記念財団 伊藤順朗評議員

市民活動を応援することによって、自然環境が守られること、さらには豊かな生物多様性の実現を目指したい。
生物多様性アクション大賞がずっと続いていく賞になるよう支援していきたいと考えています。

どんな生きものに会えるかな?日比谷公園自然観察会

当日はこんな楽しい企画もありました。都市公園として有名な日比谷公園をめぐる自然観察会です。クイズを交えながら園内を散策すると秋の実りや様々な生きものに出会います。
中でも珍しかったのは、浅葱(あさぎ)色という名前の素になったといわれる美しいチョウ、アサギマダラ。透き通るような淡い色の羽が印象的です。移動性のチョウなので、この時期に都内で観察されるのはとても珍しいこと。さらに奥へいってみると日比谷公園のシンボルと呼ばれるイチョウの巨木がありました。大きな木を見上げてみると、なんとそこにはハクビシンの姿が!皇居に隣接する日比谷公園は多様な生きものでにぎわう都会のオアシスでした。

(テキスト:原田かおり 写真:重松賢