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まもろう 

守れ!ふるさとのカスミサンショウウオ~12年間の軌跡~

岐阜県立岐阜高等学校自然科学部生物班(岐阜県岐阜市)

絶滅危惧種である岐阜県内のカスミサンショウウオを、大学と専門機関や自治体と協働し、12年間にわたり生物多様性の3観点に基づき保全し続けています。また、保全活動や基礎研究の成果を国内外に向け数多く発信しています。


カスミサンショウウオの幼体を地域の子どもたちと放流する様子

カスミサンショウウオ(Hynobius nebulosus)は,主に岐阜県以西に生息する止水産卵性サンショウウオである。最近まで岐阜県内の既知生息地はわずか2ヶ所(岐阜市,揖斐川町)であったため,岐阜県版レッドデータブックでは絶滅危惧Ⅰ類に指定されています。カスミサンショウウオの生息地は里山で土地開発や過疎化などの人為的な影響を受けやすく、分断や荒廃が進んでいます。保全活動を開始した2007年、岐阜市生息地では大型の老齢個体4匹と卵嚢6対(雌6匹分)しか発見されない危機的な状況でした。遺伝子頻度の偏りが生じないよう生息地の全ての卵嚢を保護し、生存率を上げるため、幼体まで高校で飼育し、変態上陸直前に元の生息地に戻す活動を、代々の部員が12年間継続しています。活動開始時より岐阜市と連携し、産卵場への農薬流入を阻止するためL字型ブロックの設置や周辺の草刈り、清掃などの環境整備をしています。

5年前より、生息地近隣の住民と一緒に放流会を企画し、地元の希少生物を保全する活動を伝え、広げることにも重点をおいています。また、岐阜市個体群の絶滅リスクを分散するため、岐阜市と岐阜大学、アクアトトぎふと連携し、生息域外飼育保全を行っています。さらに、揖斐川町生息地では、水枯れが起こっていた産卵場に遮水シートを張ることで、産卵可能な環境を10年間にわたり整備しています。

昨年より、生息地近郊に域外飼育場を設け、保全を進めています。2016年の調査で30年ぶりに発見された岐阜県内3ヶ所目となる海津市生息地では、産卵場に土砂が流入し埋土するため、適当な深さまで掘り下げ、イノシシ除けなどの工夫をこらした環境整備を行っています。また、保全活動を充実させるため、基礎研究活動も盛んに行っています。2017年にはGISと環境DNAを併用する世界初の調査手法を開発し、わずか1年という短期間で海津市にて4ヶ所目となる新規生息地を発見しました。加えて過去の標本の調査、古地図の解析による絶滅原因の推測,生息適地の未来予測、性フェロモンの解析なども行っています。


水枯れの起こる産卵場を清掃し,遮水シートを張る環境整備の様子

更新日:2018.12.27  ※記事の内容は投稿当時のものです