まもろう
ツシマウラボシシジミ生息域外保全
足立区生物園(東京都足立区)
ツシマウラボシシジミの絶滅を防ぐため、累代飼育技術を確立させ、生息地で野生絶滅が起きた場合に備えるとともに、環境回復地点への野生復帰用集団の確保を目的とした生息域外保全に取り組んでいます。
環境省は近年、生物多様性国家戦略として国内希少種の保全活動に力を入れています。そういった動きを受け、足立区生物園では、日本動物園水族館協会の加盟施設として、環境省と日動水の協定に基づき、ツシマウラボシシジミの生息域外保全の活動を行っています。
ツシマウラボシシジミは、日本では長崎県の対馬にのみ生息する開張約2㎝のシジミチョウで、本種の繁殖地は対馬市の天然記念物に指定されています。また、環境省作成のレッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類にあげられています。本種は近年急激に数を減らしており、現在、最も絶滅に近いチョウの一種と考えられています。
生物園では、本種の確実な累代飼育技術を確立させることで、万が一生息地で野生絶滅が起きた場合に備えるとともに、現在野生個体の生息が途絶えている地点の環境回復ができた際の野生復帰用集団の確保を目的とした生息域外保全に取り組んでいます。
累代飼育の最初の鍵となるのは、成虫の交配です。生物園では、蝶の舞う大温室を利用してツシマウラボシシジミを放蝶し、交配を行っています。一般公開の温室のため、できるだけ限られたタイミングで作業をおこなう必要があります。成虫の羽化するタイミングを年3回に調整し、予め定めた交配実施期間(約一週間)に集中して作業をおこないます。交配の作業効率はまだかなり改良の必要を感じますが、ほぼ目標数のメスの交配に成功しています。
そのほか、採卵方法や幼虫の飼育方法、蛹の管理など次代につなぐための技術の検証や、野性復帰に至った際の大量飼育法の検討など、生息地保全の現場とはまた違った方向からの保全活動を行っています。
更新日:2015.12.01 ※記事の内容は投稿当時のものです