まもろう
地域の自生芝を活用する ~多様性のある草原を創る
京都府立桂高等学校 TAFS「地球を守る新技術の開発」班(京都府ほか)
http://www.kyoto-be.ne.jp/katsura-hs/tayori/saishin2013.html
青森県種差海岸は日本有数の天然芝地で多くの絶滅危惧種が存在していますが、遺伝的多様性が失われつつあり減衰する恐れがあります。私達は開発した種子繁殖技術で遺伝的多様性の復元・保全に取り組んでいます。
京都府立桂高等学校TAFS「地球を守る新技術の開発」研究班では、2007年から地域固有ノシバ種の発見・活用に取り組んでいます。生息場所の歴史的背景の調査から始まり、採取・栽培しての特性調査や、かずさDNA研究所・東北大学と共同で遺伝子レベルの解析を経て種の同定を行っています。現在までに5つの固有種(奈良県若草山種・京都種・富士芝野生種・宮城県金華山種・青森県種差海岸種)を確認しました。
固有種の保護のため、ノシバの生産、緑化への活用、屋上緑化システムの開発・普及などに取り組んでいます。
東日本大震災後、研究を復興支援に活かせないかと考え、東北地方にて固有ノシバを探索。宮城県では、牡鹿半島沖の金華山島にて遺伝的に多様な固有種を発見し活用を目指したところ、宮城県鳴瀬川の堤防緑化試験(国土交通省と協力)、『仙台うみの杜水族館』の緑化植物として採用されるなど、現地の緑化に定着しつつあります。
これらの実績が評価され、昨年、環境省から青森県種差海岸のノシバを緑化に使いたいと依頼があり芝地の調査を実施したところ、遺伝的に多様でなく100年後には減衰していく可能性もあることが分かりました。
ノシバは発芽率が低く、一般的には栄養繁殖によって生産されています。しかし鹿などの草食動物と共生する環境では、種子が摂食され消化器官を通ることで発芽率が向上し、種子繁殖することで遺伝的多様性を有する草原が形成されます。
種差海岸では1960年代まで馬が放牧されていて、以降人間の管理に置き換わったことで種子繁殖できず多様性が減少したと考えています。地域固有ノシバを保護・活用するために、ノシバ種子の発芽率を約90%に高め短期間で増殖する技術を開発。この技術を種差海岸の芝地に活用することで、多様性が豊富な本来の自然の循環に近づけようと試みています。環境の保全と観光地としての維持が可能であると考えています。
更新日:2015.11.06 ※記事の内容は投稿当時のものです