まもろう ふれよう
ふるさとの森づくり
YKK株式会社(富山県黒部市)
黒部川扇状地では、圃場整備や都市化によって自然林とそれを取り巻く生態系が失われていっています。YKKでは工場再編等で空いた敷地を利用し、原風景の再生に向けた取り組みを行っています。
YKKグループの技術・開発の中核拠点となる黒部事業所がある黒部市では、立山連峰から流れる水が黒部川扇状地を形成し、豊富な水が湧き水や表流水となり、小さな森や湿地が多く造られていました。しかし、地域の開発や田園の整備により、森や湿地は次第に姿を失い、それに伴いそこに生息していた生きものも姿を消して行きました。YKKでは、創業社長が理想とした「森の中の工場」の実現に向けて、黒部事業所内に森と水辺を造ることとしました。
失われつつある黒部本来の自然を守るため、2006年に周辺の山野から木々の種子を集め、苗作りを開始しました。2007年には工場跡地の造成工事、2008年からは社員やその家族をはじめ、OB、地域住民の力をお借りして、約2万本の植樹を行いました。その後、木々は順調に生長し、大きいものでは4〜5mを越すまでになっています。この森や水辺に多くの生きものが見られるようになったことから、生物調査を四季にわたり実施したところ、哺乳類2種、鳥類40種、昆虫類171種、魚類5種、底性生物21種の生きものが確認できました。中には環境省レッドリストⅡ類のメダカや、富山県レッドデータブックで危急種とされているトミヨ、希少種とされるミサゴやカワセミなどの希少種も生息していました。また、夏には近くの河川からアユが遡上してくることから、周辺とのネットワークが構築されていることも確認できました。
現在ではこの森や水辺を活かし、富山県やNPOと協働で小学生を対象とした生物多様性の環境学習実施や、遊歩道整備による来場者の憩いの場として利用していただいています。
今後は、地元大学による生息環境や遺伝子の研究の場として利用していただくと共に、地域の子どもたちや来場者が、自然や生物に関心を持ってもらえるよう、生きものを容易に観察できる設備の導入を検討しています。
更新日:2014.11.14 ※記事の内容は投稿当時のものです