えらぼう
竹紙(たけがみ)の取り組み~本業を通じた社会的課題への挑戦~
中越パルプ工業株式会社(東京都)
http://www.chuetsu-pulp.co.jp/sustain/eco/about.html
中越パルプ工業は、年間2万トンもの日本の竹を紙にします。厄介な放置竹林も、大量の竹を持続的に使うことで、森林、里山、生物多様性の保全を図ります。本業の紙づくりで、社会的課題の解決を目指しています。
中越パルプ工業は、富山県と鹿児島県に製紙工場を有する総合紙パルプメーカーです。印刷用紙から産業用紙まで様々な原紙を、毎日24時間操業で、年間約80万トンの紙パルプを製造しています。一般に紙は木材と古紙が原料ですが、当社は製紙業界で唯一、紙の原料に不向きな竹を使い、日本の竹だけで作った「竹紙(たけがみ)」も製造販売しています。
「竹紙」の取り組みは、日本で最も竹林面積を有する鹿児島県の川内工場で、1998年に始まりました。当時、竹林管理のため伐採され、燃やすか砕くか腐るのを待つしかない処分に困る大量の竹を、紙の原料にできないかと地元の要望に耳を傾けたのがきっかけです。
本来の製紙原料となるパルプ材と違い、竹は硬くて空洞です。木材チップ工場への運搬、加工コストも高くなります。伐採現場へ向かう軽トラックで伐採した竹を自ら運搬してもらう、チップ工場では有償で買い取るよう促し、代わりに木材チップとは異なり市況に関わらず竹チップを安定的に購入するなど、試行錯誤の末に現在の集荷システムを構築しました。竹を混合した紙だけではなく、2009年からは日本の竹100%の「竹紙」を作り、竹の集荷量も2万トンまで増やしました。
元々、会社を挙げての企業活動ではありません。地域の要望に対し、業界の常識を覆すひとりの担当者が対応し、やがて多くの協力者により実現しました。自分の職域に「余計な事」を取り込むことで、社会を良い方向に進めた好事例です。企業だからではなく、個人の志からできることです。取り組みを知り、共感し、行動することで、ソーシャルグッドの輪が連鎖します。ここ5年間は発信に力を入れてきましたが、社会的にはまだまだ知られていません。社会的課題を国や自治体のせいにするばかりでなく、個人の志と行動で解決に向かうことで、生物多様性ほか多くの課題が解決に向かうことを、多くの方に伝え、共に行動したいです。
更新日:2015.12.01 ※記事の内容は投稿当時のものです