つたえよう
須原 魚のゆりかご水田プロジェクト
せせらぎの郷(滋賀県野洲市)
田んぼと琵琶湖をつなぐ魚道づくりを通じて生きものの産卵・生育できる水田環境を取り戻し、かつての生物多様性が豊かな琵琶湖を再生する農業の実践をしつつ、市民参加によって農業と生物多様性の密接な関係を五感を通して伝える活動です。
かつて琵琶湖周辺の田んぼは、琵琶湖から固有種ニゴロブナなどの魚が水路を通じてやってきて、産卵・繁殖しすくすくと育って琵琶湖に帰っていく、命の循環をになう「生きもののゆりかご」のような場所でした。しかし、利便性を求める時代の流れの中で、農業の効率化を目指した圃場(ほじょう)整備事業が行われ、水路と田んぼに大きな段差が設けられました。すると田んぼに魚が入れなくなり、琵琶湖と田んぼは切り離されてしまいました。産卵・繁殖場所を失ったことで、魚たちはどんどん姿を消し昔のような賑わいがなくなってしまいました。
そこで、わたしたちは「もう一度、魚を田んぼに呼び戻そう!」という思いで、魚が田んぼに上がりやすい魚道を研究しました。排水路や田んぼの入り口に魚道を設置し、田んぼや琵琶湖が生きもので豊かに賑わう環境づくりを目指す取り組みが「魚のゆりかご水田プロジェクト」です。
農家の仕事は、安心で安全かつ美味しいお米作りですが、実はそれだけにとどまらず、生きものが暮らしている環境作りやその土地固有の風景作りをも担っていることを伝える活動を重視しています。わたしたち農家は、田んぼに多くの市民を招くことによって「生物多様性の伝道師」の役割を担っているのです。
具体的には田植え体験、生きもの観察会、稲刈り体験を開催し、お米づくりの体験だけでなく「命のゆりかご講座」として水田生物の多様性の価値を伝える解説や、生きもの調べ、生きものの生育状況、生命の有難さや重要性を体験により、参加者に伝えています。行政、大学、NPO法人、企業、JA、学生等と多様な立場の人と連携し、地域での発信にとどまらず、日本各地への発信、「生物多様性条約第12回締約国会議(COP12)」におけるサイドイベント開催など、国際的な発信にも取り組んでいます。
2016年の活動:
8/26生物多様性農業国際フォーラム(栃木県小山市)
9/7JICA(9か国)研修受入
9/13桜美林大学ゼミ生受入
10/10東京・八王子収穫感謝祭出店
11/5世界湖沼会議
参加時には、活動報告を行っています。