つたえよう まもろう
海岸林再生活動
ゆりりん愛護会(宮城県)
東日本大震災で被災した閖上(ゆりあげ:宮城県名取市)海岸の生き残りのマツからマツカサを採取して、京都府立緑化センターに送付しています。そこで育てられたマツ苗を里帰りさせ、海岸林の再生に備えています。
宮城県名取市の閖上海岸に「ゆりりんの森」が生まれたのは平成16年6月のことでした。不審火がもとで焼け野原になっていた海岸林の一画を再生しようと、地域の人たちが宮城県に働きかけ実現しました。
県の林業振興部ではユニークな海岸の環境学習林をつくろうと、クロマツに加えて7種類の樹木の苗1300本を用意しました。植林に参加したのは、地域内の小中学校の児童生徒と先生、それに地域住民と行政、教育機関の皆さんでした。
多くの人たちの協力のもと苗は順調に成長し、花が咲き、珍しい野鳥の姿も見られるようになりました。そして、海岸の環境学習林には“ゆりりん”という愛称がついたのです。そこではシーズンごとに枝落としや松葉かきなどの整備作業が行われ、作業の後では森の教室をはじめ、音楽会やキノコ鍋などの楽しい催しも開催されるようになり、地域の人みんなが「ゆりりんの森」の成長を喜び合いました。
そんな時、突然に東日本大震災が起きました。町はその姿を留めず、海岸林は壊滅状態となり、ゆりりん愛護会のうち何人かは帰らぬ人となりました。しかし、悲しい時を超え、わたしたちは行動を起こしました。
生き残った「ゆりりんの森」のマツカサを、福知山市にある京都府立緑化センターに送り、その種子から苗を育ててもらったのです。そして今年4月、幼いマツの苗が名取市に里帰りし、ゆりりん愛護会有志やボランティアの手によって市内高舘地区の畑に植えられました。
いつの日か、大きくなったマツの子どもたちは、ふるさとの閖上海岸で訪れる人をやさしく迎えてくれることでしょう。