まもろう
舞根湿地を活かして森・里・川・海をつなぐ
特定非営利活動法人森は海の恋人(宮城県気仙沼市)
気仙沼市舞根湾において東日本大震災が生態系におよぼした影響をモニタリングし、それに基づいて環境教育や啓発活動を行いました。活動の意義が地域に浸透したことで、震災で生じた塩性湿地の保全を実現化できました。
三陸で唯一保全されることとなった塩性湿地と森里川海まちづくり
東日本大震災から7年をかけて、気仙沼市舞根地区の塩性湿地の保全を基軸とした森・里・川・海まちづくりに取り組んできました。
三陸沿岸は2011年の津波で被災し、土地の浸食と地盤沈下の影響により各地の湾奥に塩性湿地が出現しています。1950年代まで各地の湾奥には湿地・干潟が多数あり、1960年代から農地・宅地造成のために埋め立てられましたが、2011年の津波災害によりかつての姿に戻りました。その後、全てが災害復旧工事により埋め立てられ、防潮堤用地や農地などになりました。
三陸の市町村では1980年代から人口が減少しており、所有者不明の土地や未利用の農地が急増しています。一方で、津波のみならず豪雨や高潮・高波などによる自然災害が増えつつあり、人口密度の低い沿岸域を従来的な防災インフラで防御する難しさが増しています。
こうした状況に鑑みて、住民の安全性を確保しつつ、汽水域環境を保全することで生物多様性を回復し、水産、観光、環境教育、学術研究などあらゆる利用により地域振興を図ることを目指して、森・里・川・海まちづくりを推進しました。特に、塩性湿地はあらゆる生きもののハビタットであり、流域圏を一つにつなげるための結節点であるにも関わらず、日本に残っている場所は約30箇所に過ぎません。そのため、塩性湿地の再生・保全のための方法論を整理することも重要と考えました。
本プロジェクトでは、最初に住宅の高台移転を支援して安全性を確保しました。次に、震災干潟・湿地を利用した青少年への環境教育、市民参加型の環境調査、各分野の研究者による水流、水質、底質、ベントス、仔稚魚、魚類、両生類に関する網羅的な環境モニタリング、活動状況や研究成果に関する広報を繰り返し行いました。取り組み状況を逐次、住民や市役所・県・国にフィードバックすることで少しずつ理解を広げてゆき、2018年に湿地保全事業の実施について完全に合意を得ることができました。
更新日:2018.12.27 ※記事の内容は投稿当時のものです