えらぼう
循環型環境ストレスフリーを実現した タオル生産プロセスの構築
株式会社スマイリーアース(大阪府泉佐野市)
「日本タオル製造発祥の地」大阪・泉州のタオル製造における化学薬剤依存によって引き起こされてきた河川汚染問題の改善に寄与する技術開発を実現しました。生物多様性維持と地場産業の持続可能化に貢献しています。
●取り組みを始めたきっかけ
当社は、明治20年より約130年間に渡ってタオル製造が継続されてきた「日本タオル製造発祥の地」大阪・泉州地域の老舗タオルメーカーです。親子3世代に渡りタオル製造業を営み、約70年に渡り同地域のタオル産地と共に地域の伝統産業であるタオル製造を続けてきました。
1990年代中頃から2000年代にかけて同地域のタオル生産量がピークを迎えた頃、同地域に流れる河川(樫井川)は、環境省が行なった公共用水域水質測定で日本ワーストワンの水質となりました。それによって、タオルの製造時に使用される化学薬剤の使用量及び、タオルに化学処理を行う工程から排水される、高濃度の化学薬剤で汚染された処理水の排水に注目が集まりました。特産品を製造しながら、地域の資源である河川の汚染や生物多様性の損失、生態系の破壊を進めてしまっていたことに気付きました。そのことがきっかけで、地場産業の持続可能化に向けた開発課題を可視化し、改善していく取り組みを始めました。
●当社が開発課題改善のために取り組んできた内容
2008年に株式会社スマイリーアースを設立しましたが、我々はそれ以前の2年間をかけて一貫生産が可能なタオル製造工場建設に着手しています。分業体制が構築されていたタオル産地では、各工程がクローズド化されており透明性に欠けます。そのような分業体制のマイナス面から独自で脱却するため、完全な一貫生産工場化を図り、持続可能なタオル生産プロセスの構築を目指すための環境を作り上げてきました。また、タオルの原料となる綿花も、「アフリカの真珠」と讃えられる豊かな自然環境が残る東アフリカのウガンダ共和国で栽培されているオーガニックコットンを使用し、現地農家組合から直接フェアトレードで購入し、現地農家との信頼関係も高めてくる中で、ウガンダに対する理解を深めてきました。農薬や化学肥料などによって汚染されていない原綿を調達できる持続可能なサプライチェーンを、長い歳月をかけてコットン農家と共に構築してきたました。そんな中で、当社とコットン農家の信頼関係がきっかけとなり2017年に当社が本社を構える泉佐野市(タオル産地)とグル市(オーガニックコットン産地)が日本ウガンダ共和国間で初となる友好都市提携を締結し、2020年東京オリンピックパラリンピック競技大会時にはウガンダ選手団の事前合宿を泉佐野市が受け入れるホストタウン事業登録も決定するなど、持続可能なサプライチェーンで繋がった両国間の友好親善にも貢献するなど、ものづくりの枠を超え、持続可能な社会実現に貢献するCSRにも力を注いできました。
●今後について
当社が2006年から独自にスタートした持続可能なタオル生産を実現するための研究開発は、約10年の歳月をかけて実を結び、2015年には「循環型環境ストレスフリーを実現したタオル生産プロセス」を独自構築することに成功しました。2018年には第7回ものづくり日本大賞で経済産業大臣賞を受賞するなど、現在その技術革新に注目が集まって来ています。そんな私たちが開発していきた技術に対し、今回、生物多様性維持や生態系保全にも寄与する技術としても価値評価を受けることができたことに大変嬉しく思っております。
これからも、スマイリーアースという社名に込めた思い(地球を笑顔にしていくこと)の実現に、「ものづくり」で挑み続けたいと考えております。