環境大臣賞
つたえよう部門
エコガイドカフェ(宮古島市下地与那覇)
評価のポイント
国内外からの観光客が増加する宮古列島の下地島では、サンゴ礁への観光負荷の増加が懸念されています。サンゴ礁への被害を予防するため、ダイビングを楽しむ際のマナー「ノータッチサンゴ」を動画によって伝えています。動画は訪日外国人に向けても制作され、日本語版だけでなく英語版と中国語版があります。文化が異なるインバウンドが増えるなか、“伝えることで守る”という視点は、観光地における環境活動をするうえでとても大切な視点になるでしょう。また、オーバーツーリズムをただ問題にするのではなく、環境に配慮した地域での過ごし方や楽しみ方を伝え、歓迎の意思表示をしていることも、インバウンド対応として素晴らしい点です。この活動がより多くの人に知られ、日本全国の環境活動のモデルとなることを期待しています。
農林水産大臣賞
たべよう部門
群馬県立勢多農林高等学校 植物バイオ研究部(群馬県前橋市)
評価のポイント
群馬県多野郡神流町(かんなまち)の伝統食材、「あかじゃが」や「アワバタダイズ」の栽培の復活と活用を通して、遺伝資源の保存と地域振興に取り組んでいます。調査を通して地域に受け継がれてきた伝統食材を発見しただけでなく、ウイルスフリー化や集荷量の増加、収穫イベントの実施、商品開発などを行い、ビジネスとして成り立たせている点が高く評価されました。この活動には、神流町の人たちの協力が欠かせません。農家のみなさんが商売としての効果にも納得し、協力してくれている点に、今後の持続性を感じます。また、種の改良に際しては授業での学習を活動に活かし、伝統農具から料理法まで、農業に関わるあらゆることに包括的に取り組んでいる様子も印象的です。高校から約50kmもの距離がある地域との関係性をしっかり結び、活動する姿勢に熱意を感じます。
優秀賞
ふれよう部門
川名里山レンジャー隊(神奈川県藤沢市)
評価のポイント
1992年に川名清水谷戸を縦断する計画道路「横浜藤沢線」の延伸工事の見直しを提議し、「川名清水谷戸を愛する会」として発足しました。自然観察会や下草刈りなどの里山保全活動、小学校の子どもたちを対象とした「谷戸探検」を実施しています。名前を覚えることで「自然を知った」と子どもたちが安易に感じてしまうことを懸念し、動植物の名前は教えないという方針には脱帽しました。自然に触れ合う人を増やし自然を守るという姿勢も大変素晴らしいです。計画道路に対する気持ちだけでなく、環境活動を通して地域資源を伝え自然の大切さを広く広めたい、という想いが、27年間活動を継続する原動力になったのだと感じます。地元の住民だけで活動していたところに学生が参加し、現在は学生が隊長を務めるとのこと、今後の活動にも期待しています。
まもろう部門
オオタカ保護基金(栃木県芳賀郡市貝町)
評価のポイント
サシバを生態系の指標種として位置づけ、行政や住民、自然保護団体が一体となってサシバと人が共存できる里地里山で環境と経済の両立を目指しています。自然保護団体が行った調査を元に、町が「市貝町(いちかいまち)サシバの郷づくり基本構想」を策定した後、地域住民が「サシバの里協議会」を設立。開業した道の駅を拠点に、グリーンツーリズムを実施しています。地域の3者の関わりとともに、人とサシバの豊かな関係が築けている点が評価されました。また、クヌギ林の保全と利用を図る炭、有機栽培・特別栽培のブランド米、キンブナの保護と特産品への利用など、持続的な食の活動、地域の活性化にも働きかけがあり、今後の発展がとても楽しみです。「国際サシバサミット」を開催するなど国際協力による取り組みにも積極的です。今後のサシバ保全活動の広がりを応援したいと思います。
えらぼう部門
株式会社スマイリーアース(大阪府泉佐野市)
評価のポイント
日本タオル製造の発祥地である大阪泉州地域における河川汚染の解決を、持続可能な生産プロセスの構築によって目指しています。栽培地の生態系に配慮したオーガニックコットンをフェアトレードで購入して持続可能なサプライチェーンを確立。さらに間伐材を利用する「地域資源循環利用システム」を構築した一連の取り組みは、企業の環境に対する姿勢の見本とも言えるでしょう。また、ウガンダ共和国とのコットンの取引をきっかけに、本社のある大阪府泉佐野市とウガンダ共和国GULU市が友好都市提携を締結したほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは泉佐野市がウガンダ共和国選手団のホストタウンになるなど、地域貢献や国際協力の業績も評価されました。環境と経済、社会を鑑みて、多様な生態系保全に寄与する経営判断に踏み切った姿勢は大変素晴らしいです。
特別賞
復興支援賞
網地島ふるさと楽好(宮城県石巻市)
評価のポイント
虐待孤児や震災孤児が毎年夏に高齢者70名の限界集落である網地島(あじしま)に招待され、2泊3日で島のお年寄りと交流しながら食や自然を体験します。集まったお年寄りと子どもが食卓を共にし、豊かな自然と小さな生きものと出会えるこの取り組みは、伝統的な知恵を生かして地域を元気にする活動のモデルと言えるでしょう。東日本大震災の際、網地島はがれきに埋もれてしまいました。それにも負けず、震災後も活動を続けている姿勢は称賛に値します。震災時に、それまで参加した子どもたちから届いた手紙により復興への勇気が湧いたというエピソードには、お年寄りから子どもへの一方的なコミュニケーションではなく、励まし、励まされることで、お互いの心の復興につながっているように感じます。
グリーンウェイブ賞
株式会社アキュラホーム ウッドストロープロジェクト(東京都新宿区)
評価のポイント
間伐の推進と間伐材の有効利用が課題となる中、世界的に注目される廃プラスティック、特にストロー問題と結び付け、その解決策に取り組まれたことはユニークな工夫であり大いに評価されます。また、この取り組みは、間伐の推進を通じた生物多様性の保全とともに、「伐って、使って、植えて、育てる」の森林の循環の中で、主間伐時の木材の有効利用に繋がっていく可能性もあります。木材は地球環境に優しいカーボンニュートラルな資源であり、ストローへの利用など新たな利用方法が広がっていくことを期待しています。生物多様性、森林の循環利用、地球温暖化対策を結び付けた素晴らしい取り組みと言えます。
セブン-イレブン記念財団賞
熊本県立岱志高等学校理科部(熊本県荒尾市)
評価のポイント
ラムサール条約湿地でもある荒尾干潟の生物多様性とマイクロプラスティックの調査活動です。活動では条約理念の普及啓発を積極的に行い、塩性湿地における12種のベントス(カニ類や貝類などの底生生物)を地域の漁業組合や荒尾干潟保全・賢明利活用協議会と連携して調査し、4種類の絶滅危惧種を発見・観察をしています。また、海洋性プラスティックごみの量や堆積中のマイクロプラスティック濃度も調査し、荒尾市教育委員会と連携した地域小学生を高校に招待する「岱志塾」において情報発信している点が評価されました。SDGsを意識し、多くの絶滅危惧種が棲息できる海洋ごみのない天然のヨシ原を取り戻すことを期待します。
SDGs賞
愛知商業高等学校ユネスコクラブ(愛知県名古屋市)
評価のポイント
「なごや文化のみちミツバチプロジェクト」として、校舎屋上で行っている都市型養蜂を核に活動しています。養蜂で採れたハチミツは尾張徳川家にゆかりを持つ学校の立地から「徳川はちみつ」としてブランド化。歴史文化を踏まえた地域活動になっている点もユニークです。東日本大震災の被災地で、名古屋市が支援する岩手県陸前高田市の特産品を使用した復興応援商品やフェアトレードをテーマとしたアイスクリームづくり、地域の店舗と協働したメニューの開発などを実施。ハチミツを「食べる」行為を通して生物多様性保全、社会課題解決、地域コミュニティの形成など、多領域へと関わりを発展させています。さまざまな立場の人が関わる活動を、高校生が主体となってSDGsを意識しながら継続させている点も高く評価されました。
審査委員賞(団体名50音順)
上西郷川日本一の郷川をめざす会(福岡県福津市)
評価のポイント
上西郷川を自然豊かな郷川として後世に残す活動として、保全活動を行うとともに、地域のネットワークづくりと、交流の場づくりも行っています。川の改修前後の変化が全審査員の目を惹きました。地域住民や学校、行政職員など多様かつ多世代の主体が参画し、合意形成を行っている点、活動に地域住民を巻き込み、川の再生の後も関わり続けている点など、多岐にわたる継続的な活動が評価されました。上西郷川の市民協働による多自然川づくりがお手本となって、日本全国で展開されることを期待しています。
環境ネットワーク「虹」(福岡県福津市)
評価のポイント
荒廃した休耕田を整備して、無農薬の米づくりと田と川での生物調査、スウェーデンの「森のムッレ教育」に基づいたESD推進に寄与する自然教室などを実施しています。いずれも市民参加型で、毎年1200人が参加しています。地域住民の自然に対する意識の高さや、実施団体の生きものや自然環境についての確かな知識を感じます。20年の長期に渡る活動を通し、地域の次世代の担い手の育成を実現させていることが高く評価されました。
特定非営利活動法人気象キャスターネットワーク(東京都台東区)
評価のポイント
全国80名以上の気象キャスターと気象予報士が初めて集結し、開催した写真展です。天気から気候変動、生物多様性の視点まで広がりがありつつ、親しみやすい内容になっており、情報伝達のプロならではのクオリティを感じました。写真の質が高いだけでなく、コンクールの実施、ポストカードのプレゼントなど参加者にとって魅力あるイベントになっています。来場した約600人のなかには、天気や自然環境により深く関心を持った人も多いことでしょう。今後の継続を期待しています。
社会福祉法人埼玉のぞみ園 深谷たんぽぽ(埼玉県深谷市)
評価のポイント
障害福祉施設で利用者とともに食用バラやハーブを栽培しています。生物多様性を視点とした農業を社会福祉の事業として実施し、防虫対策として生きものの食物連鎖を活用した方法や混植栽培を取り入れるなど、着目点の新しさに評価が集まりました。植物と関わることによって、障がい者の心や体の健康を図る「園芸療法」の成果が確認されている点も注目に値します。利用者の笑顔があふれる、生き生きとした活動を今後も期待しています。
生物多様性びわ湖ネットワーク(滋賀県)
評価のポイント
滋賀に拠点を置く8つの企業が連携し、県内のトンボ100種に対して、3つの作戦を実施。自ら観察・採集を行うトンボ調査、啓発活動や保全活動、シンポジウムでの発表や企画展示等による発信を行っています。8社それぞれがイチオシのトンボ「推しトンボ」を選定し、保全や調査を実施する取り組みは、いままでにない連携の姿でしょう。県民に配布されている冊子「トンボ100種の紹介」には、調査でしか得られないリアルな情報が記載され貴重な資料にもなっています。
中越パルプ工業株式会社(東京都中央区)
評価のポイント
2010年「生物多様性条約第10回締約国会議」に先立ち、2009年に間伐材を使った環境対応製品「里山物語」や国産竹100%の「竹紙」を開発し、販売しています。「里山物語」は間伐材を使うだけでなく紙の代金に里山保全のための寄付金を含み、「竹紙」は竹林の消費によって里山を守ります。国内で抱える竹林や里山の問題は深刻です。この活動は商品を選ぶことで課題解決に貢献する仕組みを考案し、10年にわたり継続的に提供している点が評価されました。
登米市立米谷小学校(宮城県登米市)
評価のポイント
5年生と6年生が、「長下田(なげた)うり」「よめごささげ」「もちとみぎ」などの伝統野菜を種から栽培し、調理法とともに次の学年に引き継いでいます。児童の提案をきっかけに「よめごささげ」の蒸しパンが地域の給食の献立となりました。他校への発信にとどまらず、地域の工場の協力のもとに製造、児童が「長下田うり」の種を持ち帰り自宅で栽培するなど、地域内の企業や保護者を巻き込んだ活動になっている点も評価されました。活動の広がりを支える子どもたちの主体性も大変素晴らしいです。
なごや生物多様性保全活動協議会(愛知県名古屋市)
評価のポイント
「なごやに生息・生育する生物及びその環境を継続的に調査し、生物多様性の現状を把握するとともに、外来種防除などを通し、身近な自然の保全を実践する」ことを目的に、市民と専門家、行政が協働しています。本活動団体は、2010年「生物多様性条約第10回締約国会議」をきっかけに設立されました。幅広い年齢層を対象とした参加型プログラムを多く実施するほか、ミシシッピアカミミガメの防除活動をまとめ、他の都市でも応用できるマニュアルを作成するなど、今後の活動の広がりを予感させる素晴らしい活動です。
新潟市(新潟県新潟市)
評価のポイント
ふるさとを象徴する“潟(かた)”を読み解く書籍『みんなの潟学―越後平野における新たな地域学』を出版するほか、「潟のデジタル博物館」というサイトも運営しています。地形のなりたち、環境、そこに暮らす人々の生活や文化、歴史など、潟の環境と社会を広く捉える視点がユニークです。アカデミックな内容でありながら、コンテンツは親しみやすいうえに高いクオリティで、大変充実しています。自治体が主体となって取り組むモデルとして、高く評価されました。
入賞(団体名50音順)
審査結果
2019年度の生物多様性アクション大賞の審査結果です。2019年12月5日の 授賞式で、優秀賞受賞者のプレゼンテーションを経て大臣賞が決定しました!
活動名をクリックすると活動概要のページにリンクします。※団体名をクリックすると各団体のサイトにリンクします。
環境大臣賞
つたえよう部門
エコガイドカフェ(宮古島市下地与那覇)
評価のポイント
国内外からの観光客が増加する宮古列島の下地島では、サンゴ礁への観光負荷の増加が懸念されています。サンゴ礁への被害を予防するため、ダイビングを楽しむ際のマナー「ノータッチサンゴ」を動画によって伝えています。動画は訪日外国人に向けても制作され、日本語版だけでなく英語版と中国語版があります。文化が異なるインバウンドが増えるなか、“伝えることで守る”という視点は、観光地における環境活動をするうえでとても大切な視点になるでしょう。また、オーバーツーリズムをただ問題にするのではなく、環境に配慮した地域での過ごし方や楽しみ方を伝え、歓迎の意思表示をしていることも、インバウンド対応として素晴らしい点です。この活動がより多くの人に知られ、日本全国の環境活動のモデルとなることを期待しています。
農林水産大臣賞
たべよう部門
群馬県立勢多農林高等学校 植物バイオ研究部(群馬県前橋市)
評価のポイント
群馬県多野郡神流町(かんなまち)の伝統食材、「あかじゃが」や「アワバタダイズ」の栽培の復活と活用を通して、遺伝資源の保存と地域振興に取り組んでいます。調査を通して地域に受け継がれてきた伝統食材を発見しただけでなく、ウイルスフリー化や集荷量の増加、収穫イベントの実施、商品開発などを行い、ビジネスとして成り立たせている点が高く評価されました。この活動には、神流町の人たちの協力が欠かせません。農家のみなさんが商売としての効果にも納得し、協力してくれている点に、今後の持続性を感じます。また、種の改良に際しては授業での学習を活動に活かし、伝統農具から料理法まで、農業に関わるあらゆることに包括的に取り組んでいる様子も印象的です。高校から約50kmもの距離がある地域との関係性をしっかり結び、活動する姿勢に熱意を感じます。
優秀賞
ふれよう部門
川名里山レンジャー隊(神奈川県藤沢市)
評価のポイント
1992年に川名清水谷戸を縦断する計画道路「横浜藤沢線」の延伸工事の見直しを提議し、「川名清水谷戸を愛する会」として発足しました。自然観察会や下草刈りなどの里山保全活動、小学校の子どもたちを対象とした「谷戸探検」を実施しています。名前を覚えることで「自然を知った」と子どもたちが安易に感じてしまうことを懸念し、動植物の名前は教えないという方針には脱帽しました。自然に触れ合う人を増やし自然を守るという姿勢も大変素晴らしいです。計画道路に対する気持ちだけでなく、環境活動を通して地域資源を伝え自然の大切さを広く広めたい、という想いが、27年間活動を継続する原動力になったのだと感じます。地元の住民だけで活動していたところに学生が参加し、現在は学生が隊長を務めるとのこと、今後の活動にも期待しています。
まもろう部門
オオタカ保護基金(栃木県芳賀郡市貝町)
評価のポイント
サシバを生態系の指標種として位置づけ、行政や住民、自然保護団体が一体となってサシバと人が共存できる里地里山で環境と経済の両立を目指しています。自然保護団体が行った調査を元に、町が「市貝町(いちかいまち)サシバの郷づくり基本構想」を策定した後、地域住民が「サシバの里協議会」を設立。開業した道の駅を拠点に、グリーンツーリズムを実施しています。地域の3者の関わりとともに、人とサシバの豊かな関係が築けている点が評価されました。また、クヌギ林の保全と利用を図る炭、有機栽培・特別栽培のブランド米、キンブナの保護と特産品への利用など、持続的な食の活動、地域の活性化にも働きかけがあり、今後の発展がとても楽しみです。「国際サシバサミット」を開催するなど国際協力による取り組みにも積極的です。今後のサシバ保全活動の広がりを応援したいと思います。
えらぼう部門
株式会社スマイリーアース(大阪府泉佐野市)
評価のポイント
日本タオル製造の発祥地である大阪泉州地域における河川汚染の解決を、持続可能な生産プロセスの構築によって目指しています。栽培地の生態系に配慮したオーガニックコットンをフェアトレードで購入して持続可能なサプライチェーンを確立。さらに間伐材を利用する「地域資源循環利用システム」を構築した一連の取り組みは、企業の環境に対する姿勢の見本とも言えるでしょう。また、ウガンダ共和国とのコットンの取引をきっかけに、本社のある大阪府泉佐野市とウガンダ共和国GULU市が友好都市提携を締結したほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは泉佐野市がウガンダ共和国選手団のホストタウンになるなど、地域貢献や国際協力の業績も評価されました。環境と経済、社会を鑑みて、多様な生態系保全に寄与する経営判断に踏み切った姿勢は大変素晴らしいです。
特別賞
復興支援賞
網地島ふるさと楽好(宮城県石巻市)
評価のポイント
虐待孤児や震災孤児が毎年夏に高齢者70名の限界集落である網地島(あじしま)に招待され、2泊3日で島のお年寄りと交流しながら食や自然を体験します。集まったお年寄りと子どもが食卓を共にし、豊かな自然と小さな生きものと出会えるこの取り組みは、伝統的な知恵を生かして地域を元気にする活動のモデルと言えるでしょう。東日本大震災の際、網地島はがれきに埋もれてしまいました。それにも負けず、震災後も活動を続けている姿勢は称賛に値します。震災時に、それまで参加した子どもたちから届いた手紙により復興への勇気が湧いたというエピソードには、お年寄りから子どもへの一方的なコミュニケーションではなく、励まし、励まされることで、お互いの心の復興につながっているように感じます。
グリーンウェイブ賞
株式会社アキュラホーム ウッドストロープロジェクト(東京都新宿区)
評価のポイント
間伐の推進と間伐材の有効利用が課題となる中、世界的に注目される廃プラスティック、特にストロー問題と結び付け、その解決策に取り組まれたことはユニークな工夫であり大いに評価されます。また、この取り組みは、間伐の推進を通じた生物多様性の保全とともに、「伐って、使って、植えて、育てる」の森林の循環の中で、主間伐時の木材の有効利用に繋がっていく可能性もあります。木材は地球環境に優しいカーボンニュートラルな資源であり、ストローへの利用など新たな利用方法が広がっていくことを期待しています。生物多様性、森林の循環利用、地球温暖化対策を結び付けた素晴らしい取り組みと言えます。
セブン-イレブン記念財団賞
熊本県立岱志高等学校理科部(熊本県荒尾市)
評価のポイント
ラムサール条約湿地でもある荒尾干潟の生物多様性とマイクロプラスティックの調査活動です。活動では条約理念の普及啓発を積極的に行い、塩性湿地における12種のベントス(カニ類や貝類などの底生生物)を地域の漁業組合や荒尾干潟保全・賢明利活用協議会と連携して調査し、4種類の絶滅危惧種を発見・観察をしています。また、海洋性プラスティックごみの量や堆積中のマイクロプラスティック濃度も調査し、荒尾市教育委員会と連携した地域小学生を高校に招待する「岱志塾」において情報発信している点が評価されました。SDGsを意識し、多くの絶滅危惧種が棲息できる海洋ごみのない天然のヨシ原を取り戻すことを期待します。
SDGs賞
愛知商業高等学校ユネスコクラブ(愛知県名古屋市)
評価のポイント
「なごや文化のみちミツバチプロジェクト」として、校舎屋上で行っている都市型養蜂を核に活動しています。養蜂で採れたハチミツは尾張徳川家にゆかりを持つ学校の立地から「徳川はちみつ」としてブランド化。歴史文化を踏まえた地域活動になっている点もユニークです。東日本大震災の被災地で、名古屋市が支援する岩手県陸前高田市の特産品を使用した復興応援商品やフェアトレードをテーマとしたアイスクリームづくり、地域の店舗と協働したメニューの開発などを実施。ハチミツを「食べる」行為を通して生物多様性保全、社会課題解決、地域コミュニティの形成など、多領域へと関わりを発展させています。さまざまな立場の人が関わる活動を、高校生が主体となってSDGsを意識しながら継続させている点も高く評価されました。
審査委員賞(団体名50音順)
上西郷川日本一の郷川をめざす会(福岡県福津市)
評価のポイント
上西郷川を自然豊かな郷川として後世に残す活動として、保全活動を行うとともに、地域のネットワークづくりと、交流の場づくりも行っています。川の改修前後の変化が全審査員の目を惹きました。地域住民や学校、行政職員など多様かつ多世代の主体が参画し、合意形成を行っている点、活動に地域住民を巻き込み、川の再生の後も関わり続けている点など、多岐にわたる継続的な活動が評価されました。上西郷川の市民協働による多自然川づくりがお手本となって、日本全国で展開されることを期待しています。
環境ネットワーク「虹」(福岡県福津市)
評価のポイント
荒廃した休耕田を整備して、無農薬の米づくりと田と川での生物調査、スウェーデンの「森のムッレ教育」に基づいたESD推進に寄与する自然教室などを実施しています。いずれも市民参加型で、毎年1200人が参加しています。地域住民の自然に対する意識の高さや、実施団体の生きものや自然環境についての確かな知識を感じます。20年の長期に渡る活動を通し、地域の次世代の担い手の育成を実現させていることが高く評価されました。
特定非営利活動法人気象キャスターネットワーク(東京都台東区)
評価のポイント
全国80名以上の気象キャスターと気象予報士が初めて集結し、開催した写真展です。天気から気候変動、生物多様性の視点まで広がりがありつつ、親しみやすい内容になっており、情報伝達のプロならではのクオリティを感じました。写真の質が高いだけでなく、コンクールの実施、ポストカードのプレゼントなど参加者にとって魅力あるイベントになっています。来場した約600人のなかには、天気や自然環境により深く関心を持った人も多いことでしょう。今後の継続を期待しています。
社会福祉法人埼玉のぞみ園 深谷たんぽぽ(埼玉県深谷市)
評価のポイント
障害福祉施設で利用者とともに食用バラやハーブを栽培しています。生物多様性を視点とした農業を社会福祉の事業として実施し、防虫対策として生きものの食物連鎖を活用した方法や混植栽培を取り入れるなど、着目点の新しさに評価が集まりました。植物と関わることによって、障がい者の心や体の健康を図る「園芸療法」の成果が確認されている点も注目に値します。利用者の笑顔があふれる、生き生きとした活動を今後も期待しています。
生物多様性びわ湖ネットワーク(滋賀県)
評価のポイント
滋賀に拠点を置く8つの企業が連携し、県内のトンボ100種に対して、3つの作戦を実施。自ら観察・採集を行うトンボ調査、啓発活動や保全活動、シンポジウムでの発表や企画展示等による発信を行っています。8社それぞれがイチオシのトンボ「推しトンボ」を選定し、保全や調査を実施する取り組みは、いままでにない連携の姿でしょう。県民に配布されている冊子「トンボ100種の紹介」には、調査でしか得られないリアルな情報が記載され貴重な資料にもなっています。
中越パルプ工業株式会社(東京都中央区)
評価のポイント
2010年「生物多様性条約第10回締約国会議」に先立ち、2009年に間伐材を使った環境対応製品「里山物語」や国産竹100%の「竹紙」を開発し、販売しています。「里山物語」は間伐材を使うだけでなく紙の代金に里山保全のための寄付金を含み、「竹紙」は竹林の消費によって里山を守ります。国内で抱える竹林や里山の問題は深刻です。この活動は商品を選ぶことで課題解決に貢献する仕組みを考案し、10年にわたり継続的に提供している点が評価されました。
登米市立米谷小学校(宮城県登米市)
評価のポイント
5年生と6年生が、「長下田(なげた)うり」「よめごささげ」「もちとみぎ」などの伝統野菜を種から栽培し、調理法とともに次の学年に引き継いでいます。児童の提案をきっかけに「よめごささげ」の蒸しパンが地域の給食の献立となりました。他校への発信にとどまらず、地域の工場の協力のもとに製造、児童が「長下田うり」の種を持ち帰り自宅で栽培するなど、地域内の企業や保護者を巻き込んだ活動になっている点も評価されました。活動の広がりを支える子どもたちの主体性も大変素晴らしいです。
なごや生物多様性保全活動協議会(愛知県名古屋市)
評価のポイント
「なごやに生息・生育する生物及びその環境を継続的に調査し、生物多様性の現状を把握するとともに、外来種防除などを通し、身近な自然の保全を実践する」ことを目的に、市民と専門家、行政が協働しています。本活動団体は、2010年「生物多様性条約第10回締約国会議」をきっかけに設立されました。幅広い年齢層を対象とした参加型プログラムを多く実施するほか、ミシシッピアカミミガメの防除活動をまとめ、他の都市でも応用できるマニュアルを作成するなど、今後の活動の広がりを予感させる素晴らしい活動です。
新潟市(新潟県新潟市)
評価のポイント
ふるさとを象徴する“潟(かた)”を読み解く書籍『みんなの潟学―越後平野における新たな地域学』を出版するほか、「潟のデジタル博物館」というサイトも運営しています。地形のなりたち、環境、そこに暮らす人々の生活や文化、歴史など、潟の環境と社会を広く捉える視点がユニークです。アカデミックな内容でありながら、コンテンツは親しみやすいうえに高いクオリティで、大変充実しています。自治体が主体となって取り組むモデルとして、高く評価されました。
入賞(団体名50音順)