審査結果
2018年度の生物多様性アクション大賞の審査結果です。2018年12月7日の授賞式で、優秀賞受賞者のプレゼンテーションを経て大臣賞が決定しました!
※団体名をクリックすると各団体のサイトにリンクします。
環境大臣賞
たべよう部門
おかえりやさいプロジェクト(愛知県名古屋市)
評価のポイント
市内の食料品店や学校給食、飲食店、家庭から出た生ゴミで堆肥をつくり、それを使って育てた野菜を「おかえりやさい」というブランドとして商業施設などで販売しています。生ゴミが野菜となって消費者に戻る循環のストーリーを日常生活に落とし込み、消費者にもわかりやすい形にすることで、持続可能な消費を考える機会を作り出しています。様々な団体が参画するなかで、コミュニケーションや循環システムなどをまとめ、実現できている点に、意思の強さと底力を感じます。また、「おかえりやさい」というわかりやすいネーミング、親しみやすいマスコットや歌など、ブランドを盛り上げるための工夫が凝らされている点も好印象です。
農林水産大臣賞
まもろう部門
くまもと☆農家ハンター(熊本県宇城市)
評価のポイント
有志の若い農家が集まり、イノシシを中心とした鳥獣被害対策を行っています。被害の調査や動物の捕獲を行うだけでなく、ECサイトを開設してジビエ肉を販売し、問題解決から商品展開までのルートを構築していることや、AIやIoT、クラウドファンディングを活用するなど、ITを積極的に取り入れた活動姿勢も高く評価されました。また、地域の困っている声を受け止め、農家が自ら立ち上がったことも特筆すべき点でしょう。既に70を超える団体からの協力も得て、県外への広がりも始まっており、今後の活躍が強く期待されます。
優秀賞
ふれよう部門
株式会社JTB(東京都品川区)
評価のポイント
観光地で、植樹や清掃活動、動物の生育環境の整備などを実施するツアーを組むことで、生物多様性の保全に貢献しています。多いときは1ヶ月に10回のツアーを開催するボリュームの大きさや、社員と各団体がパートナーシップを組んでプログラムを計画・実施している点、一般参加者が気軽に環境活動に関われる点などが高く評価されました。「観光」「環境保全」「地域」という複数の要素を合わせる着眼点も素晴らしい。今後は、地域と各団体、イベント自体の持続可能性につなげるために、事業として参加費を募り、地域や環境保全活動に還元する、といった経済的にも循環する活動への進化も期待されます。
つたえよう部門
電機・電子4団体 環境戦略連絡会 生物多様性WG(東京都千代田区)
評価のポイント
業界における生物多様性の主流化を目的に、生物多様性保全活動を開始するハードルを下げようと、事業者に向けたわかりやすい手引書を作成・配布しています。ツールのなかで愛知目標やSDGsとの関連を示しているほか、COP13・14のサイドイベントにも参加し、事例を発表するなど、生物多様性条約やSDGsに積極的に参画している点も高く評価されました。本ツールをウェブで公開することで他業界への波及も始まっているなど、これらの活動を通じて、日本企業全体の生物多様性への取り組みをバックアップする、重要な役割を果たしていると言えます。
えらぼう部門
パナソニック株式会社(大阪府門真市)
評価のポイント
持続可能な生産体制のもとで採られた魚介類「サステナブル・シーフード」を食材として社員食堂に導入し、MSC、ASCなどを代表とするサステナブルな認証制度の認知向上を図っています。持続可能な食材選択によるコスト上昇があるにも関わらず、継続して実施している点は称賛に値します。MSCとASCの流通に関わるCoC認証を取得したフードサービス会社と連携するなど、サプライチェーン全体としての取り組みになるなど徹底した姿勢が評価されました。日本国内では、社員の職場環境の整備の一環として、多くの企業が地球環境への取り組みに注目し始めています。今後も、この姿勢を保ち続けていくことを期待しています。
特別賞
復興支援賞
特定非営利活動法人森は海の恋人(宮城県気仙沼市)
評価のポイント
気仙沼市内の舞根湾にて、東日本大震災が生態系に及ぼした影響をモニタリングし、それに基づいた生態系の回復や環境教育活動を行っています。震災で出現した塩性湿地を復興工事で農地に変えるのではなく、塩性湿地という貴重な場所の生態系を残そうという志が、高く評価されました。震災後のガレキ除去などの困難をのりこえながら、子どもの最適な環境教育の場として運用している点や、気仙沼市など行政とも粘り強く調整し、地元の農家をはじめ地域の人々とともにかけがえのない自然資源を活かした復興への歩みを進めている姿に尊敬の念を感じます。
グリーンウェイブ賞
コクヨ株式会社(大阪府大阪市)
評価のポイント
生物多様性に向けた取り組みとして単なる間伐の実施に止まらず、その結果生産された間伐材を四万十町森林組合との協働により家具等に利用していることは、森林の循環利用と地域振興の観点から、特に評価されます。また、2007年以降、12年間にわたって認証森林を拡大するとともに、必要とする間伐も着実に進めており、持続可能な森林経営に努めていることも大いに評価されます。活動を「見える化」するため、地元の四万十町森林組合のみならず四万十高校の生徒や高知県・四万十町職員が協働して植生調査を続けており、これによって地元の誇る環境資源が再発見されるなど、今後の生徒の人格形成にも役立っています。さらに、間伐の効果をCO2の吸収量でわかりやすく表現するなど、多くの工夫がみられます。
セブン-イレブン記念財団賞
福岡県立水産高等学校 Project-T(福岡県福津市)
評価のポイント
「山や森を豊かにすることは海を豊かにすること」との考えをもとに、広葉樹林に入り込む竹林の整備を行い、海に必要な養分を正常に流すようにし、海も山も豊かにする活動です。伐採した竹を有効活用し、「竹炭づくり」や「竹魚礁の作成・設置」、竹の枝葉を利用した「塩の生産」(昔は塩の生産で潤っていた町の復活をかけて)、他産業と連携し土壌改良材の「竹パウダーの生産」などにも取り組んでいます。竹林整備は、竹林全体が明るくなり、下草が生えて広葉樹の苗が育ち、生物多様性につなげています。漁獲量調査は、竹魚礁周辺に多くの生物が生息していることを発見しました。また、近隣の小学校で児童と一緒に竹魚礁を作る授業を行ったり、様々なところで活動発表を行ったりするなど、啓発活動にも力を入れています。こうした幅広い活動が、次世代につながる活動であると評価しました。
SDGs賞
Blue Earth Project(兵庫県神戸市)
評価のポイント
海の生物多様性を守ることをテーマに、女子高生が中心となってフィールドワークやイベントへの出展を行っています。まず、日本全国から11地域、200名以上の女子高校生が参加している規模の大きさに驚きました。また、UNDB-Jや環境省、タレントなど、連携先の多様さ、活動の多彩さが評価されました。120枚の大漁旗に、イベント参加者それぞれのMY行動宣言を書いてもらうなど、主体性を促す仕掛けも大変素晴らしい。SDGsのうち、取り組み全体はゴール14、自らの学びの機会としている点はゴール4、女子高生が活動している点でゴール5にも該当すると言えます。2030年につながる、とても勇気づけられる取り組みです。
審査委員賞(団体名50音順)
アトリエ マンセル(東京都中央区)
評価のポイント
動物画家として、日本の絶滅危惧種と生息地を取材して絵を描き、講演会などを開催されています。生態系を守ることが、人にとっても生きやすい環境になることを、個展開催、絵画教室、講演会を通じて立体的に伝える活動です。写実的な絵画とともに、フィールドワークで得た経験などを伝えることで、アーティストとしての表現活動を超えて、絵を通じて生態系の大切さを広く伝えるという活動が10年以上の実績につながっている点を評価したいと思います。
糸島コミュニティ事業研究会(福岡県糸島市)
評価のポイント
竹林の荒廃という問題があるなかで、幼竹を採って国産メンマを作り、竹林整備と国内での食糧生産の2つの課題にアプローチしています。飲食業界が国産の食材にシフトしつつあるなかで、近年、純国産メンマは注目されています。メンマ加工のセミナーやメンマレシピ開発、たけのこ名人による講演会を実施するなど、食材としての幼竹の普及活動に取り組んでいる点に、活動の幅広さを感じます。無秩序な竹の繁殖に悩む地域は日本全国にあります。この活動が、各地の課題解決のお手本となる可能性があると言えるでしょう。
NPO法人嘉瀬川交流軸(佐賀県佐賀市)
評価のポイント
嘉瀬川中流の河川敷に繁茂し、厄介物となっている真竹を市民の手で採取しています。採取した真竹は嘉瀬川河口に建込み、牡蠣礁の再生に役立てることで、中流と河口をつないでいます。この真竹の牡蠣礁は、中流域で問題になっている竹林の繁殖と、海の再生方法の議論によって疲弊した有明海の問題を一手に解消する、地域の希望だと感じます。真竹の牡蠣礁は、かつて河口で行われていました。失われた伝統文化の復活という側面も、高評価を得ました。食べるイベントも今後、大切な要素になると感じます。地域の食を管理しながら里海を再生し、農と漁を守る取り組みを、ぜひ応援したいと思います。
岐阜県立岐阜高等学校自然科学部生物班(岐阜県岐阜市)
評価のポイント
絶滅危惧種に指定されている岐阜県内のカスミサンショウウオを、12年間にわたり保全しています。3年間の高校生活で部員が代わるなかで、後輩に引き継いで活動している生徒の主体性と継続性、また、大学や専門機関、自治体とともに取り組む地域性が、とてもパワフルです。GISと環境DNAを併用した画期的な調査手法を開発・実施するなど、専門性の高い研究活動を通じて、絶滅の原因を推測し、根本原因を探り、生息地を増やすことを目指している点は特筆すべきことでしょう。
気仙沼市立大谷中学校(宮城県気仙沼市)
評価のポイント
田んぼに生える強力な野草、コナギが食材として利用できることを発見。以来、食材としての認識の向上を図り、教師と地域住民などを対象にコナギ料理の講習会や調理実習などを実施しています。やっかいものと言われているコナギを食べることによって、除草剤を使わない有機農業の推進にもつながっています。さらに田んぼはお米を育てる場所であるという価値観から、お米も、おかずとなる食材も収穫できるという発想への転換は、これからの田んぼとのつきあい方を探る良い活動例と言えるでしょう。
ジーエルイー合同会社(沖縄県那覇市)
評価のポイント
サンゴをはじめとする海洋生物への影響の懸念がない成分を使用した日焼け止めを企画、販売しています。従来の日焼け止め商品に含まれる物質が海洋汚染につながることを知り、「海を守る」という強い想いをもって活動を始めた経緯が、とても印象的です。また楽しそうなデザインのパッケージにより、手にとってもらいやすく、多くの人が身近なところから環境配慮型の消費活動を始められる点も大切なポイントです。近年、海洋汚染の可能性の高い物質を含む日焼け止めの使用を禁止する国も現れるなか、「サステナブルなツーリズム」を標榜し、市場がこれから求める商品やサービスを先取りして提供している点が高評価につながりました。
NPO生活工房つばさ・游(埼玉県比企郡小川町)
評価のポイント
地域の有機農家が作るお米を企業が提携三原則(全量買取・即金・再生産可能価格)で購入し、希望する社員に販売する仕組みを作りました。三原則を守ることで、必ず次の生産につなげられるこの循環システムは、消費者である企業と有機農家を結ぶ、地域のNPOの存在があって初めて成り立ちます。10年にわたって販路を確保し続けている貢献度はとても高いものでしょう。また社員参加の里山保全活動を元に、里山保全活動グループと協同で「下里里山100年ビジョン」を策定。企業と農家がお米だけではなく、里山の風景を作るというしっかりとした意識によって、里山の未来を作る活動にも拡がっています。
筑後川まるごと博物館運営委員会(福岡県久留米市)
評価のポイント
筑後川そのものを博物館と見立て、筑後川流域の市民団体や専門家たちと連携して、子どもたちが自然や川と水の大切さを学び、地域のリーダーとして育成する活動を行っています。流域全体を活用し、子どもたちが主体的に活動できる人材育成の場となっている点が大変素晴らしい。また、高校生がこれまでの経験をもとに小、中学生の参加者を指導する、世代を超えたコミュニケーションとお互いに切磋琢磨できる環境が8年間続いているという持続力も、高く評価されました。
入賞(団体名50音順)
審査結果
2018年度の生物多様性アクション大賞の審査結果です。2018年12月7日の授賞式で、優秀賞受賞者のプレゼンテーションを経て大臣賞が決定しました!
※団体名をクリックすると各団体のサイトにリンクします。
環境大臣賞
たべよう部門
おかえりやさいプロジェクト(愛知県名古屋市)
評価のポイント
市内の食料品店や学校給食、飲食店、家庭から出た生ゴミで堆肥をつくり、それを使って育てた野菜を「おかえりやさい」というブランドとして商業施設などで販売しています。生ゴミが野菜となって消費者に戻る循環のストーリーを日常生活に落とし込み、消費者にもわかりやすい形にすることで、持続可能な消費を考える機会を作り出しています。様々な団体が参画するなかで、コミュニケーションや循環システムなどをまとめ、実現できている点に、意思の強さと底力を感じます。また、「おかえりやさい」というわかりやすいネーミング、親しみやすいマスコットや歌など、ブランドを盛り上げるための工夫が凝らされている点も好印象です。
農林水産大臣賞
まもろう部門
くまもと☆農家ハンター(熊本県宇城市)
評価のポイント
有志の若い農家が集まり、イノシシを中心とした鳥獣被害対策を行っています。被害の調査や動物の捕獲を行うだけでなく、ECサイトを開設してジビエ肉を販売し、問題解決から商品展開までのルートを構築していることや、AIやIoT、クラウドファンディングを活用するなど、ITを積極的に取り入れた活動姿勢も高く評価されました。また、地域の困っている声を受け止め、農家が自ら立ち上がったことも特筆すべき点でしょう。既に70を超える団体からの協力も得て、県外への広がりも始まっており、今後の活躍が強く期待されます。
優秀賞
ふれよう部門
株式会社JTB(東京都品川区)
評価のポイント
観光地で、植樹や清掃活動、動物の生育環境の整備などを実施するツアーを組むことで、生物多様性の保全に貢献しています。多いときは1ヶ月に10回のツアーを開催するボリュームの大きさや、社員と各団体がパートナーシップを組んでプログラムを計画・実施している点、一般参加者が気軽に環境活動に関われる点などが高く評価されました。「観光」「環境保全」「地域」という複数の要素を合わせる着眼点も素晴らしい。今後は、地域と各団体、イベント自体の持続可能性につなげるために、事業として参加費を募り、地域や環境保全活動に還元する、といった経済的にも循環する活動への進化も期待されます。
つたえよう部門
電機・電子4団体 環境戦略連絡会 生物多様性WG(東京都千代田区)
評価のポイント
業界における生物多様性の主流化を目的に、生物多様性保全活動を開始するハードルを下げようと、事業者に向けたわかりやすい手引書を作成・配布しています。ツールのなかで愛知目標やSDGsとの関連を示しているほか、COP13・14のサイドイベントにも参加し、事例を発表するなど、生物多様性条約やSDGsに積極的に参画している点も高く評価されました。本ツールをウェブで公開することで他業界への波及も始まっているなど、これらの活動を通じて、日本企業全体の生物多様性への取り組みをバックアップする、重要な役割を果たしていると言えます。
えらぼう部門
パナソニック株式会社(大阪府門真市)
評価のポイント
持続可能な生産体制のもとで採られた魚介類「サステナブル・シーフード」を食材として社員食堂に導入し、MSC、ASCなどを代表とするサステナブルな認証制度の認知向上を図っています。持続可能な食材選択によるコスト上昇があるにも関わらず、継続して実施している点は称賛に値します。MSCとASCの流通に関わるCoC認証を取得したフードサービス会社と連携するなど、サプライチェーン全体としての取り組みになるなど徹底した姿勢が評価されました。日本国内では、社員の職場環境の整備の一環として、多くの企業が地球環境への取り組みに注目し始めています。今後も、この姿勢を保ち続けていくことを期待しています。
特別賞
復興支援賞
特定非営利活動法人森は海の恋人(宮城県気仙沼市)
評価のポイント
気仙沼市内の舞根湾にて、東日本大震災が生態系に及ぼした影響をモニタリングし、それに基づいた生態系の回復や環境教育活動を行っています。震災で出現した塩性湿地を復興工事で農地に変えるのではなく、塩性湿地という貴重な場所の生態系を残そうという志が、高く評価されました。震災後のガレキ除去などの困難をのりこえながら、子どもの最適な環境教育の場として運用している点や、気仙沼市など行政とも粘り強く調整し、地元の農家をはじめ地域の人々とともにかけがえのない自然資源を活かした復興への歩みを進めている姿に尊敬の念を感じます。
グリーンウェイブ賞
コクヨ株式会社(大阪府大阪市)
評価のポイント
生物多様性に向けた取り組みとして単なる間伐の実施に止まらず、その結果生産された間伐材を四万十町森林組合との協働により家具等に利用していることは、森林の循環利用と地域振興の観点から、特に評価されます。また、2007年以降、12年間にわたって認証森林を拡大するとともに、必要とする間伐も着実に進めており、持続可能な森林経営に努めていることも大いに評価されます。活動を「見える化」するため、地元の四万十町森林組合のみならず四万十高校の生徒や高知県・四万十町職員が協働して植生調査を続けており、これによって地元の誇る環境資源が再発見されるなど、今後の生徒の人格形成にも役立っています。さらに、間伐の効果をCO2の吸収量でわかりやすく表現するなど、多くの工夫がみられます。
セブン-イレブン記念財団賞
福岡県立水産高等学校 Project-T(福岡県福津市)
評価のポイント
「山や森を豊かにすることは海を豊かにすること」との考えをもとに、広葉樹林に入り込む竹林の整備を行い、海に必要な養分を正常に流すようにし、海も山も豊かにする活動です。伐採した竹を有効活用し、「竹炭づくり」や「竹魚礁の作成・設置」、竹の枝葉を利用した「塩の生産」(昔は塩の生産で潤っていた町の復活をかけて)、他産業と連携し土壌改良材の「竹パウダーの生産」などにも取り組んでいます。竹林整備は、竹林全体が明るくなり、下草が生えて広葉樹の苗が育ち、生物多様性につなげています。漁獲量調査は、竹魚礁周辺に多くの生物が生息していることを発見しました。また、近隣の小学校で児童と一緒に竹魚礁を作る授業を行ったり、様々なところで活動発表を行ったりするなど、啓発活動にも力を入れています。こうした幅広い活動が、次世代につながる活動であると評価しました。
SDGs賞
Blue Earth Project(兵庫県神戸市)
評価のポイント
海の生物多様性を守ることをテーマに、女子高生が中心となってフィールドワークやイベントへの出展を行っています。まず、日本全国から11地域、200名以上の女子高校生が参加している規模の大きさに驚きました。また、UNDB-Jや環境省、タレントなど、連携先の多様さ、活動の多彩さが評価されました。120枚の大漁旗に、イベント参加者それぞれのMY行動宣言を書いてもらうなど、主体性を促す仕掛けも大変素晴らしい。SDGsのうち、取り組み全体はゴール14、自らの学びの機会としている点はゴール4、女子高生が活動している点でゴール5にも該当すると言えます。2030年につながる、とても勇気づけられる取り組みです。
審査委員賞(団体名50音順)
アトリエ マンセル(東京都中央区)
評価のポイント
動物画家として、日本の絶滅危惧種と生息地を取材して絵を描き、講演会などを開催されています。生態系を守ることが、人にとっても生きやすい環境になることを、個展開催、絵画教室、講演会を通じて立体的に伝える活動です。写実的な絵画とともに、フィールドワークで得た経験などを伝えることで、アーティストとしての表現活動を超えて、絵を通じて生態系の大切さを広く伝えるという活動が10年以上の実績につながっている点を評価したいと思います。
糸島コミュニティ事業研究会(福岡県糸島市)
評価のポイント
竹林の荒廃という問題があるなかで、幼竹を採って国産メンマを作り、竹林整備と国内での食糧生産の2つの課題にアプローチしています。飲食業界が国産の食材にシフトしつつあるなかで、近年、純国産メンマは注目されています。メンマ加工のセミナーやメンマレシピ開発、たけのこ名人による講演会を実施するなど、食材としての幼竹の普及活動に取り組んでいる点に、活動の幅広さを感じます。無秩序な竹の繁殖に悩む地域は日本全国にあります。この活動が、各地の課題解決のお手本となる可能性があると言えるでしょう。
NPO法人嘉瀬川交流軸(佐賀県佐賀市)
評価のポイント
嘉瀬川中流の河川敷に繁茂し、厄介物となっている真竹を市民の手で採取しています。採取した真竹は嘉瀬川河口に建込み、牡蠣礁の再生に役立てることで、中流と河口をつないでいます。この真竹の牡蠣礁は、中流域で問題になっている竹林の繁殖と、海の再生方法の議論によって疲弊した有明海の問題を一手に解消する、地域の希望だと感じます。真竹の牡蠣礁は、かつて河口で行われていました。失われた伝統文化の復活という側面も、高評価を得ました。食べるイベントも今後、大切な要素になると感じます。地域の食を管理しながら里海を再生し、農と漁を守る取り組みを、ぜひ応援したいと思います。
岐阜県立岐阜高等学校自然科学部生物班(岐阜県岐阜市)
評価のポイント
絶滅危惧種に指定されている岐阜県内のカスミサンショウウオを、12年間にわたり保全しています。3年間の高校生活で部員が代わるなかで、後輩に引き継いで活動している生徒の主体性と継続性、また、大学や専門機関、自治体とともに取り組む地域性が、とてもパワフルです。GISと環境DNAを併用した画期的な調査手法を開発・実施するなど、専門性の高い研究活動を通じて、絶滅の原因を推測し、根本原因を探り、生息地を増やすことを目指している点は特筆すべきことでしょう。
気仙沼市立大谷中学校(宮城県気仙沼市)
評価のポイント
田んぼに生える強力な野草、コナギが食材として利用できることを発見。以来、食材としての認識の向上を図り、教師と地域住民などを対象にコナギ料理の講習会や調理実習などを実施しています。やっかいものと言われているコナギを食べることによって、除草剤を使わない有機農業の推進にもつながっています。さらに田んぼはお米を育てる場所であるという価値観から、お米も、おかずとなる食材も収穫できるという発想への転換は、これからの田んぼとのつきあい方を探る良い活動例と言えるでしょう。
ジーエルイー合同会社(沖縄県那覇市)
評価のポイント
サンゴをはじめとする海洋生物への影響の懸念がない成分を使用した日焼け止めを企画、販売しています。従来の日焼け止め商品に含まれる物質が海洋汚染につながることを知り、「海を守る」という強い想いをもって活動を始めた経緯が、とても印象的です。また楽しそうなデザインのパッケージにより、手にとってもらいやすく、多くの人が身近なところから環境配慮型の消費活動を始められる点も大切なポイントです。近年、海洋汚染の可能性の高い物質を含む日焼け止めの使用を禁止する国も現れるなか、「サステナブルなツーリズム」を標榜し、市場がこれから求める商品やサービスを先取りして提供している点が高評価につながりました。
NPO生活工房つばさ・游(埼玉県比企郡小川町)
評価のポイント
地域の有機農家が作るお米を企業が提携三原則(全量買取・即金・再生産可能価格)で購入し、希望する社員に販売する仕組みを作りました。三原則を守ることで、必ず次の生産につなげられるこの循環システムは、消費者である企業と有機農家を結ぶ、地域のNPOの存在があって初めて成り立ちます。10年にわたって販路を確保し続けている貢献度はとても高いものでしょう。また社員参加の里山保全活動を元に、里山保全活動グループと協同で「下里里山100年ビジョン」を策定。企業と農家がお米だけではなく、里山の風景を作るというしっかりとした意識によって、里山の未来を作る活動にも拡がっています。
筑後川まるごと博物館運営委員会(福岡県久留米市)
評価のポイント
筑後川そのものを博物館と見立て、筑後川流域の市民団体や専門家たちと連携して、子どもたちが自然や川と水の大切さを学び、地域のリーダーとして育成する活動を行っています。流域全体を活用し、子どもたちが主体的に活動できる人材育成の場となっている点が大変素晴らしい。また、高校生がこれまでの経験をもとに小、中学生の参加者を指導する、世代を超えたコミュニケーションとお互いに切磋琢磨できる環境が8年間続いているという持続力も、高く評価されました。
入賞(団体名50音順)